ピクサー映画『インクレディブル・ファミリー』が、文字通りインクレディブルなことをやってみせた。先週末公開になった全米のオープニング興行収入は、アニメ映画としては史上最高の1億8,268万7,905ドル(約201億円)。これまでの1位だった『ファインディング・ドリー』(興収1億3,506万273ドル・約149億円)を抜く可能性は十分あると見られてはいたものの、専門家の予測は最高でも1億4,000万ドル(約154億円)で、ここまでの数字は誰も期待していなかった。また、このオープニング成績は『アベンジャーズ』シリーズと『ブラックパンサー』を除く全てのマーベル映画よりも上である。(Yuki Saruwatari/猿渡由紀)

 今回の大ヒットの要因の一つは、観客に家族連れでない層も多かったことだ。シネマスコア社の調査によると、公開週末に同作を観た観客の40%は、18歳から24歳だったのである。アニメ映画の一番のターゲットであるファミリー層をしっかり確保した上で、さらに大人料金を払う観客を普通よりも多く呼び込んだことが、こんな驚くべき数字につながったわけだ。公開日の時点で大手批評サイト「ロッテントマト」では支持率97%と批評家からも絶賛されていたのだが(現時点では94%とやや下がっている)、前売りが爆発的に売れていたことからも、批評に影響を受けたというより、早くから「これは絶対に観る」と決めていた人が多かったと考えるのが妥当だろう。

 では、なぜ彼らはこの映画に飛びついたのか? その論議は盛んに交わされているが、オリジナル版を観て育った子供が大人になり、新しい世代とその愛を共有する時代になったのだという説が有力である。

 折しも『インクレディブル・ファミリー』はピクサーの長編アニメ20作目という、スタジオの歴史の節目となる作品。オスカーを受賞した1作目『Mr.インクレディブル』が公開されたのは2004年で、14年前だ。当時10歳の少年は、今、24歳になっている。父親になってこそいなくても、甥や姪がいたりするかもしれないし、同年代の友達や恋人も同じように1作目を何度も観て育っているから、一緒に観に行こうという話になったりするだろう。13年ぶりの続編だった『ファインディング・ドリー』の観客も18歳から24歳が40%を占めていたことも、この説を裏付ける。

 しかし、ノスタルジアに訴えかければなんでもうまく行くのかというと、もちろんそうではない。時間が経っても古くならず、熱烈に愛され続ける映画は非常に稀だ。多くの人に愛される映画を1本作れただけでも快挙で、それができても名誉を損なうリスクの高い続編など、できれば作らないほうがいい。作ってもいいのは、1作目を上回るほどの作品になるという自信がある場合だけだ。

 『インクレディブル・ファミリー』に対する観客の評価は、最高値となるA+(シネマスコア社)。この月曜と火曜もそれぞれに興収記録を作ったのは、明らかに口コミ効果だ。今作に関しては、結果論になってしまうが、まさに作られる価値があったものと言える。早くも3作目を望む声も聞かれるが、またこんな素晴らしい映画体験をしたいのならば、観客側も焦らずにじっくりと、いいものが作られるのを待つべきである。

映画『インクレディブル・ファミリー』は8月1日より日本公開