■高精度に制御できる電子制御の噴射弁方式が主流

●エンジン回転やアクセル開度などの情報から、適正な燃料量を噴射

バイクの燃料供給システムには、吸気負圧を利用したキャブレター方式と電子制御の噴射弁方式の2種類があります。キャブレター方式から始まった燃料供給システムですが、現在はほとんどが厳しい排ガス規制に対応できる噴射弁方式になっています。

燃料供給システムの概要について、解説していきます。なお、それぞれの詳細については別頁で解説します。

●理想的な混合気とは

エンジンの燃焼室でガソリンを効率良く燃焼させるためには、あらかじめ吸気ポート内でガソリンと吸入空気を混ぜ合わせた良質の混合気を形成することが重要です。

良質な混合気とは、以下の2つの要件を満たす混合気です。

・空気と燃料の質量比である空燃比が、運転条件に応じて適正に制御されている。

・十分に微粒化されたガソリンが、空気と均一に混合している。

ガソリンの噴霧は小さな液滴の集合体で、燃焼は液滴周辺の気化したガソリン蒸気で起こります。したがって液滴のサイズが小さい、微粒化されているガソリンほど気化しやすいため、効率の良い排ガスのきれいな燃焼が可能になります。

●2つの燃焼供給システム

バイクの燃料供給システムには、キャブレター方式と電子制御の噴射弁方式があります。

キャブレターは、吸気ポートの負圧を利用してガソリンを吸出し、霧状にして空気と混合させる燃料供給装置。一方の噴射弁は、電気的に噴射弁先端のニードル弁を開閉して、微粒化されたガソリン噴霧を吸気ポートに噴射する燃料供給装置です。

現在は排ガス規制が強化され、空燃比を高精度に制御する必要があるため、競技用バイクなどを除いてほとんどは電子制御の噴射弁方式を採用しています。ちなみに、排ガス規制が先行して強化されたクルマでは、2000年頃にはキャブレター車は完全に市場から消え去りました。

●キャブレター方式

キャブレター方式
バイク用語辞典

キャブレターは、吸気の流れの中に流路を絞るベンチュリーを設けて、吸入空気がベンチュリー内を通過するときに発生する負圧を利用してガソリンを吸い出します。吸い出された霧状のガソリンは、吸気の流れに乗って吸気ポート内で混合気を形成します。

エンジン回転やアクセルに応じて、ガソリンの吸出し量が変化するように巧妙にキャブレター内部の構造を設計します。ただし、常に精度高く空燃比を制御するのは構造上限界があるため、排ガス規制が強化された現在では採用は限られています。

●噴射弁方式

噴射弁方式
噴射弁方式

電磁式の噴射弁は、電気信号よってニードル弁を開閉して微粒化したガソリン噴霧を吸気ポート内に噴射します。噴射量と噴射時期は、エンジン回転やアクセル開度、吸気圧力、吸気温度などのセンサー情報から、ECU(エンジンコントロールユニット)で演算します。

2006年に排ガス規制が強化された時点で、精度高い燃料制御ができないキャブレター車のほとんどが電子制御の噴射弁システムに切り替わりました。

厳しい排ガス規制に適合するために採用されたのは、すでにクルマでは採用が進んでいた三元触媒を用いた空燃比フィードバック制御システムです。これは、排気管に装着した酸素(O2)センサーを使って空燃比(吸入空気質量/供給燃料質量)を理論空燃比(=14.7)に制御することによって、排気系に搭載した三元触媒で有害排ガスCO、HC、NOxを効率的に低減するシステムです。

空燃比フィードバック制御のためには、ガソリン噴射量を高精度に制御できる噴射弁方式が不可欠だったのです。なお、三元触媒は空燃比を理論空燃比(=14.7)に設定することによって有害ガスのCO、HC、NOxを同時に浄化できる触媒です。


ガソリンエンジンが発明されて間もなく現在のキャブレターの原型となる噴射装置は発明され、以降クルマやバイクでは長らくキャブレターが使われてきました。

排ガス規制が強化されたことで、自動車は2000年以前に、バイクは2000年以降にキャブレターから噴射弁方式に切り替わり、キャブレター時代は終焉を迎えました。

(Mr.ソラン)