■シリンダーに水が入った可能性があれば始動せず、まず水抜きをするのが鉄則

●水没のリスクは、シリンダーへの水の侵入、オイルへの水の混入、配線系のショート/断線など

洪水や大雨でバイクが水没した場合、何も処置せず再始動すると様々なトラブルが起きます。なかでも危険なのは、シリンダーの中に水が入った状態で始動してエンジンが壊れるウォーターハンマーです。

バイクの水没によるトラブルとウォーターハンマーについて、解説していきます。

●冠水路の走行

バイクで冠水路を走行する際、エアクリーナーの吸い込み口やマフラーの排気口の位置を超えて、エンジンの半分以上が浸かるような場合は、走行中にエンストする可能性があるので走行を止めて安全な場所に退避するのが安全です。

安全走行の観点からも、バイクの種類によっては水深が30cmを超えるとハンドルをとられやすくなります。路面の大きな石ころや穴も見えにくくなり、転倒しやすくなるので、例え短時間でも避けるべきです。

●冠水路走行や水没したバイクに起こるトラブル

冠水路を走行した、あるいは洪水や大雨でバイクが水没した場合、どこまで水没したかによってトラブルが異なってきます。

ポイントは、次の4箇所が水没したかどうかですが、バイクによってそれぞれの位置は異なるので、水深でトラブルの種類を特定することはできません。

・マフラーの排気口
水が排気口からマフラー内に入ると、ふん詰まり状態になるのでエンジンがかからない、あるいは燃焼が不安定になりますが、これは一時的な症状でそのうち水は蒸発するので大きなトラブルにはなりません。

・エアクリーナーの吸入口
エアクリーナーから吸気ポートやエンジンのシリンダー内に水が浸入して、その状態で始動のためにセルを回す(クランキング)と「ウォーターハンマー」が起こり、エンジンに大きなダメージを与えます。ウォーターハンマーについては、後で詳細に説明します。

・エンジンのシリンダーヘッド
エンジン上部のシリンダーヘッドが浸かるとエンジン内に水が浸入する可能性があり、オイルに水が混入します。水が混入すると、本来の潤滑機能が低下するのでエンジン摺動部が傷つく恐れがあります。すぐに焼き付くわけではありませんが、オイルをチェックして白濁しているようであれば、オイルを交換する必要があります。

・ECUや配線
ECU(エンジンコントロールユニット)や配線系は防水処置が施されていますが、水に浸かった場合ECUの作動不良や断線、ショートが発生し、エンジンや電装系が機能しない、最悪の場合は火災が発生するリスクがあります。

●ウォーターハンマーとは

ウォーターハンマー現象
ウォーターハンマー現象

水没直後にやってはいけないこと、それは始動のためにセルを回すことです。

シリンダーに水が浸入した状態で始動のためにセルを回すと、シリンダーの中の非圧縮性流体の水を無理やり圧縮することになります。水は逃げ場所がなく高圧になり、最悪の場合ピストンが変形してコンロッドが曲がってしまいます。これが、「ウォーターハンマー」という現象です。

エアクリーナーから水が入った可能性があれば、点火プラグを抜いてセルを回してください。水が入っていれば、クランキングすると点火プラグの穴から水が吹き出すので確認できます。


バイクが水没したときの最悪のトラブルは、シリンダー内に水が侵入してウォーターハンマーによるエンジンの破損と、電気系のショートによる火災です。大切なことは、不用意にエンジンをかけず、バッテリ端子を外して整備業者にチェックを依頼することです。

(Mr.ソラン)