■プロローグ/

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今回の主役、キャデラックXT4。試乗車は3機種あるうちの真ん中、「プラチナム」だった

自慢じゃありませんが、筆者は自動車メディアを作るという仕事にありながら、輸入車についての知識はとんと希薄です。リーンバーンエンジンの混合気よりも薄い! そして輸入車を所有したこともありません。したがって、輸入車がらみの解説やページづくりが苦手です…。というよりも、そのような業務にうまく近づかないようにしてきました(逃げていたのではない。)。

そんな筆者のもとに12月中旬のある日、小林編集長から「キャデラックXT4の試乗と記事化を」というオーダーが…。

今回は、輸入車音痴、国産車崇拝の筆者が、いきなり左ハンドルのSUVに乗るとどうなるかというレポートをお届けします。

●筆者目線では巨体だけど、中も外も「アメ車感」は意外に抑え気味!?

front face
アメ車的ギラギラ感はだいぶ薄れている

アメリカ車というと、筆者はギラギラ感いっぱいのクルマというイメージを抱いていたのですが、どうやらそれは中学生の時分、テレビで「ナイトライダー」を見すぎた影響によるもののようです。小学生の頃、盛んにテレビで放送されていたアメリカ映画の記憶もあるでしょう。

XT4のスタイルを見ると、「ナイトライダー」やアメリカ映画の中で走っていたアメ車の、あのギラギラ感はありません。フロントフェイスの、下に足?が伸びるT字型ランプ、無数に散らばる短いメッキバーとそれを囲むメッキ枠のグリルにキャデラックらしさ、アメ車感を抱くぐらい。リヤボディはいまや多くのクルマで見かける、タテ型を基本とするL字ランプを上方配置していて、リヤガラスが寝ているのに、初代、2代目の日産エクストレイルに似て見えるアングルもありました。ボディには煩雑なプレスや溝がなく、全体のスタイルは面と線で見せている印象ですが、近づけば面にけっこうな抑揚があり、重量感を抱かせます。

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車幅は1875mm
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全長は日本の5ナンバーサイズ上限に近い4605mmだが、背が高いせいで、意外と短く見える

ボディサイズは全長4605×1875×1625mm。車検証上は「ステーションワゴン」に類別されていますが、サイドから見たとき、リヤドアの後ろには「ステーションワゴン」ならありそうなクォーターガラスがないため、背が高いこともあって、全長4605mmからくる印象よりはずいぶん短く見えます…。ステーションワゴンといっても、ボディ形態は5ドアハッチバックなのです。

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全高は1625mm。乗用車に比べれば背高だが、横に立つとこれまた意外と高くはないと感じる

同じ印象は、三菱エクリプスクロスに抱きましたが、そういえばエクリプスクロスもリヤドア後端を上下にまっすぐ切ってリヤピラー側に三角プレートを残していたっけ。期せずして海の向こうとこちら側とで両車同じテーマを志向した格好です。

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XT4の計器盤全体
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XT4の計器盤、運転席エリアスイッチ群の詳細

インストルメントパネルにもアメ車的ギラギラ感はなく、これも最近のクルマでありそうな造形で、際立った個性は見当たりません。ハンドル正面にはメーター、センターにはナビ、直下には空調コントロールと安全デバイス&シートヒーターなどのスイッチが上下2列に並んでいます。

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センターコンソール部の操作類詳細
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計器盤センター下部のスイッチ群詳細

その下には前から後ろにかけて高めのコンソールが走り、電子シフト、ナビなどのコントロールをレイアウト…。世界的に自動ブレーキやコネクトナビ、電子シフトなどが一挙広まりを見せていますが、こうなると必要な操作類はおおかた似たようなものになり、結果的に同じような造形になってしまうのでしょう。

フロントガラスが傾斜しているので、ガラス上下寸は、面沿いには大きなサイズであっても、鉛直方向には短いため、左右はともかく、上下に適度な視界を得るには、シート高さのセットにちょいと繊細さが求められます。また、サイドドアガラスの上下寸もフロントガラスの鉛直上下寸に合わせているため、どうやら自分の首から上の決めどころはフロントガラス、サイドガラスのほぼ上下中央に限られそうです。というのも、ウエストライン(サイドガラス下辺)が高く、ルーフサイドも割と頭に迫っているため、駐車時に窓から顔を出そうとすると、顔の上か下、どちらかがぶつかってしまうのです。顔の大きい人だと窓から顔を出せないかも知れません。アメリカ人は大丈夫なのかな…。

さて、年々厳しくなる衝突対策の要請で、新型車になるほどフロントをはじめとする各ピラーが太くなり、視界を阻害していることに筆者は辟易しています。

しかし、視界の良し悪しが単にピラーの太い細いだけでは決まらないものです。それをXT4が証明してくれています。

確かにXT4のフロントピラーは太いものでしたが、そのイメージほど視界低減は感じませんでした。なぜなら1875mmという車幅ゆえに横方向にもフロントガラスが広いぶん、「ガラス面積に対しては太いとはいえないピラーなんじゃないの」ということになり、フロントピラーの影響が少なく感じるのです。横方向に広いということは柱が遠いことを意味し、太くても遠ければ結果的に細く見える…。ピラーの太い細いだけではなく、その太さがガラス面積に比してどれくらいの割合なのか、ドライバーからどれくらい離れた位置にあるのかによっても変わってくるわけです。もしこのピラー太さのまま、XT4が日本伝統の5ナンバーサイズの車幅1695mmのクルマだったら、相当視界の悪いXT4になったことでしょう。もっともデザインも同様、想像したくないくらいですが。

●230ps以上に感じる加速感と、変速ショックが感じられない9AT

前後タイヤ圧を規定値2.4kg/cm2にセット。筆者がこれまで乗り継いできたクルマは、偶然にもタイヤ径が順序よく12、13、14、15インチだったのですが、20インチものタイヤとなると、バルブが上半分に位置していれば、空気圧確認でいちいちしゃがまないですむという新しい発見がありました。まあ、小径タイヤ車にしか乗ったことのない貧乏性人間だからこその話ですが。

情けない話はさておき、本記事作成のために試乗開始したのは年末の夜でしたが、慣れない左ハンドル車でも都内の道をそれなりに走れるクルマでした。

lsy engine
LSYエンジン。加速時には、1780kgをものともせず引っ張る、引っ張る、引っ張る! 230psという数値以上の感触だった

幹線路や高速道路で「いいな」と思ったのは、その加速感。先行車を追い越すのにアクセルを踏み込んだら、まるで後続車から追突されたかのように、ヘッドレストから強力に後頭部を直撃された(本当です)ほどの加速力を見せつけてくれます。

周囲との流れに合わせなければならない街中ではそれ相応の走りを示しますが、いざ加速というときには待ってましたとばかり、本来のポテンシャルをむき出しにする。230psなのに、このシートバックが背中を押してくるような加速感は、いまや末期モデルにある、3.7L、336psの現行フェアレディZのそれを思い出すし、性格がガラッと豹変する様はもしやターボエンジン車かと思って後からカタログを見たらターボつきでした。

新型車に試乗するとき、筆者はあえて予習をしないことにしていますが(本当は幅広の左ハンドル車ということに気が重くなっていて、今回はなおのこと予習どころではなかった…)、カタログを見てもうひとつ「あれ、そうだったの」と思ったのは、「低負荷時には4気筒のうちの2気筒を休止」させる「アクティブマネージメントシステム」を搭載しているのだと。2気筒を休ませているかどうかの表示を見落としていたということもありますが、少なくとも走っている間、街乗りであれ高速道であれ、音や振動の変化にはまったく気づきませんでした。ということは、このマネージメントシステムの裏方仕事ぶりは成功しているということであり、筆者はうまく引っかかってしまったわけです。

XT4のATは、リバースも含めてひとつふたつ上のXT5、XT6と同じギヤ比を持つ9ATで、最終減速比だけXT5、XT6の3.490から3.470に上げただけのもの。車両重量が1990kgのXT5、2110kgのXT6に対して1760〜1780kgと、比較的軽量となるXT4(試乗車プラチナムは1780kg)なら、音や燃費の低減のためにいくらかハイギヤード化しても支障はないという判断でしょう。

筆者がAT車で、走りの感触から「いま何速で走っているのか」がわかるのはせいぜい4速までで、XT4の9速ATともなると現在の段数を把握するのはほとんど不可能でした。そもそも刻みが9つともなると隣り合うギヤ比が近いため、ゼロ発進から巡航までの間、シフトアップが順繰りに行われるならその変速ショックは小さくならざるを得ないのです。メカに興味のないひとならCVTなのかステップATなのかわからないまま走るひとも多かろうと思います。

XT4が、高速道路はめったに使わない、クルマ使いは街乗り主体というひとに買われた場合、ATが9速目までシフトするチャンスはまずないでしょう。80km/hで走っていてさえ、ギヤは8速までで、それより上の速度に入ってようやく9速ギヤに入るという制御です。

meter 1600rpm at 100km per hour and 9th gear with text
100km/h、5〜9速でのエンジン回転数。
meter 1500rpm at 80km per hour and 8th gear with text
80km/h、4〜8速時のエンジン回転数。80km/hていどでは最上位9速には入らない

なお、100km/h、9速目のギヤでのエンジン回転は、国産1500cc級CVT車並みに低い、約1600rpmでした。ほか、80km/h時と100km/h時の各ギヤのエンジン回転数を調べて表にしましたので参考にしてください。

shift lever 9at
完全な電気接続式となるATレバー。初めての人はじっくり取扱説明書を見て練習しよう。ロジックを飲み込めば意外とすぐに慣れるよ!

ATといえば、このクラスで増えてきている電気式シフトレバー。乗り始めのときは少々戸惑いを覚えましたが、少し時間をかけたら慣れました。筆者でさえ慣れたのですから、誰でも慣れるでしょう。

プリウスの電気式シフトと似ていて、起点はいつも同じ場所。レバーをいくら前後させようと、手を離せば元の位置に戻ります。エンジンスタート時はトランスミッション内部で「P」にあり、サイドボタンを押しながら手前に引くと「D」、手を離してもAT内部ではDのままというロジックです。これは「R」でも同じ。

●大きいなりでも軽やかなハンドル

ハンドルは電動パワーステアリングで、クルマのキャラクターとは裏腹な軽さを持つものです。さきほど軽量な車重といいましたが、それはXT5、XT6というあんちゃんたちと比べての話で、1780kgが重量級であることには違いありません。その割に街乗りの右左折にしても高速道路の車線変更にしても、1300kg前後の1500cc車並みの感触でしかなく、街乗りや駐車場速度では軽々とまわせるいっぽうで、他の電動パワステと同様、高速道路では重くなる…というよりも、しっとりした反力が得られる程度にアシスト量が減るという具合に変化します。

tire 245 45r20
薄い45%プロフィールなのに乗り心地はよかった。サスペンションの造りがうまいのだろう。なお、ロープロフィールタイヤは外から見てパンクがわかりにくいので(初めからつぶれているかのように薄いため)、タイやメンテナンスはなおのこと念入りに

それにしても、245/45R20という太いタイヤであるにもかかわらず軽々まわせるようになるとは! 世界的に電動パワステの造り方がよほどうまくなったのでしょう。

steering left lock 1 with text
中立からハンドルを左にロックするまでの回転数は、1回転と135度ほど。

ハンドル中立から左いっぱいまわしは、目視で1回転と135度ほど、フィット試乗のときに確認を忘れた端から端までのロックtoロックは、2回転と270度ほどでした(単純に倍になるのだからあたり前だ。)。

steering left lock 2
そのときのタイヤ各はこのような具合だ。

左ロック時のタイヤ切れ角は写真のとおりですので、ご参考に。タイヤが太いぶん、キレ角は少ないように思えますが、小まわり性は1500cc級の185mmタイヤ幅のクルマ並みと感じました。むしろ見た目の割にはまわる方かなという感じ。ただし、幹線路でUターンする場合は、1回の切り返しができるくらいの余裕は持っておいたほうがいいでしょう。

door mirror clearance 2135mm with text
左右ドアミラー間の距離は2mを超えるので、慣れまでは狭い道に入らないようにするのが賢明だ

気をつけなければいけないのは、車幅もさることながら、ドアミラー。左ハンドルと1870mmの車幅に戸惑いながら乗り込んで最初に感じたのは、助手席側(=右側)のピラーとドアミラーがあんなに遠い!ということでした。落ち着いた頃にドアミラー左右間を測ってみたら2135mmもありました。アメ車乗りには慣れっこなものかも知れませんが、初めてのアメ車がXT4という方は、慣れるまでは狭い道に入ることを避けたほうがよさそうです。

seat front
シートサイズはこれで充分!

車室の幅ぶんほどシートが大きいとは思いませんでしたが、少なくとも日本市場に於いてはこれ以上の大きさは必要ないでしょうし、これで小さいというひともいないでしょう。よほどの巨漢でもないかぎり、日本人体型の80%はカバーできるものと思われます。

シートは運転席、助手席ともリクライニング、スライド、シート上下のすべてがパワー仕様。故障したときの面倒さに目をつぶれば、筆者はシートはパワー式がいいと思っており、事実、いつでもパワーシートに憧れているひとりです。リクライニング調整、スライド調整で、「こことここの間がいいのに」といいたくなるクルマがありますが、パワー式はその不満を解消してくれます。

seat rear height with text
リヤシート周辺も測ってみた。どの数値も前席よりわずかずつ高くなっている。ことにリヤシート座面はかなり上がっており、座ると見晴らしがよい。
seat front height with text
いっぱんに、乗り降りしやすい座面高さは地上から600mm前後の範囲といわれている。XT4のシート座面はその範疇にあり、フロア高さも高くはないこともあって、乗降性に気になった点は一切なkった

XT4でいいと思うのは、助手席も含めて座面の高さ調整とチルト調整ができること(XT4プレミアムの助手席は高さ調整のみ)です。というわけで、リクライニング前後、スライド前後、高さ上下、チルト上下の合計8ウェイ。これだけあれば、座高の高低、足の長短、どんなひとがやってきても、「ガラス上下の中間(先述)」に顔が来るようにセットできるでしょう。その代わり、写真に記すための座面高さを測るのには苦労しましたが。

さあ、XT4内外、走りについてはここまで。

次回は安全デバイスについて解説していきます。

(文・写真:山口 尚志)

【試乗車主要諸元】

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キャデラックXT4 プラチナム

■キャデラック XT4 プラチナム(左ハンドル・7BA-E2UL型・2021(令和3)年型・9AT・ステラーブラックメタリック)

●全長×全幅×全高:4605×1875×1625mm ●ホイールベース:2775mm ●トレッド 前/後:1600/1600mm ●最低地上高:-mm ●車両重量:1780kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:-m ●タイヤサイズ:245/45R20 ●エンジン:LSY型(水冷直列4気筒) ●総排気量:1997cc ●圧縮比:- ●最高出力:230ps/5000rpm ●最大トルク:35.6kgm/1500-4000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(筒内直接噴射) ●燃料タンク容量:61L(無鉛プレミアム) ●WLTC燃料消費率(総合モード/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):-/-/-/-km/L ●JC08燃料消費率:-km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ディスク/ディスク ●車両本体価格:670万円(消費税込み)