■ただの特別仕様車では終わらせないスズキの狙い

ラパン・メイン
レトロなフロントフェイスはフロンテをオマージュしたもの

スズキの「ラパン LC」が話題です。

そろそろモデルチェンジか?という時期に登場させるタイミングがそもそもスズキらしいですが、1967年発売の「フロンテ」をモチーフにした専用のフロントグリルや、ブラウンの内装が実に魅力的です。

もちろん、同車の形式名を使ったネーミングもユニーク。

スズキは、以前からこの手の特別仕様車の企画が実に巧みなメーカーです。特別仕様車自体は珍しくありませんし、ちょっとした内外装の変更という手法もごく一般的です。

ところが、その特別感の出し方がとにかく巧いのです。

●もうひとつの選択肢となりうる魅力的な企画

たとえば「スペーシア ギア」もそうした1台です。フロントグリルやバンパー下部、サイドモールなどの要所にガンメタリック塗装を施し、タフでワイルドなSUV感を演出。快活なイメージのアクティブイエローをメインカラーとして訴求力を強化。

ラパン・スペーシア
スペーシアギアは同車の販売のけん引役にもなっているヒット作

インテリアも、特徴的なインパネアッパーボックスにボディに準じたガンメタリックを使ったり、カーキステッチを用いた撥水加工のシートを採用するなど、マリンスポーツやスノーボードなどを想起させる雰囲気作りが巧いところ。

さらに、このギアを標準車とカスタムに並ぶ、もうひとつの選択肢としたことも巧妙さを感じるところです。

実はラパンLCも同じ扱いなのですが、単なる一時期の特装車で終わるのでなく、ラインナップの柱として設定しているのです。逆に言えば、それだけの商品力があるということでしょう。

●特別仕様シリーズを地道に育てる

ラパン・ハスラー
2代目ハスラーにも「J STYLE」シリーズが引き継がれている

現行車では「ハスラー J STYLE II」にも同じことが言えます。

メッキを使ったフロントフェイスやドアハンドル、特別色のバンパーにルーフといった外装、レザーとファブリックを組み合わせたシート、チタニウムグレーを施したインパネの内装と、やっぱり特別感が身上。

この「J STYLE」シリーズは先代から展開されているグレードで、いまや定番の特別仕様となっています。同じ特別グレードを長期間に渡って育て上げる点も、スズキらしい「したたかさ」が感じられるところです。

さて、こうした企画の巧さをより強く感じたのが、2019年の東京オートサロンに出品された「ジムニーシエラ ピックアップ スタイル」でした。

これはあくまでもコンセプトカーですが、ベース車の魅力を倍増させる見せ方には驚きです。

ラパン・ジムニー
2019年の東京オートサロンで話題になったピックアップスタイルの提案

新規に荷台を設けることでDIYを楽しむ生活を想定、アクティブなピックアップスタイルを提示しました。さらに、ベージュのステアリングやチェック柄のシートなど、インテリアも徹底してアクティブライフを演出していたのです。

●CMFデザイナーの活躍が魅力的な企画に

このジムニーについては、当時会場で担当デザイナー氏に話を聞いたのですが、こうしたスズキの企画の巧さには、エクステリアだけでなく、CMFデザイナーの積極的な起用に秘訣があるという点が実に印象的でした。

ラパン・ジムニー2
インテリアもピックアップのイメージを徹底して追求したもの

CMF、即ち「カラー」「マテリアル」「フィニッシュ」を担当するデザイナーは、スタイリングを行うエクステリアデザイナーに比べると、まだまだその活躍が語られる機会は多いとは言えず、どこか縁の下の力持ち的な存在に思われがちです。

しかし、スズキでは以前から特別仕様車の企画にこのCMFデザイナーが大きく関わっており、その分オリジナリティのあるユニークな商品が生まれています。

最小限のカスタマイズで最大限の商品価値が期待される特別仕様車では、カラーやマテリアルの工夫が決め手になるのです。

これから登場する各社の特別仕様車については、このCMFデザイナーの活躍に注目すると、より奥行きのある見方ができるかもしれません。

(すぎもと たかよし)