■1年待ったかいのある最新ハイブリッドの完成度

2022年で50周年を迎えたホンダ・シビック。1972年生まれの筆者と同じ年月を経て、現行型で11代目を数えています。初代からグローバルカーとして誕生し、現行型は、主に北米市場もにらみながらCDセグメント級といえるボディサイズが与えられています。

ホンダ シビック
シビックe:HEVの走行シーン

現行型は、2021年8月に1.5Lガソリンターボを搭載してデビューし、2022年7月にスポーツハイブリッドを謳う「e:HEV」が追加されています。

1.5Lガソリンターボから遅れること約1年、満を持して投入された2モーター式ハイブリッドの「e:HEV」。

新開発の2.0L直噴エンジンをはじめ、軽量化と高出力化が図られたPCU(パワーコントロールユニット)、低全高の新しいセルが採用されたリチウムイオンバッテリーを含めたIPU(インテリジェントパワーユニット)の搭載など、e:HEVを含めたパワートレーンの進化が盛り込まれています。

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シビックe:HEVのリヤビュー

具体的には、モーターのレスポンス向上、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)に迫るドライバビリティやサウンド、CVTを超えるスムーズさを謳っています。

インサイトよりもEV領域を拡大したことで、街中ではモーター走行による滑らかな走りを享受できます。もちろん、EV走行時ならではの静粛性の高さも1.5Lガソリンターボを確実に上回る印象で、大人の上質なセダンといった雰囲気に満ちています。

●ハイブリッド車を「燃費で元が取れるか」という視点だけで見るのは古い

日本ではハイブリッドが普通になった現在では、純ガソリンエンジン車とハイブリッド車のどちらが得か(あるいは損か)という視点のみで、クルマ選びをする人が減っているように感じられます。

純ガソリンエンジン車に対して、重さもコストも嵩張るハイブリッドではあるものの、走りに関しては、静粛性やモーター駆動ならではの力強さ、あるいは、重さによる乗り心地への影響(良い、悪い両方ある場合が通例)、もちろん圧倒的といえるモード燃費の差もあります。

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シビックe:HEVのインパネ

某国産ディーラーの関係者と話していても、「ハイブリッドは、何km走ったら燃費で車両価格差の元が取れる?」といった質問が減っているそう。ハイブリッド車に乗ったことのある人が増え、ハイブリッドからの買い替えであれば、その利点は、単に燃費だけではないことを実感しているからかもしれません。

ちなみに、シビック「e:HEV」のWLTCモード燃費は、24.2km/Lに達します(レギュラーガソリンを指定)。ハイブリッドの代表選手であるトヨタ・カローラ(カローラスポーツ)の場合、16インチタイヤ装着車の最高値は、30km/Lに達するものの、225/40R18タイヤを履くカローラスポーツの「Z」は25.6km/Lで、その差は大きく縮まります。

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シビックe:HEVのタイヤ&ホイール

シビックe:HEVは、235/40ZR18タイヤを装着。また、プレミアムガソリンを指定するシビックの1.5Lガソリンターボは、16.3km/Lとなっています。

●静粛性もハンドリングも純ガソリンエンジン車よりも上手

とはいえ、ガソリンターボ仕様の評価を下げるのが本稿の狙いでは決してありません。

今回、シビックe:HEVの試乗の前に、ガソリンターボ車のCVT、MTにも再度乗る機会がありました。足まわりは引き締まっていて、とくに低速域では揺すぶられるような乗り味が気になったものの、とくにMT仕様は、完成度の高い硬質なシフトフィールが味わえるMTの出来映えもあり、スポーツセダンといえる走りを堪能できます。

単にドライバビリティを重視するのならガソリンターボのMTがベストチョイスでしょう。

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シビックe:HEVの走り

しかし、現行シビックの大本命は、2005年登場の8代目以来となるこのハイブリッド仕様。

先述したように、走り出しからスムーズかつ力強く、パーシャル域からの加速に対しても即座に反応してくれます。しかも、アクセル操作に対して過剰に反応する「飛び出し感」もなく、右足の操作に対してリニアに反応してくれます。

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シフトバイワイヤ化により、スイッチ式セレクターを採用

ストップ&ゴーの多い市街地は渋滞時であれば、ECONモードにしておいてもストレス知らず。また、ノーマルとスポーツモードでは、もう少し分かりやすい差があってもいいように感じられましたが、山岳路ではスポーツモードで確かなパンチ力が得られます。

「e:HEV」の魅力は、モーターによるスムーズさだけでなく、新開発の2.0L直噴アトキンソンサイクルエンジンからも存分に感じられます。

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シビックe:HEVのエンジン

熱効率は世界トップクラスの41%で、燃費の向上に寄与するとともに、圧倒的といえる静粛性、つまり、音・振動の少なさにも本当に感心させられます。吸気パッケージ、ウレタンインシュレーターによるエンジンの吸遮音構造の採用、クランクシャフトの高剛性化、2次バランサーによる振動抑制などが盛り込まれていて、ホンダエンジンらしいサウンドを聴かせるよりも、裏方に徹しているという印象を受けます。

なお、スポーツモード時には、スピーカーからエンジン回転に同期したサウンドが聞こえてきますが、全体的に静かで上質な仕上がりに対して、やや唐突感も否めません。

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「スポーツ」モード時にセンターディスプレイ

一方で、加速Gが即立ち上がり、エンジンドライブモード時は、インサイトよりも走行可能領域が拡大したことで、高速道路などでは、ホンダらしい爽快な走りを享受できるはず。

そのほか、ガソリンターボ車よりも重心高が10mm下がったことで、より地に足がついたハンドリングが得られるだけでなく、低速域の路面からのショックも抑制されています。広大な後席や開口部が大きく、積載性の高いラゲッジスペースなどの美点はもちろん、純ガソリンエンジン車譲りです。

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走行モードの切り替えスイッチ

また、エレクトリックギヤセレクターに滑り止めが追加され、使い勝手が向上したなど、細部への配慮も施されています。

400万円級となるシビックe:HEV。謳い文句である「爽快シビック」の中でも大人の上質感を存分に抱かせてくれます。

●シビックe:HEV 価格:394万200円

(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)