■3社の協業はミッドシップ・スポーツカー開発にも活かされる

日本自動車工業会(JAMA)が、G7広島サミットの会場に隣接する「ひろしまゲートパークプラザ」において、カーボンニュートラルへの取り組みを紹介する展示イベント「Diversity in Carbon Neutrality」(5月18日〜21日)を開催しました。

スズキ仕様のBEV商用軽バン(筆者予想含む)
スズキ仕様のBEV商用軽バン(筆者予想含む)

会場ではトヨタ自動車、ダイハツ工業、スズキ自動車の3社が共同開発したBEV(電気自動車)の商用軽バン(プロトタイプ)が公開されました。

車名はトヨタが「ピクシス バン」、ダイハツが「ハイジェット カーゴ」、スズキが「エブリー」をベースとしたネーミングを予定している模様で、会場ではダイハツ仕様を展示。

ちなみにトヨタとダイハツ仕様のエクステリアはエンブレムを除き共通のようですが、スズキ「エブリー」はフロントバンパーのデザインが専用で、同社としての個性を出しているようです。

生産は一貫してダイハツが担当し、3社共にそれぞれ2023年度内の市場導入を目指しています。

スズキ、ダイハツの“小さなクルマづくり”のノウハウとトヨタの電動化技術を融合することで、軽商用車に適したBEVシステムを構築。

ボディサイズは全長3,395×全幅1,475×全高1,890mmでホイールベースは2,450mm。4人乗りの後輪駆動で最大積載量は350kg。一充電当たりの航続距離は200km程度を見込んでおり、配送業などのニーズに応える車両を目指しているそうです。

●リーズナブルな価格の「ミッドシップ・スポーツ」を共同開発

トヨタ「SPORT EV」
トヨタ「SPORT EV」

今回のトヨタ・ダイハツ・スズキの3社による協業は、今後登場が予想されている1.0Lクラスのコンパクト・ミッドシップ・スポーツカーの共同開発を想起させます。

販売台数が限られるスポーツカーでは、トヨタ「スープラ」や「GR86」がそうであるように、他社と共同開発することでコストアップを抑制するのが常套手段になっています。

自動車メーカーが販売台数の期待出来ないスポーツカーを開発する背景には、若者のクルマ離れが進むなか、「クルマ好き」の裾野を広げる目的があるようです。

トヨタ「SPORT EV」
トヨタ「SPORT EV」

各種情報によると、2025年までに比較的手頃な価格の高性能ミッドシップ・スポーツカーが誕生する見込みで、トヨタのTNGAの知見のもと、スズキやダイハツが得意とする“小さなクルマづくり”のノウハウがここでも活かされます。

エクステリア・デザインは2021年の“バッテリーEV戦略に関する説明会”で公開されたBEV「SPORT EV」がベースになるとみられ、ダイハツがコペンで培った脱着構造「Dress-Formation」により、3社がそれぞれオリジナル・デザインのアッパーボディを被せると予想されています。

●3社にはライトウエイト・スポーツ開発の歴史が存在

トヨタのミッドシップスポーツ「MR2」
トヨタのミッドシップスポーツ「MR2」

トヨタのライトウエイト・スポーツと言えば、1984年に登場したミッドシップモデル「MR2」が有名ですが、実はダイハツもスポーツカー開発の歴史は古く、コペンの他にも1991年の東京モーターショーで公開された童夢との共同開発によるFR仕様のダイハツ「X-021」が存在します。

ダイハツのFRスポーツ「X-021」
ダイハツのFRスポーツ「X-021」

一方のスズキも2021年5月、イタリアで「Misano(ミサノ)」を突如公開して大きな注目を集めました。

そうしたなか、今回はヤリス用GA-Bプラットフォームのフロントサスペンションを活用してミッドシップ用に新調するようで、エンジン開発はスズキが担当。

スズキのコンセプトスポーツ「Misano」
スズキのコンセプトスポーツ「Misano」

スズキのK10C型 1.0L直3DOHCターボエンジンをベースに改良を加え、120ps/20.0kgm程度にパワーアップした上で、これに5ps程度のモーターを組み合わせてマイルドハイブリッド化。

6速MT/6速AT仕様を用意するようです。

トヨタ「SPORT EV」
トヨタ「SPORT EV」

車両サイズは全長4,200mm×全幅1,720mm×全高1,220mmでホイールベースが2,550mm。車重は1,000kg程度に抑えられる模様。

気になる車両価格は200万円台前半〜に抑えられるようで、今後の動きが大いに注目されます。

(Avanti Yasunori)