1984年から始まったDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)で最強、常勝だったメルセデスが、フォーミュラEへ移行するから2018年限りで撤退・・・とのニュースが流れてきました。また、ポルシェが2017年限りでル・マンをはじめとしたWECから撤退とか。レースの世界でもガソリン車は肩身の狭い思い(?)をし始めていますが、心地よい濃い目のガスの香りがする世界からの大メーカー撤退は、レース好きのOPT読者としてはちょっと寂しいです。

で、レース色も濃いメルセデスですが今回、紹介するこの記事は1982年なのでDTMが始まる少し前になります。ル・マンにも復帰する前なので、メルセデスはレースの世界からはちょっと遠のいている頃ですね。

で、この当時のストリートでチューンド国産車のライバルは、日本初の300km/hオーバーを果たしたパンテーラや、それに続く大川トランザムをはじめとしたアメ車軍団やポルシェといった感じ。チューニング的にはちょい蚊帳の外っぽい感じを持つのもメルセデスでした。

しかし、メルセデスにはAMGという魅力的なラインもあります。OPTだって見逃すわけにはいきません。はたして、その敵はどんなヤツなのか? そして、当時の「最新型」も懐かしいです。

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世界最速マシン・シリーズ

メルセデスベンツを狙え!

まるで高速原子力艦のように堂々とクルージングするメルセデス。秘めた力を超高級サルーンボディで覆っているだけにニクイ。国産チューンドカーの強敵、まずは敵をよく知ることが重要だ。

メルセデス・・・なぜOPTがこんな高級車を気にするか。メルセデスは重厚な衣を着ているが、スピード・スピリッツに溢れているからだ。最高速記録車や、かつて「シルバーアロー」と呼ばれ全世界を震撼させた栄光のレースヒストリー。国産チューンドカーの標的に不足はない。なんといってもSクラスにはまるで最速記録車「C111」の血が流れているようなエアロダイナミズムがある。さらに、メルセデスにはAMGチューンというスペシャル版が大流行中。性能追及への情熱は、超高級車も国産チューンドカーも共通なのだ。

 

目醒めるスピードスピリットに注目

「スリー・ポインテッド・スター」、これが陸・海・空の3界を制覇するシンボルというのはすごい。ベンツ博物館にはあらゆる自動車とともにモーターボート、飛行船、高速魚雷艇、戦闘機、長距離爆撃機、速度記録機。さらにパワーショベル、ドイツ国鉄のディーゼル機関車までが雄姿を誇っている。

海・空はともあれ、1886年にダイムラーとベンツが期せずして4輪と3輪車を発表して以来、メルセデスは自動車の始祖である。そしてレースと共に生きてきた。その過程において、メルセデスほど「最強」の名を欲しいままにしたメーカーはない。

1894年、世界初のレース(パリ−ルーアン間)はダイムラー・エンジン車が上位独占。第1次大戦後はタルガ・フロリアから制した。1934年からの750kg制限フォーミュラ時代にはW125という名マシンが登場。1938年の3Lフォーミュラではスーパーチャージャー・マシンが他を圧制した

スポーツカーの名作300SL/SLRがル・マンで大活躍したのも有名な話である。そして1955年のル・マン、大事故によりレース撤退宣言。

が、今・・・。メルセデスに何かが起こりつつある。

その兆候は、1977年。ロンドン・シドニー・ラリーで勝ち、本格的なWRC挑戦の1979年東アフリカ・サファリで爆発した。が、ダットサンの前に敗退。サッと手を引いたのである。勝てない体勢では参加しない。「メルセデスは出る以上、絶対勝たなければならない」のが鉄則だ。ゲルマン魂なのだ。が、軽量のW201がラリーに登場すれば、巨星メルセデスは名実ともに「世界最強マシン」の座に蘇る可能性がある。

速度記録にしてもしかり。ガルウイングのC111-3はディーゼルターボの実験車で322km/hの記録を持つ。続いて4号がV8ターボに挑戦して403km/hを樹立した。

メルセデスの速度記録挑戦はスピードのみの追及ではない。新しいマテリアム開発の結果に過ぎないのだ。C111はあらゆるエンジンでの可能性の実験だった。次はエタノールエンジンや電気自動車の記録を狙うかもしれない。ポスト・ガソリン車の近未来メカに意欲的だからだ。

巨星は今、立ち上がろうとしている。スピードを求めて・・・。チューンドカーもこのスピリッツに負けてはいられない。メルセデスをぶち抜け!

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1955年のル・マン大事故からのレース撤退後、ラリーから再開するまでのメルセデスのゲルマン魂を覗いてみました。次回は、メルセデスが挑戦した速度記録、そしてAMGの世界をみてようと思います。

 

[OPTION 1982年7月号より]

(Play Back The OPTION by 永光やすの)