■長い歴史の中でレギュレーションの変更を繰り返ながら様々なエンジンを規定

●現在(2019年)は1.6L V6(バンク角90°) ターボエンジンに統一

F1用のエンジンとしては、現在は1.6L V6ターボエンジンに規定されています。エンジン形式や排気量だけでなく、構成部品のサイズや重量、材質まで詳細に規定されています。

テクニカルレギュレーション(技術規約)で規定されたF1用エンジンの特徴について、解説していきます。

●エンジンのレギュレーション

F1エンジンは、50年以上の歴史の中で排気量や気筒数、過給機の有無などレギュレーションの変更とともに進化してきました。過去には、NA(自然吸気)エンジン、V8、V10エンジンが設定されたこともありましたが、現在(2019年)は1.6L V6(バンク角90°) ターボエンジンに統一されています。

レギュレーションでは、エンジン形式や排気量だけでなく、吸排気4弁、直噴システム(噴射圧500bar以下)、点火システム、ピストン形状、各部の部品サイズや重量や材質などが詳細に規定されています。

さらに、最高回転数1万5000rpm、重量145kg以上、1レースで使用できるエンジンの燃料量110kg(瞬間的な燃料流量は100kg/h)などの制約もあります。

現在F1エンジンを供給しているのは、ホンダ、メルセデス、フェラーリ、ルノーの4メーカーです。

レギュレーションの規定が厳しくほとんど設計自由度がない中で、独自技術を盛り込んで性能向上を図っています。

F1用パワーユニット
F1用パワーユニット

●F1エンジンに求められる性能

サーキットでより速く走行できるように、走りに特化したF1エンジンには次の特性が求められます。

・最大トルクと最高出力が高い ⇒ 加速性能や最高速度を向上

・トルクバンドが広い ⇒ シフトチェンジ回数が減りドライバーの負担が軽減され、加速性能が向上

・アクセルレスポンスに優れる ⇒ 加速レスポンスに優れ、操作性が向上

・燃費が良い ⇒ 搭載燃料量が少なくなり、重量面で有利

・小型軽量で低重心 ⇒ 荷重配分やヨーモーメントが制御しやすく、運動性能が向上

・耐久信頼性が高い ⇒ レース中のトラブルが減少

●市販車エンジンとの大きな違い

・ショートストローク化
燃費と出力のバランスを考慮すると、一般的にはボア/ストローク比は1:1のスクエアが有利です。高回転高出力を目指すF1では、吸排気弁を大きく設定でき、ピストン速度が抑えられるボアの大きいショートストロークを採用します。ホンダのF1エンジンのボア/ストローク(80mm/53mm)は、超ショートストロークエンジンです。

・吸排気弁駆動(ニューマチックバルブ)システム
市販エンジンでは、吸排気弁にバルブスプリングを使っていますが、最高回転1万5000rpmで回転するF1エンジンでは、吸排気弁の開閉が追従できず不安定になります。そのため、バルブスプリングの代わりに高圧空気で制御するエアスプリング方式を採用しています。

・カムシャフトのギヤ駆動
市販エンジンのカムシャフトは、ベルトやチェーンを介してエンジンで駆動します。F1エンジンは、高速回転での信頼性や耐久性強化のためギヤ駆動方式を採用しています。

・ドライサンプ方式
市販エンジンではオイルパンに潤滑オイルを貯めて、そこからオイルポンプで吸い上げて各部に潤滑オイルを供給しています。F1エンジンでは、大きな遠心力や慣性力が働くため、油面の変動によってオイルポンプの吸い上げが不安定になります。そのため、別体のオイルタンクとポンプによって各部に潤滑オイルを供給するドライサンプ方式を採用しています。

・スロットルバイワイヤ方式
最近は市販車でも一般的ですが、アクセルとスロットルをワイヤで連結するのではなく、電気的に連結するスロットルバイヤ方式を採用しています。エンジン出力を高速に制御するF1エンジンには、必須です。


F1用エンジンは、サーキットを速く走るために最先端技術を駆使して最高回転1万5000rpm、最高出力800〜1000PSを実現しています、

まさにエンジンの頂点に君臨するエンジンと言えます。

(Mr.ソラン)