■背の高さとスライドドアが大きな特徴

今や新車販売台数の4割近くを占めると言われている軽自動車。その中でも近年の新車販売台数などで常に上位を占め、高い人気を誇るジャンルが「軽スーパーハイトワゴン」です。

代表的なモデルは、ホンダの「N-BOX」やスズキの「スペーシア」、ダイハツの「タント」など。また、2020年3月に登場した日産の「ルークス」とその兄弟車の三菱「ekスペース/ekクロススペース」なども同ジャンルに入るモデルです。

これらの大きな特徴は、いずれも全高1700mmを超えて後席にスライドドアを備えていること。では、なぜこういったモデルは幅広い層から大きな支持を得ているのでしょうか。代表車種を例に挙げながら、人気の秘密に迫ります。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
2020年8月に一部改良を受けたスズキ・スペーシア。このモデルも軽スーパーハイトワゴンの1台

●余裕の室内スペースが魅力のN-BOX

軽スーパーハイトワゴンと呼ばれるタイプで、最も売れているのがホンダのN-BOXです。

業界団体の全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の調査によると、2019年度(2019年4月〜2010年3月)軽自動車の新車販売台数ランキングで1位(24万7707台)。しかも、1位獲得は5年連続、登録車も含めた新車販売台数でも3年連続でトップに。また、2020年上半期(1〜6月)でも10万1454台で堂々の1位に輝いています。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
ホンダ・N-BOX

2017年に発売された現行型N-BOXのボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1790-1815mm。660cc・直列3気筒の自然吸気エンジン(58ps)とターボエンジン(64ps)といった2タイプのガソリン車を設定し、カタログ燃費はJC08モードで23.4〜27.0km/Lを実現。2WD(FF)車と4WD車があります。

また、ミリ波レーダーと単眼カメラなどを融合した高精度な検知機能を持つ安全運転支援システム「HONDA SENSING」を全車に標準装備、安全面の装備も充実しています。

室内サイズは長さ2060-2240mm×幅1350mm×高さ1400mmで、2.0Lミニバン並みの前後シート間隔を実現しています。

これは、ホンダの特許技術「センタータンクレイアウト」の採用によるもの。通常は後席や荷室の下にある燃料タンクを前席下に配置するこの技術により、大人4人が乗っても余裕のスペースを確保。また、高い室内高により後席フロアで小さい子どもが立ったまま着替えが出来たり、背が高い荷物を楽に積むことも可能としています。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
N-BOXの後席スペースは広々(写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

●安全機能をより充実したスペーシア

N-BOXのライバルとなる軽スーパーハイトワゴンには、まずスズキのスペーシアがあります。

前述の全軽自協による2019年度(2019年4月〜2010年3月)軽自動車の新車販売台数ランキングで3位(15万9799台)。今年に入っても売れ行きは好調で、2020年7月の同ランキングではタントを抜いて2位(1万3338台)となっています。

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スズキ・スペーシア

スペーシアの初代は2013年に登場、現行の2代目は2017年に発売されています。ラインアップには、カスタムモデルのスペーシアカスタムやアウトドア人気を意識したスペーシアギアなども用意しています。

また、2020年8月にはスペーシア・シリーズ全車の安全装備を一部改良。夜間の歩行者も検知するデュアルカメラブレーキサポートとSRSカーテンエアバッグの標準装備化や、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロールを新採用。一時停止などの標識認識機能を向上するなどで、従来から設定がある安全運転支援システム「スズキ セーフティサポート」をより充実させています。

スペーシアのボディサイズは、全長3395mm×全幅1475mm×全高1785mmで、背が高いスクエアなボディが特徴です。エンジンには660cc・直列3気筒(52ps)を搭載し、2.3KWモーターを搭載したマイルドハイブリッドシステムを採用。JC08モード燃費は26.4〜30.0km/L。2WD(FF)車とフルタイム4WD車があります。

室内のサイズは長さ2155mm×幅1345mm×高さ1410mmで、N-BOXに迫る広さを実現しています。スクエアなボディにより天井も両サイドも真っ直ぐな室内は、余裕の室内高や低いフロアなどと相まって開放感が満点。前後の位置を別々に調節できる独立型のシートスライドを全シートに採用することで、乗る人の体格に合わせて足元まで広々としたスペースを確保することが可能です。

また、リヤシートはワンタッチでフラットにできるため、荷室に大きな荷物を積み込むことができるのも魅力です。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
スペーシアの室内

加えて上級グレードのハイブリッドXには、後席両側パワースライドドアも装備。狭い場所でもドアが大きく開くため、通常のヒンジ式ドアのように隣のクルマにドアをぶつけるなどの心配は無用です。

また、ハイブリッドXには、パワースライドドアを閉めている途中に携帯リモコンでドアロックを「予約」できる予約ロック機能や、ドアハンドルやワンアクションスイッチの操作により、好きな位置でパワースライドドアの開閉をストップできるパワースライドドア一時停止機能なども採用。これらにより、乗り降りのしやすさや高い利便性を実現しています。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
携帯リモコンでドアロックを「予約」できる予約ロック機能などをグレード設定

●スライドドアを初採用したのはタント

タントは、全高1700mmを超える軽スーパーハイトワゴンの先駆け的なモデルです。

初代モデルは2003年に登場。2007年に発売した2代目では、軽自動車で初めて助手席側のセンターピラーレスとスライドドアを組み合わせたミラクルオープンドアを採用。前後ドアを両方とも開くと開口部がとてもワイドになり、荷物の積み卸しや小さな子どもを抱えたままでも乗り降りが楽など、高い利便性を実現することで、子育て世代を中心に高い人気を得ました。

携帯リモコンでドアロックを「予約」できる予約ロック機能
ダイハツ・タント

現在は、ホンダやスズキも同様のスライドドアを採用することで、「背が高い車体+スライドドア付き」という軽スーパーハイトワゴンの基本形を作ったモデルがタントなのです。

2019年に発売された現行の4代目タントは、ボディサイズが全長3395mm×全幅1475mm×全高1755-1775mm。一方、室内サイズは長さ2060-2180mm×幅1350mm×高さ1370mmと、こちらも広々とした車内を実現しています。

携帯リモコンでドアロックを「予約」できる予約ロック機能
タントの室内

現行モデルの大きな魅力はミラクルウォークスルーパッケージの採用です。これは、自慢のミラクルオープンドアの使いやすさをさらに向上させるための様々な機能です。

たとえば、運転席が最大540mm動くロングスライドシートにより、運転席と後席間の移動やピラーインドアから運転席への乗り降りがとても楽になっています。また、半ドア時に自動でドアを全閉する助手席イージークローザーで安全面にも考慮。

ほかにも、パワースライドドアが閉まりきる前に、フロントドアハンドルのタッチ式リクエストスイッチに触れることで、ドアロックを事前に予約することが可能なタッチ&ゴーロック機能も採用。クルマに戻った時のパワースライドドアの自動オープンを予約することが可能なウェルカムオープン機能も搭載し、両手に荷物を抱えた時などでも解錠操作をせずにスライドドアを開くことを可能にしました。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
センターピラーレスとスライドドアによるミラクルオープンドアがタントの大きな特徴

こういった使い勝手の良さにより、タントは前述の2019年度(2019年4月〜2010年3月)軽自動車の新車販売台数ランキングで2位(17万2679台)になるなど、未だに根強い人気を誇っているのです。

●ルークスとekシリーズも室内が広々

日産のルークスとその兄弟車となる三菱のekスペース/ekクロススペースは、2020年3月に登場した新型の軽スーパーハイトワゴンです。

シャープなイメージのルークス、親しみやすいekスペース、タフで力強い印象のekクロススペースと、フェイスデザインや内装などの装備はそれぞれ異なりますが、いずれも基本構成を同じくする全高が1700mmを超える車体を持つ軽自動車です。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
日産・ルークス

これらは、三菱と日産が共同で設立した企業NMKVが開発したモデル。約6年振りのフルモデルチェンジとなるekスペースには、今回SUVテイストのデザインを採用したekクロススペースも追加。ルークスは、前モデルの「デイズ ルークス」から車名が変更されています。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
左がekスペース、右がekクロススペース

安全運転支援システムも充実していて、高速道路での渋滞走行やロングドライブ時に、レーダーが先行車などを感知してアクセルやブレーキ、ステアリング操作を支援する高速道路同一車線運転支援技術を採用(日産はプロパイロット、三菱はマイパイロットと呼称)。

ほかにも、前方車両や人を検知する衝突被害軽減ブレーキなど、先進の安全運転支援システムが数多く搭載されています。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
前方車両や人を検知する衝突被害軽減ブレーキなども装備

ボディサイズはルークスが全長3395mm×全幅1475mm×全高1780mm。ekスペース/ekクロススペースもほぼ同様で、全長3395mm×全幅1475mm×全高1780mm(4WD車は1800mm)となっています。

エンジンは660cc・直列3気筒(52ps)で、2.0KWモーターを搭載したマイルドハイブリッドを全車に装備。JC08モード燃費は21.2〜27.2km/Lを実現しています。

室内サイズは、3モデル共に長さ2200mm×幅1335mm×1400mm。特に注目は王者N-BOXに匹敵する1400mmという後席の室内高で、小さな子供が立って着替えることが可能。また、クラストップの320mmという後席のスライド量により、大人4人がゆったりと座れる居住性空間も確保。

後席を前方にスライドさせることで、荷室に大きな荷物も楽に積める積載性の良さも魅力です。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
ekスペースの室内

さらに、後席ドア両側に電動スライドドアも装備。650mmという広い開口部により、赤ちゃんを抱いての乗り降りや、後席のチャイルドシートに座る子どものお世話をするといったことがとてもスムーズかつ楽にできます。

グレードによっては、助手席側スライドドアの下に足先をスッと入れてサッと引くだけで、ドアが自動で開閉するハンズフリーオートスライドドアなども用意しています。

軽スーパーハイトワゴンが売れる秘密に迫る
後席の両側にスライドドアを装備(写真はルークス)

このように、軽スーパーハイトワゴンは、軽自動車とは思えない開放感ある余裕の室内や、電動スライドドアなどによる使い勝手の良さなどが魅力。また、一昔前の軽自動車にはなかった数々の充実装備は、ファミリー層はもちろん、若者から高齢者まで幅広い層に最も親しまれているジャンルとなった理由だといえるでしょう。

(文:平塚直樹/写真:日産自動車、本田技研工業、三菱自動車、スズキ、ダイハツ工業、エムスリープロダクション 鈴木祐子)