■早く連れ出したいと思わせるデザイン

新型Sクラスと飯田裕子さん
新型Sクラスとモータージャーナリスト飯田裕子さん
新型Sクラスと飯田裕子さん
メルセデス・ベンツ新型Sクラス
新型Sクラスと飯田裕子さん
メルセデス・ベンツ新型Sクラス

そこに数分間立っているだけで、高級輸入車ショーばりのモデルたちが往来するようなホテルの地下駐車場で、鼻先をこちらに向けて並列駐車されていた新型のメルセデス・ベンツSクラス。フラッグシップモデルの風格をボディサイズとともにこちらに主張してきて、多少なりとも気後れしてもよいはずなのですが、このクラスにしてこんなに早く連れ出したいと思ったのは初めてです。

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乗員の接近を感知してドアノブがせり出してきます。

キーを持って一台のモデルに近づけば、ツルッとしたボディ面からドアノブがスッと出てきて「アナタの今日のパートナー(車)はボクだよ」と言わんばかりに迎えてくれる。新型Sクラスは最新のハイテク/デジタル化の採用も特徴で、この機能もその一つです。

車内に乗り込む前から早く連れ出したい=走らせてみたいと思った理由はデザイン。大柄なボディサイズをまさに活かした精悍さを美しさとともに具現化したデザインは、まず眺めのよさが印象的です。

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シンプルさの中にもエレガンスさを匂わせるエクステリア。
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凝ったディテールのテールランプ。

アクセントラインが減らされたボディはエッジ抑えめ。フォルムの塊感はむしろボディサイズを幾分か小ぶりに見せ、曲線が作り出す面の陰影で質の高さや洗練ぶりを個性とともに演出しています。

とくにCピラーあたり(真横から見たキャビン後方)のラインはクーペのような流麗さを強め、スポーティさが感じられるという意味では若々しく生まれ変わった印象を強く受けます。 「S」の個性と貫禄は眺めてもよし。

ところで新型Sクラスはホイールベースの異なるボディタイプが2種類用意されています。全長5180mm×全幅1930mm×全高1505mmのスタンダードモデルのホイールベースは3105mm。これがロングボディでは3215mmに延び全長は5290mmとなります。

●AR(拡張現実)や3Dも取り入れたインテリア

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2つの大型ディスプレイが目を引くインテリア。

今回はS500 4MATIC(4WD)のロングボディが試乗モデルだったことで、「最新のSクラスの外観のデザイン性に新しさ」と、「ロングボディがロングボディに(私は)見えないスマートさ」を初対面から大いに感じることができたのです。そこで快適な移動が約束されたSクラスに「乗る」のではなく「連れ出したい」と、車内に乗り込みスタートボタンを押す前に、心が動いた次第です。しかもドアを開ければオレンジ色にも近いシエナブラウン・ナッパレザーシートが華やかに出迎えてくれたのでした。

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S500のリアシート
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S500のフロントシート。

インテリアのAR(拡張現実)や3Dも採り入れたハイテク/デジタル化の進化ぶりにも触れておきましょう。運転席に座ると指紋、顔、声のいずれかによる生体認証、もしくは従来通りのPINコードにより個人設定へのアクセスが可能。これによりポジション、スマートフォンとの連携もスムーズな連携が可能になります。

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インストルメントパネルの表示バリエーション。
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インストルメントパネルの表示バリエーション。
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インストルメントパネルの表示バリエーション。
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インストルメントパネルの表示バリエーション。


先代では大型ディスプレイを並べて、あたかも視界一面ディスプレイに囲まれるような演出が取り入れられていました。新型では、まず運転席前に12.3インチの3Dによる立体的な表示も可能(オプション)なディスプレイと、センターコンソール上部に、浮かせるもしくは立てかけるように12.8インチの縦長有機ELメディアディスプレイを採用しています。フラットなディスプレイは、その艶やかさとともに、センターコンソールと繋がるようなデザインが美しいですね。

●「ハイ、メルセデス」はリヤシートからも可能に

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飯田裕子さんはこSクラスで300km超のロングドライブもこなしました。

このディスプレイでは、温度、ナビゲーション、オーディオや車両設定など、様々な操作をよりきめ細かく行うことができます。ディスプレイ系をまとめてご紹介しておくと、ヘッドアップディスプレイにもAR技術を採用(オプション)。ナビ使用時には、奥行きも感じられる画像に加えて、状況に応じて造形も変化する進行方向を示す矢印などが表示され、視線移動量が減るだけでなく、わかりやすさも格段に向上することを体験できます。しかも運転席前のウインドウに表示するにはディスプレイの面積が大きい。それなのに邪魔にならずARヘッドアップディスプレイを体験してしまうと普通のタイプに戻りたくないと思うほど、ドライバーのサポート性が高いのです。

メルセデス・ベンツ新型Sクラスと飯田裕子さん
センターディスプレイの表示バリエーション。
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センターディスプレイの表示バリエーション。
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センターディスプレイの表示バリエーション。


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リアにもディスプレイを搭載し、「ハイ・メルセデス」という呼びかけが後席からも可能に。

MBUXの会話性能はまだまだ進むのでしょうけれど、どんどん進化していることを実感できるでしょう。新型Sクラスではリヤ席からも「Hi, Mercedes!」ができるようになりました。そしてそんなリヤシートにはメルセデス初となるフロントシートバックに仕込まれた後席者用フロントエアバックを採用(ロングボディのオプション)。リヤシートの快適性はもちろん、安全性もますます進化をしています。

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S500のエンジンは3リッター直6ガソリンターボにISG+48Vシステムを組み合わせています。

パワートレインはスタンダードボディには3L直6ターボエンジンにISG(マイルドハイブリッド)を搭載するS500と、3L直6ターボ・ディーゼルエンジンを搭載するS400dとがあり、すべてに9速ATが組み合わされ、駆動方式は4MATIC=4WDが標準採用されます。

●わずか5.4m。Aクラス並みの回転半径

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リアシートからの眺め。

今回のパートナーはS500 4MATICロング。早く連れ出したいとは言うものの、運転席から助手席間、そして後席は視覚的にも気配からもさすがに広いそのサイズ感は紛れもなくSクラス。コンパクトなAクラスで等身大の一体感を抱くのとは違い、背後に背負うものの大きさを感じる印象は正直、あります。

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低速域では4輪操舵で圧倒的な小回りのよさを実現しています。

そこで丁寧にドライビングポジションを合わせクリープ走行+少しのアクセル操作で滑りむように通路へ。さらに料金所ゲートへとハンドルを左に右にと操作をするのに、ボディサイズを配慮した操舵タイミングに気を遣うかと思いきや、違和感なくイメージ通りにクルマは曲ってくれるものだから、気分がいいです。

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速度や運転状況によりリアタイヤも同相、逆相にステアします。

そもそもメルセデスはサイズのわりに小回りが効くことでも知られていますが、今回のSクラスのロングボディモデルは4WDでもあり、小回り性能への期待は一般的に薄いと思われるも、違和感がないことが違和感なくらい、スムーズで取り回しがいいのです。

ロングボディの回転半径は5.4m。これはAMG A45(Aクラス)と同数値。Aクラスが小回りが利かないわけでは決してなくて、Sクラスがビックリするほど小さいのです。

●速度や運転状況に応じて後輪がステア

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ワインディングでも持て余すことがありません。

これはリア・アクスルステアリングと呼ぶ後輪操舵の働きによるもの。約60km/h以下ではリヤタイヤがフロントタイヤと逆方向に傾き、回転半径を小さくする一方、120km/h以上ではフロントタイヤと同方向にステアされます。約60km/以上から120km/h以下の範囲では走行状況をセンシングし、コーナリング状態ならば逆操舵により安定と曲りやすさを、高速直進走行では同方向操舵でこちらも安定性を保ち、ドライバーの運転を「快適に」サポートしてくれます。違和感がないことが違和感がないのは、一般道からワンディング、高速道路と今回300km以上を走り、実感した感想です。

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ISGのアシストもありサイズから予想できないレスポンスのよさが味わえます。

アクセルに右足親指下の膨らんでいる部分をソッとわずかに載せればソッと、かたやトルクや速さが欲しくてグッと早めに強めに(多めに)踏み込めば、瞬時にドッと加速力を発揮してくれる動力は、ISGと48V電気システムによるパワーアシストはもちろん、トランスミッションのリニアな変速のマネージと、それを乱暴に路面に伝えることのないタイヤやサスペンションの仕上がりぶりによるもの。

一定走行中の静粛さはもちろん、加速をした際のエンジン音も遠くからその様子を伝える内燃機関を主動力とするモデルらしさでもあり、そのマナーの良さこそがSクラスらしさとも言えそうです。

この「走る」性能にリア・アクスルステアリングを含む様々な状況下に応じて意のままに「曲がる」性能が与えられることで、ドライバーのドライブフィールはもちろん、同乗者にとっても無駄な動きが極めて減り快適さは一層増していると後席体験で実感できました。

●最新テクノロジーと空間演出で究極の快適さを実現!

新型Sクラスと飯田裕子さん
室内を彩るアンビエントライトは64色から選択できます。

ちなみに後日、スタンダードボディのS400d 4MATICも試乗してみたのですが、比べてしまえばこちらのほうがより軽快。私が試乗した2モデルの車重差はわずか70kgで、軽快さは車重よりもホイールベースが短い分よりアクティブになり、さらにディーゼルエンジンがよりレスポンスよく必要に応じてトルクの厚みを発するパワートレインの効果もあったのではないかと想像します。発進時や加速時の振動や音は、正直に言ってこちらはディーゼルだとわかるものの、それでもやっぱりSクラスです。加速を緩め一定走行時などは滑らかな足さばきと静粛性が得られます。

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トランク容量は550Lが標準で、ハイエンド4Dサラウンド サウンドシステム搭載車は480Lとなります。

ちなみにトランクスペースはスタンダードモデルのほうが30リッターほどではありますが広い。ただ、ロングボディは左ハンドル車でしたがこちらは右ハンドル車で、アクセルとブレーキのペダル配置(高さ含む)によるものなのか、珍しく少々右足の外側のスネが疲れました。購入検討される場合は体型によって操作フィールも異なると思いますので、ドライビングポジションをしっかりとってアクセルとブレーキのペダル操作をちょっと確認してみてください。

ちなみに夜間ドライブではドライバーの視界向上を助けるライト技術も特徴ではありますが、間接照明(64色!)が施されたインテリアの空間演出も必見。柔らかく室内を立体的に演出してくれます。

新型Sクラスと飯田裕子さん
「いい相棒になってくれそう」と語る飯田裕子さん。

Sクラスの用途はプライベートはもちろん、後席が主席のビジネスユースも多いそうで、先代のモデルタイプの割合はスタンダード50:ロング50か、ロングボディのほうが少し多いくらいだったそうです。最新のSクラスはホイールベースが長いからと言って、デザインはもとより、扱いやすさを含む走行性能もますます妥協する必要のないモデルに進化しています。

快適さこそSクラスの存在価値。新型Sクラスは最新のテクノロジーと空間演出を施し、新世代らしい究極の快適さを実現。その進化ぶりは私の想像以上であったのは間違いなし。現段階でメルセデス最大のサルーンで先進性に満ちた相棒と呼びたくなるパートナーぶりを、そして席を選ばぬホスピタリティの充実ぶりを、メルセデスらしく気持ち良く味わえるのではないでしょうか。

【動画】Mercedes-Benz S-Class with Yuko Iida

(文:飯田裕子/写真:前田惠介)