■鈴鹿はどんな「段取り」と「約束事」で戦われる?

スーパーフォーミュラ開幕戦から「中1週」、その先週は岡山国際サーキットでスーパーGT開幕戦を挟んで今週は鈴鹿サーキットでスーパーフォーミュラの第3戦開催。国内トップカテゴリーに関わる人々にはまさに東奔西走の日々。でも観る側にとっては毎週楽しみが続きます。ここではそのスーパーフォーミュラ第3戦がどんな「段取り」と「約束事」で戦われるかを整理しておきましょう。

●スーパーフォーミュラ 2022年第3戦 鈴鹿サーキット「レース・フォーマット」

・レース距離:180.017km  (鈴鹿サーキット 5.807km×31周) 最大レース時間:75分、中断時間を含む最大総レース時間:95分
・タイムスケジュール:土曜日・午後1時50分〜公式予選、日曜日・午後2時30分〜決勝レース
・予選方式:ノックアウト予選方式

⚫︎2グループ(A組・B組)に分かれて走行する公式予選Q1、そのそれぞれ上位6台・計12台が進出して競われる公式予選Q2の2セッションで実施される。
⚫︎公式予選Q1はA組10分間、5分間のインターバルを挟んでB組10分間。そこから10分間のインターバルを挟んでQ2は7分間の走行。
⚫︎公式予選Q1のグループ分けは、第3戦決勝終了時のドライバーズランキングに基づいて、主催者(JRP)が決定する。ただし参加車両が複数台のエントラントについては、少なくとも1台を別の組分けとする。
⚫︎Q1の組分け(車番のみ記すと…) A組: 4,5,14,15,18,20,36,38,53,64(10車) B組: 1,3,6,7,12,19,37,39,50,55,65(11車)
⚫︎Q2進出を逸した車両は、Q1最速タイムを記録した組の7位が予選13位、もう一方の組の7位が予選14位、以降交互に予選順位が決定される。
⚫︎Q2の結果順に予選1〜12位が決定する。

●タイヤ:横浜ゴム製ワンメイク・ドライ1スペック、ウェット1スペック

ドライタイヤは、設計、構造・素材などについては2019年2スペックあった中の「ソフト」が2019年以降使用されてきましたが、今季に向けてリアタイヤのみショルダー部の断面形状(プロファイル)がちょっと「ラウンド・ショルダー」に変更されている。これによって、コーナリングに入る最初の「過渡的な運動」で、リアタイヤに「体重を乗せていく」中から摩擦力が立ち上がるプロセスが穏やかになるはずだが、ドライバーにとっては「踏ん張り」が現れるが遅れる、という感触につながります。

基本的なサイズが変わらず、もちろん骨格(カーカス)構造も、トレッド・コンパウンドも変わっていないので、一気に「体重を預けて」旋回に入ってしまえば、グリップする感覚は「変わらない」。そう体感したドライバーも多いという。しかしその一方で、車両運動の、とくに旋回に入って行く過渡的なプロセスを大事にする、あるいはその中で起こることを敏感に感じ取れるドライバーは、ちゃんと過渡特性の変化を体感しています。それ以上に、レース展開への影響が大きそうなのは、デグラデーション(タイヤの消耗によってラップタイムが低下する、その変化)の現れ方である。第1戦で優勝した大駅エンジニア、第2戦で優勝した一瀬エンジニアともに、「去年までのタイヤよりでデグラデーション傾向が現れるのが早い」と、実戦でレース距離を走った印象を語っています。

●決勝中のタイヤ交換義務:あり

⚫︎スタート時に装着していた1セット(4本)から、異なる1セットに交換することが義務付けられる。
⚫︎先頭車両が10周目の第1セーフティカーラインに到達した時点から、先頭車両が最終周回に入る前までに実施すること。(鈴鹿サーキットの第1SCラインは最終コーナーを立ち上がり、ピットロードが右に別れる分岐点に引かれた白線。ちなみに第2SCラインはピットロードが本コースに合流後、1コーナーに向かうコース幅に収束した位置に引かれた白線)
⚫︎タイヤ交換義務を完了せずにレース終了まで走行した車両は、失格。
⚫︎レースが赤旗で中断している中に行ったタイヤ交換は、タイヤ交換義務を消化したものとは見なされない。ただし、中断合図提示の前に第1SCラインを越えてピットロードに進入し、そこでタイヤ交換作業を行った場合は、交換義務の対象として認められる。
⚫︎レースが(31周を完了して)終了する前に赤旗中断、そのまま終了となった場合、タイヤ交換義務を実施していなかったドライバーには競技結果に40秒加算。
⚫︎決勝レースをウェットタイヤを装着してスタートした場合、およびスタート後にドライタイヤからウェットタイヤ部交換した場合は、このタイヤ交換義務規定は適用されないが、決勝レース中にウェットタイヤが使用できるのは競技長が「WET宣言」を行なった時に限られる。

●タイヤ交換義務を消化するためのピットストップについて

・ピットレーン速度制限:60km/h
・ピットレーン走行+停止発進によるロスタイム

SF搬入・ピットストップ準備
週末のスーパーフォーミュラ第3戦に向けてピットまわりの準備が進む鈴鹿サーキット。ピットストップ〜タイヤ交換の車両停止位置を作業レーンに設営中

鈴鹿の場合、最終コーナーを立ち上がった先でピットロードが分岐するが、速度制限区間が始まるのは計時ラインの30mほど手前であり、そこまではエントリーロードをほぼレーシングスピードで走ってくることもあり、ピットレーン走行による(ストレートをレーシングスピードで走行するのに対する)ロスタイムは約27〜28秒と推測されます。

これにピット作業のための静止時間、現状のタイヤ4輪交換だけであれば7〜8秒を加え、さらにコールド状態で装着、走り出したタイヤが温まって粘着状態になるまで、路面温度にもよるが半周、セクター3にかかるあたりまでのペースで失うタイム、おおよそ1秒ほどを加えた最小で35秒、若干のマージンを見て40秒ほどが、ピットストップに”消費”される時間となります。言い換えれば、ピットタイミングが異なる車両同士では、この「35〜36秒」が、順位変動が起こるかどうかの目安になるのです。

●タイヤ使用制限:ドライ(スリック)タイヤに関して

車両セットアップ確認準備
走っていない時のレーシングマシンはこうしてカウリングを外し「高ウマ」に乗せられている時間が長い。いつでもセッティング変更に取り掛かることができる体勢。搬入日はチーム・ファクトリーで詳細までセットアップ済みだけど。

⚫︎大会週末2日間を通して、各車に新品・3セット、前戦までに入手したものの中から「持ち越し」3セット。すなわち、新品タイヤは予選Q1、Q2、そして決勝スタートにそれぞれ装着、が基本。予選でQ2進出を逸した車両は、決勝レース途中で交換する2セット目にも新品が残るが、Q2まで走った車両はこれが予選を走った「1アタック品」になる。(「持ち越し」タイヤに新品が残っていなかった、という前提で)

・走行前のタイヤ加熱:禁止
・決勝レース中の燃料補給:禁止

●燃料最大流量(燃料リストリクター):90kg/h(122.1L/h)

燃料リストリクター、すなわちあるエンジン回転速度から上になると燃料の流量上限が一定に保持される仕組みを使うと、その効果が発生する回転数から上では「出力一定」となる。出力は「トルク(回転力、すなわち燃焼圧力でクランクを回す力)×回転速度」なので、燃料リストリクター領域では回転上昇に反比例してトルクは低下します。一瞬一瞬にクルマを前に押す力は減少しつつ、それを積み重ねた「仕事量」、つまり一定の距離をフル加速するのにかかる時間、到達速度(最高速)が各車同じレベルにコントロールされる、ということになります。

●オーバーテイク・システム(OTS)

・最大燃料流量10kg/h増量(90kg/h→100kg/h)
・作動合計時間上限:決勝レース中に「200秒間」

⚫︎ステアリングホイール上のボタンを押して作動開始、もう一度押して作動停止。
⚫︎作動開始後8秒経過してからロールバー前面のLEDおよびテールランプの点滅開始。ロールバー上の作動表示LEDは当初、緑色。残り作動時間20秒からは赤色。残り時間がなくなると消灯。
⚫︎一度作動させたらその後100秒間は作動しない。この状態にある時は、ロールバー上のLED表示は「遅い点滅」。なお、エンジンが止まっていると緑赤交互点滅。 OTS作動時は、エンジン回転7200rpmあたりで頭打ちになっていた「出力」、ドライバーの体感としてはトルク上昇による加速感が、まず8000rpmまで伸び、そこからエンジンの「力」が11%上乗せされたまま加速が続く。ドライバーが体感するこの「力」はすなわちエンジン・トルク(回転力)であって、上(燃料リストリクター作動=流量が一定にコントロールされる領域)は、トルクが10%強増え、そのまま回転上限までの「出力一定」状態が燃料増量分=11%だけ維持される。概算で出力が60ps近く増える状態になる。すなわちその回転域から落ちない速度・ギアポジションでは、コーナーでの脱出加速から最終到達速度までこの出力増分が加速のための「駆動力」に上乗せされる。
⚫︎富士ラウンドから、予選で各車・人がアタックラップに入っていることを知らせるべく、このロールバー前面LEDを黄色に点滅させる「Qライト」が導入されている。

これらを踏まえつつ、スーパーフォーミュラ第3戦 鈴鹿サーキットの2日間を、リアルでも、オンラインでも楽しんで下さい!

(文・写真:両角 岳彦)