■検証・夜間走行でのライト性能

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夜の光のテストも忘れずに行います

クルマは昼間に走るだけではありません。夜にだって走行します。だからヘッドライトがついているのです。

このところ高機能化が著しい自動車のヘッドライト、トヨタ・カローラクロスのそれがいかほどのものなのか、夜間走行で検証してみました。

●ヘッドライトは2タイプ

カローラクロスのヘッドライトは2タイプ用意されています。全車ヘッドランプはLEDですが(カタログ呼称「Bi-BeamLEDヘッドランプ」)、今回の試乗車・Zはオレンジ光がグリル側から外側に伸びるシーケンシャル式のウインカー、デイタイムランニングランプ兼用の車幅灯もLEDとなる上級タイプ。Z以外の機種は、ウインカーと車幅灯が通常の電球式となります。

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カローラクロスのBi-Beam LEDランプの構成

上部横いっぱいに拡がる、クリスタルな4つのアクリルとその下のアクリルのラインがデイタイムランプと車幅灯の2役を受け持ち、ウインカーレバー操作時は上のアクリル4つが白からオレンジに変わってシーケンシャルウインカーとして順次点灯します。その下の丸い目玉がプロジェクター式のLEDヘッドランプ。ついでにいうと、バンパーに収まるフォグランプもLEDで、こちらもZに標準装備。他の2機種は工場オプションです。

心配ごとがふたつ。

アクリルがキラッとしていて美しいのはいいのですが、LED素子のどれかひとつでも切れようものなら正常部分も含めて全取っ替えになり、補修費が「たっかいだろうなあ」というのが心配のひとつ。もうひとつは、こればかりは時間が経たないとわからないのですが、もし経時変化でアクリルのレンズ表面が黄ばんできた場合、レンズ単品で交換できるのだろうか…筆者が美しいライトを見るたびに思うことです。

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●うれしい裏切り! 判断精度が上がったロー/ハイ2段式オートマチックハイビーム

「Bi-Beam」の呼び名からわかるとおり、カローラクロスのヘッドライトは、プロジェクターレンズの奥に潜むLED光源ひとつ(といっても、その向こう側にいくつ素子が並んでいるものなのかはわかりませんが)でハイとローを賄う、いわば2灯式。見かけ上はハロゲン時代のクルマに近いものです。

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ライトポジションは、OFF/スモール-AUTO-ライトの3つ

昨年2021年9月に発表されたクルマなら、翌月10月の新オートライト義務化を見据えているのは当然で、ライトスイッチは「『AUTO』をありき」とする最新版。すなわち「AUTO」を起点に、向こうまわし固定で、昼間であろうと夜であろうとライトが強制点灯。周囲が明るいときのAUTO(デイタイムランプのみ点灯)から手前まわしするたびに車幅灯ON・OFF。暗いときの停車中のAUTO(ライト点灯)時、手前まわしするたびに車幅灯とライト再点灯を繰り返し、車幅灯時に走り出すとすかさずライト点灯。手前まわし1秒以上保持でライトが消灯しますが、走り出すとライトがやはり点灯します。「…たびに」「保持」の表現でわかるとおり、手前にまわしてもスイッチは固定されず、スイッチ内部のバネ仕掛けで必ず「AUTO」に戻るようになっています。

ここまで読まれた方、実にややこしく、わかりにくく感じられていると思います。いま書いている自分さえややこしいと思っているのですが、いざ使ってみると意外にすぐに慣れると思います。

新オートライト化を背景に、いまのところスイッチ配列にメーカーによってまだばらつきがあり、中には「OFF」ポジションさえ存在しないクルマもありますが、このあたり、いずれ統一されるなどの動きがあるかも知れません。筆者は、昼夜問わず、ユーザー任意で「OFF」「スモール」「ライト」が自在に選ぶことのできない、旧オートライトの「OFF-AUTO-スモール-ライト」が大嫌いで、今回の新オートライト義務化に大反対だったのですが、その筆者さえもが現時点で使いやすいと思うのは、このトヨタの「OFF/スモール-AUTO-ライト」、ホンダの「OFF-スモール-AUTO-ライト」のふたつです。

さて、いまのクルマでほとんど常識装備になっているオートハイビーム、単純なロー/ハイ式とアダプティブ式とでまだまだその精度に差があるのが現状ですが、このカローラクロスのロー/ハイ切替式の単純なオートハイビーム(トヨタ呼称・オートマチックハイビーム。以下AHB)の確実性を夜間走行で見てみました。

AHBの準備は次のとおりです。

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AHBのメーンスイッチは、マニュアル式ライトレベライザーとともに、運転席右膝あたりの位置にまとめられている

1.ライトスイッチをAUTOまたはライトにする。
2.オートマチックハイビームスイッチを押す。

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自動ハイビーム待機中を示すAHBインジケーター

緑色のAHB表示灯がメーター内に点灯し、準備完了です。

そして次の条件を満たしたときにシステムが自動でロー/ハイを切り替えます。

★ロー→ハイ

・車速が約30km/h以上。
・車両前方が暗い。
・前方にライトを点灯した車両がいない。
・前方の道路沿いの街灯の光が少ない。

★ハイ→ロー

・車速が約25km/h以下。
・車両前方が明るい。
・前方車両がランプを点灯している。
・前方の道路沿いの街灯の光が多い。

以前、ホンダフィットのHonda SENSINGの自動ハイビームを採り上げましたが、条件はほとんど同じです。

結論からいうと、カローラクロスのロー/ハイ2段切替式の自動ハイビーム、作動精度の高さに驚きました。というのも、先行車や対向車がなくとも街灯を感知しようものなら無難なローを守り、逆に対向車に向けてためらいなくハイビームを放つことも少なくない、実際にはろくすっぽ役に立たないのが実情だった初期の2段式自動ハイビームを知っていたからです。

むかし、むか〜しのクラウンエイト(1963(昭和38)年)はともかく、いまに至る自動ハイビームは、技術としては、まずはロー/ハイをクルマが切り替えるだけの2段式が先行しました。そのかたわら、先行車・対向車の有無に応じて照射範囲をシームレスに変化させるアダプティブ式が、少し遅れて追従。そのアダプティブ式がいまやミドル級ばかりか軽自動車クラスにまで発展、勢力を増す間に、蓄積されたアダプティブ式のセンシング技術のノウハウが2段式にも横展開されたのでしょう。カローラクロスのAHBは、 所詮はロー/ハイの2択でしかない2段式であるにもかかわらず、普段の筆者の感覚ほぼそのままにロー/ハイを切り替えてくれました。

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街中シーン。先行車や対向車をきちんと捉えてロービームに落とすいっぽう…
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前方にクルマがないと見るや、即座にハイビームに転じる。なかなかの賢さだ

筆者は夜間走行時、とにかく前方に先行車、対向車、歩行者、はてはのら犬、のら猫までもの姿を見つけたとき以外は街灯が灯っていてもハイビームにするのですが、カローラクロスはほとんど自分の感覚のままロー/ハイを切り替えてくれます。これまでのAHBがちっとも役に立たなかった市街地や住宅街でこそカローラクロスのAHB判断力の精度向上が際立っていることが分かります。以前のものは闇夜にまぎれる歩行者は感知しないし、遠方で点のように光る対向車の光を街灯と間違うこともあり、完全ではありませんでしたが、初期の2段式に比べたらその進化は称えてもいいのではないかと思います。

なあんだァ、2段式なんて、すべてがアダプティブ式に置き換わるまでのつなぎだと思っていたけど、やればまだまだできるんじゃないの。だったら高級車以外のすべては安くてすむ2段式にしてしまえ! というのがカローラクロスのAHB使用後の感想。

ところでそのAHBの操作ロジックが、少し前までのトヨタ車から変わり、使いやすくなりました。

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AHBであろうとなかろうと、レバー操作が従来と同じなのはありがたい

AHBのメーンスイッチ操作は変わりませんが、これまではレバーを前方に押しやることでAHBスタンバイだったのですが、カローラクロスでは中立位置のままAHB待機に。いままでだとAHBが反応しない場合にハイビームを望むときでも、すでにレバーが向こう側にあるため、わざわざメーンスイッチをOFFにするなどをしなければならなかったのですが、カローラクロスは暗闇でAHBが無反応でもレバーを押しやればハイビームとなる…AHBであろうとなかろうと、任意でハイビームにしたければ昔のクルマと同じ操作でいいのが使いやすい点です。

オートライトスイッチの並び同様、こちら自動ハイビームの操作ロジックも各社各車でばらつきが多く、このへんもいずれ統一されるでしょう。おもしろいことに、同じトヨタの、同じ基本インテリアを持つ現行カローラは、レバー向こうでAHB待機となる仕様でした。次の改良タイミングでこの部分もカローラクロスと統一されるにちがいありません。

●明るさは充分だったけど…

明るさや照射範囲については夜の高速道路と山間道で調べました。LEDの明るく白い光のありがたみは、街灯や看板照明・ネオンで華やぐ都市部や市街地ではわかりくいからです。

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高速道路(関越自動車道)での自動ハイビーム走行

関越自動車道下りも前橋ICを越えるや一転、道路照明がぐんと少なくなるのですが、この区間でこそ白い光の明るさが活きてきます。市街地でも感じられたAHB性能向上はより暗い高速道路ではなお明白で、ここでも遠方の対向車光と街灯の見誤りがないではありませんでしたが、それにしても以前の2段式よりも確実性が上がっていると同時に、国産車全般に見られた2段式の「ハイかな? いやいや、やっぱりローか?」とライトを上下させて迷う頻度も減ったように思います。

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街灯もなく、真っ暗闇が広がる山道。決して墨汁のアップでも、カメラの故障で壊れた画像でもありません

赤城山の料金所跡から1番目のヘアピンカーブに至るまでの区間は、多少の屈曲を伴うほぼ直線路になっているのですが、ここは街灯がほぼ皆無。まるで墨汁の中を走っているかのようなその真っ暗闇を、白い「ロービーム」の光は手前も遠方もきちんと照らし出してくれました。ここでもAHBは機敏な反応を示し、突如現れる対向車の光をキャッチするや、パッとローに落とし、すれ違うとハイに戻す…なかなかの小気味よさです。

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夜のカーブ走行時のことを考え、フロント視界に見る斜め前方照射量をもっと増やしてほしい

ただ、配光の話ですが、カーブに差し掛かったときには、フロントガラス内に見る斜め前方をもう少し明確に照らしてくれるとありがたいと思います。理想は速度制御などは入っていない、まずはウインカー連動ありきでの、2次的にハンドル操作ででも点灯するコーナーリングランプを別立てでぜひ!

さきに、白い「ロービーム」の光が…とわざわざカギカッコ付きで書いたのは意味深。率直に申し上げると、AHBの判断精度向上とは裏腹に、ハイビームの上方・遠方への配光がいくらか不足気味のように感じられました。

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プロジェクター光源からの上向き照射光を、すぐ上のアクリルラインがいくらかスポイルしているようだ

考えられる要因はふたつ。実はカローラクロスのロービームは中から見ても外から見てもハイビーム並みに明るく、他車からのパッシングを心配するほどだった(実際にはされなかった)のですが、ランプ筐体をよく見ると、プロジェクターレンズが冒頭に述べたライン状アクリルの奥にあるため、せっかくの明るい光の上方照射をいくらかアクリルが(透明とはいえ)スポイルしているのではないかということ。

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ロービームなのにハイビーム並みに明るいロービーム
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写真ではローと同じに見えるが、照射サイドの明暗の境目がいくらか上に移動しているので、これでもハイビーム。ロービームとの差異が少ないので、ハイビームの実感が少ない。本当ははるか先は木々が林立しているので、それがわかるくらいにはしてほしい

もうひとつは感覚の問題で、もともとロービームがハイビーム並みにがんばっているため、本当にハイビームにしたところで差異が少なく感じられるのです。

後者であればまったく問題ないとも言えるわけですが。

ライトのオート化に伴ってひとつふたつ注文が。

先にクルマに乗って同乗者を待つというシーンを思うと、何も夜だからといって、パワースイッチないしエンジンをONにするや、いきなりライトを点灯させることはないと思います。走り出せば嫌でも点灯するのですから、始動時はせめてスモールにとどめておき、シフトをDにするなり、車速を検知するなりした時点で点灯させても遅くはないでしょう。

このたびの新オートライト規制は、「始動時から必ずロービームを点灯しなければならない」のではなく、「周囲の明るさによって自動点灯および自動消灯する機能を有さなければならない」「走行中は手動で消灯できない構造でなければならない」というのが核で、始動時にローが未点灯でも決して違反ではないのです。全自動車メーカーがここに気づいていないわけではないと思いますが、もうちょい柔軟になってもいいと思います。

もうひとつは、LEDは最高輝度になるまでの時間がハロゲン時代の1/10…つまりハロゲンの場合の10倍の速度で瞬間的に最高輝度に達するわけですが、これが見る者の目にはどうにも生理的になじめません。いまのライトはライトユニット筐体内部に、ランプコントロールのユニットを内蔵しているものもあるのですが、ここに点消灯制御を加え、ドアを開閉したときのルームランプと同じように、じわっとした点消灯にはできないのでしょうか。だいたい、いつぞやの「ポケモン事件」以降、テレビの記者会見やアニメもので「フラッシュにご注意ください」「よいこのみんな、テレビはへやをあかるくしてはなれてみてね」とテロップが出るようになったのは、光の刺激が目の瞳孔によろしくないからです。クルマのライトはカメラのフラッシュ並みにビカビカ点滅させるわけではありませんが、クルマの中にいるひとにとっても外にいるひとにとっても、暗闇での唐突的、瞬間的な「ビカッ!」の発光、「パッ!」の消灯が人間の目にやさしいとは思えません。クルマ用ライトのLED化は多くのクラスにまで行き渡り、一段落した感がありますが、第2ステージに向け、業界内でこのあたりも配慮してくれるとありがたいと思います。

●リヤランプも2タイプ

リヤランプも漏らさず触れておきましょう。

テールランプは、ランプ上部でボディ側とバックドア側にまたがって灯るタイプ。テールがライン状に発光するのはZだけです。ストップランプはボディ側テールと同じ位置に。どうやら光源はテールの奥にあるようで、テールとストップの面積が変わるのではなく、同じ場所のまま輝度が5倍以上になっているだけでした。

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カローラクロスのリヤランプの構成

ランプ下段ボディ側はウインカー、バックドア側にリバースランプ(後退灯)、その内側は、工場オプションのリヤフォグランプ(右側だけ)が収まると思われるダミースペースとなっています。リフレクター(反射鏡)はリヤバンパー下部に。

いまのクルマのオールLED化に懸念している筆者がいいと思ったのは、ウインカーとリバースだけではありますが、この2点が従来の電球を用いている点で、フィラメントが切れたら、DIY派なら自前で交換ができ、出費が電球代の数百円だけですむのがいいところです。

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夜間照明時のインテリア

他のメディアや、販社の試乗車ではなかなか見られないであろう、室内の夜間照明の様子も写真にしておきましたのでごらんください。

今回はここまで。

次回は後方視界や車庫入れ性など、日常ユースではあまり語られない部分をクローズアップします。

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おまけ。メーター内の外気温度計、赤城山深夜の路上温度計と同じ数字を指しており、おおかた正確でした。えらい!

(文/写真:山口尚志)

【試乗車主要諸元】

■トヨタ・カローラ クロス ハイブリッドZ(6AA-ZVG11-KHXEB型・2021(令和3)年型・2WD・電気式自動無段変速機・プラチナホワイトパールマイカ)
・メーカーオプション:プラチナホワイトパールマイカ(3万3000円)、イルミネーテッドエントリーシステム(フロントカップホルダーランプ、フロントドアトリムショルダーランプ、フロントコンソールトレイランプ・11000円)、ディスプレイオーディオ(9インチ・2万8600円)、アクセサリーコンセント(4万4000円)、ブラインドスポットモニター+パーキングサポートブレーキ(4万4000円)、パノラミックビューモニター(2万7500円)、おくだけ充電(1万3200円)、パノラマルーフ(電動サンシェード&挟み込み防止機能付き・11万円)
・ディーラーオプション:ラゲージトレイ(1万5400円)、ETC2.0ユニットナビキット連動タイプ(光ビーコン機能付き・3万3000円)、カメラ別体型ドライブレコーダー(6万3250円)、フロアマット(ラグジュアリータイプ・2万8600円)

●全長×全幅×全高:4490×1825×1620mm ●ホイールベース:2640mm ●トレッド 前/後:1560/1570mm ●最低地上高:160mm ●車両重量:1430kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.2m ●タイヤサイズ:225/50R18 ●エンジン:2ZR-FXE(水冷直列4気筒DOHC) ●総排気量:1797cc ●圧縮比:- ●最高出力:98ps/5200rpm ●最大トルク:14.5kgm/3600rpm ●燃料供給装置:EFI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:36L(無鉛レギュラー) ●モーター:1NM(交流同期電動機) ●最高出力:72ps ●最大トルク:16.6kgm ●動力用主電池(種類/容量):リチウムイオン電池/3.6Ah ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):26.2/25.9/28.9/24.7km/L ●JC08燃料消費率:- ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格299.0万円(消費税込み・除くメーカー/ディーラーオプション)