■ヤマハの電動ランドカーをJAFのネットワークで活用

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ヤマハ発動機の開発しているGSM(=グリーンスモールモビリティ)は電動ゴルフカートをベースにした20km/hで走るモビリティのこと

2輪など身近なモビリティを提供しているヤマハ発動機と、ドライバーの権益を守る団体であるロードサービスで知られるJAF(日本自動車連盟)が、『低速モビリティに関する協業契約』を締結したことが発表されました。

その内容は、ヤマハ発動機の低速モビリティにおける開発・販売ノウハウと、JAFのサービスネットワークや自治体との連携実績を合体させることで、公共交通機関が壊滅して移動困難地域となったエリアに”GSM”を普及させることにあります。

GSMというのは「グリーン・スモール・モビリティ」のことです。ゼロエミッションの電気自動車で、重大事故を抑制できる低速限定(20km/h以下)かつ、運用や乗り降りのしやすい小型モビリティを指す言葉です。そうした地域の新しい移動手段としてGSMを普及させようというのが、この協業の狙いです。

具体的にはGSMのベースとなるのは、ゴルフカート等の用途で使われることの多い電動ランドカー。その開発・製造・販売について、ヤマハ発動機が多くの知見を持っていることはいうまでもありません。

●高齢化社会に対応した自動運転も視野に入る

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車両の製造や運用のノウハウはヤマハ発動機が担当、ユーザーとの接点になる部分をJAFが担うという風に分担することになっている

さて、ヤマハ発動機とJAFの協業においての役割分担ですが、基本的にはヤマハ発動機は車両開発と車両へのシステム搭載が担当となります。ビジネスの始点となる導入地域の選定はJAFの担当となります。また、導入後の運用についてもユーザーへの安全運転講習やアフターサービス(メンテナンス)などはJAFの担当というのが、現時点で想定している協業内容となっています。

では、ヤマハ発動機はJAFとの協業ビジネス仕様とした電動ランドカーを提供するだけが役割なのでしょうか。契約締結において開催された記者会見を見る限りは、そうではないようです。

たとえば、ヤマハ発動機は電動ランドカーを使って自動運転の実証実験を行っていますが、今回の協業においても自動運転・運転支援システムの開発・提供というのは視野に入れているようです。

移動困難地域というのは、高齢化が進んでいることが多く、そもそも十分なドライバーが確保できない可能性も高いといえます。ですから、ヤマハ発動機が持つ低速モビリティの自動運転ノウハウは、GSMの普及を加速させるために欠かせないファクターとなりそうです。

●GSMは水素燃料電池へ発展する可能性も

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ヤマハ発動機はGSMの可能性を探るべく、自動運転や燃料電池などの実証実験を行なってきている

今回の発表では触れられていませんでしたが、ヤマハ発動機は燃料電池仕様のランドカーを開発、公道での実証実験を行ったこともあります。水素インフラが整備された地域であれば、水素燃料を使うGSMというのも環境対応として求められるでしょう。

この燃料電池仕様の実験車は、黄色いナンバープレートをつけた軽自動車でしたが、前述したように低速限定とすることで、衝突安全規格などは軽自動車のレベルは求められません。ですから、GSMが通常の自動車と混在しているというのは速度差なども含めて心配な部分もあります。

もっとも、今回の想定している移動困難地域はバスやタクシーが走っていないような地域でしょうし、自家用車がバンバン走っているような環境でもないでしょう。適材適所という点で、GSMがハマる地域を上手にJAFが選定することが、このビジネスの成否を左右することになるといえそうです。

(自動車コラムニスト・山本 晋也)