正社員時代に築いたスキルを自信に、同僚と三人で起業

谷本氏は2015年、エンジニア派遣業と自社プロダクトの開拓を行なう企業『グロースハックスタジオ』を創業。この会社は、創業直前の職場であるWeb広告会社の同僚2名と創った。

当時谷本氏は社会人5年目。正社員の頃、“一目置かれる存在になる”ことを意識し、新技術へのキャッチアップは欠かさなかった。この姿勢から社内外から評価され、さらに谷本氏の自信となり、独立を後押しした。

▲フリーランスエンジニア 谷本 尚人氏
新卒でSIerに入社し、その後複数のWeb系広告企業を経由。社会人5年目に起業をし、フリーランスへ転向。現在、フリーランス2年目。都内のベンチャー企業の開発案件に常駐しながら、自社のプロダクトの開発にも尽力する。

グロースハックスタジオは互いの得意領域を生かした分業体制。エンジニアリングのスキルを持つ谷本氏は開発業務を行っている。

「しんどい時期もありましたが、3人いれば解決できるだろうと、ネガティブになりすぎずに考えることができました。自社開発以外にもコンサルティング案件などその他の案件で収入を確保できていたことも安心材料だったかもしれません」

起業1年目は、自社案件の開発に注力していたが、2016年今後の自社プロダクトの開発費を得ることと、エンジニア同士のネットワーク構築を求めて、谷本氏はフリーランスエンジニア専門エージェント“geechs job”を利用しはじめる。

常駐型フリーランスとの両立をスタート。両立しているからこその自信とは

こうしてgeechs jobを利用した常駐型フリーランスとしての開発業務と自社での業務を両立することになった。

谷本氏の一週間は、週に5日はクライアントの開発現場で常駐案件の作業をおこないながら、自社の業務はリモートワークで進めている。この働き方は安定的な資金を得られること以外にも、メリットがある。

「常駐する現場には、自社とは違ったタイプのエンジニアの方がいて、勉強になることがとても多いです。コードの書き方もしかり、プロダクトへのコミット感やタスク管理方法などの違いから学び活かせることは多々あります」

「また、この働き方であれば、クライアントの開発現場でコードを書き続けられることもできます。自社の案件ともなると開発業務だけでなく、その他のタスクも多く、開発に集中することは少なくなります。

しかし、常駐先ではバリバリとコードを書くことに集中できるので、“プログラミング”というスキルも磨き続けることができる。これはエンジニアとしての自信に繋がっています」

リモートワークを円滑にするためのツール使いとコミュニケーションの工夫

常駐型フリーランスとの両立はメリットもあるが、複数案件をこなすにはテクニックが必要になる。

谷本氏の場合、基本的には自社プロダクトに関する業務はリモートワークであり、ほかのメンバーとのコミュニケーションも対面で行うことは少なく、チャットツールやタスク管理ツールを活用して、連携をとっている。

チャットツールは自社案件も常駐型案件も『Slack』を利用している。Slackで統一し“Slackを見れば全てが確認できる”状態を作ることで抜け漏れを防ぐ。

自社プロダクトのタスク管理ツールは、『Trello』を利用している。誰にタスクが割り当てられているのかが分かりやすく、リモートで非同期にやり取りしながらタスクを管理しやすい点が選定理由だ。

常駐案件のタスクから自社案件のタスクへの思考の切り替えは、思っている以上に難しく苦労するという。ここでもTrelloを活用し、細かくタスクを分解してチェックリストを作るなどして工夫をしているそうだ。

「チャットツールでのコミュニケーションでは、さりげなく存在感を出せるようにしています。リモート作業の場合、タイムラインで発言していないと “存在しない”のと同じ状態になってしまいます。Slackでレスする前にリアクションをつけるようにして、会話に参加していることを他のメンバーに認知できるように心がけていますね。

また、チャットでの会話は、顔を合わせた会話と同じようにそのまま文字にすると、主語や前提が抜けて誤解を生みやすいので、言葉が多いかなと思うくらいに丁寧に書きます。

さらに、Airtableは少し変わった使い方をしていて、自社事業の仮説や課題を管理してディスカッションや進捗の管理に使っているんです」

複数案件に相乗効果を生ませるためのテクニック

両立をスムーズに行うだけでなく、常駐の案件が自社での開発にプラスの効果を生むための動きも欠かさない。谷本氏は今後自社プロダクトでチーム開発をおこなうことを見越して、 “チームビルディング”に関われる常駐の案件に挑戦している。

常駐案件のクライアントは成長段階にあるベンチャー企業。参画しているプロジェクトチームもジョインしてからまだ1年未満だが、驚くべきスピードでメンバーが増えたという。

「開発現場でチームが上手く機能しないことは、大きなストレスになります。いずれは自社チームでの開発をするので、『チームビルディング』については学んでおくべきだと思い、案件の希望条件に入れ、エージェントに依頼しました」

現在谷本氏は、常駐案件のチーム強化に貢献すべく、クライアントのメンバーとの連携をかなり意識している。

「コミュニケーションで、心がけているのは『HRTの原則』。謙虚(Humility) 、尊敬(Respect) 、信頼(Trust)の価値観を大切にすることですね。チームにはいろんな立場の人がいるので、そのそれぞれの方に、敬意をもって接しています」

大切にしている仕事観は、顧客に“価値を感じてもらう”こと

ツールとコミュニケーションの工夫で、二つの案件でうまく相乗効果を生み出している谷本氏。

最も大事にしている仕事観は “クライアントに価値を感じてもらうこと”。この仕事観を持つ谷本氏だからか、常駐先のクライアントにも今後の計画でも活躍を期待される声が既に上がっている。

谷本氏は、フリーランスエンジニアとしての働き方について以下のように語る。

「いろいろな案件や現場を経験したい人にはマッチすると思います。会社に勤めていると、同じ案件に何年もアサインされることも少なくありませんが、フリーランスであれば自分から案件を選ぶことができます。違う業界のシステム開発に携わることでスキル向上を目指したい方や、視野を広げたい方にはお勧めできます」

谷本氏のように起業をする場合でなくとも、あらゆる案件に携わりスキルアップしたいと思っている人にとって、フリーランスという働き方は有効な手段になる。

現在も非常に活躍している谷本氏だが、ゆくゆくは幅広いスキルを身につけたフルスタックエンジニアとなることを目標としている。

「プロダクトの課題をスマートに解決できるようになりたいですね。インフラ、ビジネスサイドなど、あらゆる視点からプロダクトの仕様や実装を考えることで、早く安く上手く課題を解決できるのが理想です」

複数の案件を同時進行で行うことは容易なことではない。しかし、今回の谷本氏のインタビューから、意志と戦略を持ったエンジニアにとっては、この働き方は報酬が増えること以上に、価値を増大させると感じた。

私たちは、自分の意思と責任で、仕事の価値を作り上げていく時代の入り口に立っているのかもしれない。

☆寄稿者プロフィール☆

hagy_nはぎー(geechsマガジン編集部)
ITフリーランスと企業をマッチングするサービスや、フリーランス向け福利厚生プログラム「フリノベ」を提供するギークスに所属。ITクリエイターのための気軽な情報収集メディア「geechsマガジン」のエディター・ライターと、ITエンジニア向け無料イベントスペース「21cafe(ニイイチカフェ)」の管理人を兼務。イベントレポート・インタビュー記事を中心に執筆中。女性アイドルが大好きで、特にハロー!プロジェクトに心酔している。