手作りの漆器の良さを伝えたい

2019年4月6日(土)〜19日(金)、東京・自由が丘にある日本の“かっこいいもの”を集めたお土産やさん〈katakana(カタカナ)〉代表の河野純一さんがまたもや職人さんに惚れ込み、ユニークなイベントを開催します。

その名も〈オンリー椀〉。福井県鯖江市に工房〈ろくろ舎〉をかまえる酒井義夫さんによる漆器のセミオーダー会です。

オンリー椀は「減少の一途を辿る手づくりの漆器の良さを伝えたい」と、酒井さんが2年前にスタートし、全国各地で開催してきたイベント。今回は6種のお椀の形状と5種類の仕上げから好きな組み合わせを選び、「自分だけのお椀」をオーダーできます。

セミオーダーができる6種のお椀。左端はカタカナだけでオーダーできる「合鹿椀」。価格 7,000円〜

セミオーダーができる6種のお椀。左端はカタカナだけでオーダーできる「合鹿椀」。価格 7,000円〜

福井へ、ろくろ舎を訪ねて

昔は「塗りの越前」といわれるほど漆器で栄えた鯖江ですが、現在現在このまちの漆器産業を支えるのは、樹脂製の器にウレタン塗装を施した業務用の器なのだそう。

昔は「塗りの越前」といわれるほど漆器で栄えた鯖江ですが、現在現在このまちの漆器産業を支えるのは、樹脂製の器にウレタン塗装を施した業務用の器なのだそう。

オンリー椀のきっかけは、酒井さんが鯖江で自分の工房を開放し、オーダー会を開いたこと。

当時の酒井さんは木地職人として働いていましたが¬「このまま下請けを続けていては先がない」「引き取り手のない古いお椀がたくさんあるというのに、これ以上つくり続ける意味はあるのだろうか」などといったジレンマを抱えていました。

そんなときにオーダー会を開いてとても喜ばれたことから、「その人だけのものをつくる」ことに大きな可能性を感じたという酒井さん。以来、車に木地を積み、全国をまわるように。

〈ろくろ舎〉の工房。

〈ろくろ舎〉の工房。

今年の春、カタカナの河野さんは酒井さんの工房を訪れ、酒井さんのものづくりに魅了されてしまったといいます。

「この場所にはいろいろな産地が、新しいことに進むために置き去りにしたものがある。しかし古びた空間ではなく、メチャクチャいい感じで心地良い。木地師ってカッコいいな」(河野さん)

今回のイベントでは、酒井さんがカタカナのために、特別につくったお椀も登場します。

それが、こちらの大きなどんぶり。

カツ丼を盛った合鹿椀。これは、おいしくいただけそう!

カツ丼を盛った合鹿椀。これは、おいしくいただけそう!

無類の丼もの好きである河野さんがリクエストした、〈合鹿椀(ゴウロクワン)〉というお椀です。

木地師という生業を続けていくために

什器ユニット〈FRAME〉。

什器ユニット〈FRAME〉。

北海道に生まれ育ち、放浪生活、フランスパン職人を経て、伝統工芸師清水正義氏に師事後、2014年にろくろ舎を立ち上げた酒井さん。

現在は伝統的な丸物木地師としての技術を継承しながら、「持続可能」をテーマにさまざまな活動を行っています。

福井の間伐材を使用した什器ユニット〈FRAME〉のブランディングも、そのうちのひとつ。

「マーケット空間をもっと楽しく」をテーマに、東京で活動するデザインユニット〈MUTE〉と福井の〈TSUGI〉〈Cinq〉と協働し開発を手がけました。

FRAMEに使われているのは、福井県の杉間伐材。間伐とは、木々がお互いの成長を阻害する枝を間引く「木の間引き」のこと。FRAMEの皆さんは森の本来あるべきサイクルを取り戻すために、多くの人たちに木を使ってもらうことが必要だと考えています。

FRAMEに使われているのは、福井県の杉間伐材。間伐とは、木々がお互いの成長を阻害する枝を間引く「木の間引き」のこと。FRAMEの皆さんは森の本来あるべきサイクルを取り戻すために、多くの人たちに木を使ってもらうことが必要だと考えています。

最後に、酒井さんから読者の皆さんへメッセージをいただきました。

「オンリー椀は、木地師という生業と現在の世の中、そして自分自身との接点を探り続けた結果から導き出された活動です。斜陽産業である漆器業界でひたすら木地をつくり続けていくことに限界を感じていましたし、もっとエンドユーザーと接したいという気持ちもありました。とはいえ、自分は木地師なんだというところは変えずにやっていきたかった。それは、こんな自分にも仕事をくださる方々や、お世話になっている産地の方々に対する、自分なりの敬意のつもりです。オンリー椀の活動を通して全国を行脚していると、多くの方にとって漆器というものが未知であり、興味がある方はたくさんいるように感じています。商売ではありますが、じつは漆器を伝えていく布教活動だったりもするんです。直接会って丁寧に説明して理解していただき、丁寧につくってお渡しする。すごくシンプルな生き方な気がしています」(酒井さん)

〈FRAME〉の什器ユニット。

〈FRAME〉の什器ユニット。

〈FRAME〉の什器ユニットを出店ブースとして活用したイベントの様子

〈FRAME〉の什器ユニットを出店ブースとして活用したイベントの様子

「FRAMEは、危険と隣り合わせであるにも関わらず実入りが少ない林業という職業や、人工林が野放しになっている現状に、少しでも多くの方に関心を持って頂けたらと思って参加しています。その一方で思想の押し付けはしたくないという気持ちもあるのですが、よく考え抜かれたプロダクトですし、良いチームで仕事ができたからこそのプロジェクトだと思っています。もっと広がってほしいなと願っています」(酒井さん)

カタカナ自由が丘店。

カタカナ自由が丘店。

4月6日(土)・7日(日)は、カタカナ自由が丘店にて酒井さんの「お椀の出来るまで」の話を聞きながら豚汁を楽しむ食事会〈ろくろ舎のお椀の一汁お試し会〉が開かれるそう。こちらはメールにて予約制となっています。詳しくは公式サイトをご覧ください。

information

オンリー椀 made in ろくろ舎

場所:カタカナ自由が丘店 東京都世田谷区奥沢5-20-21 第一ワチビル1F

TEL:03-5731-0919

営業時間:11:00〜20:00 ※最終日は19時閉店

定休日:不定休

メール:info@katakana-net.com

writer profile

Yu Miyakoshi

宮越裕生

みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。