コロナ禍で仕事がストップ、いま自分にできることとは

伊豆下田と東京の2拠点でフォトグラファーとして働く津留崎徹花さん。新型コロナウイルスの影響で仕事がストップするなか都市部の人たちの暮らしと、下田の食に携わる人たち、両方の状況を見ていて、何か自分にできることはないかと考えある試みを始めました。そして、あらためて下田の魅力を感じているそうです。

夫は変わらず仕事を継続中、一方カメラマンの私は……

前回夫がお伝えした下田救済のためのクラウドファンディング「新型コロナから伊豆下田を守りたい! 緊急支援プロジェクト」。なんと2日間で目標金額を達成し、その後もたくさんのご支援をいただいています。

立ち上げメンバーの方々もたくさんの支援が集まったことに驚き、さらに支援者の方からのメッセージにとても励まされているようです。ご支援くださったみなさま、本当にありがとうございます。

クラウドファンディングは新たに27の事業者が加わり、5月31日まで継続しています。多く集まれば集まるほど、事業者さんの助けとなります。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

「新型コロナから伊豆下田を守りたい! 緊急支援プロジェクト」クラウドファンディングページ

クラウドファンディング「新型コロナから伊豆下田を守りたい! 緊急支援プロジェクト」は5月31日まで継続中。

わが家におけるコロナ禍の影響はというと、養蜂と建築の仕事をする夫はありがたいことに以前と変わらず仕事を継続しています。養蜂は山の中での作業がほとんどで感染のリスクはなく。そして建築の仕事もオンラインで打ち合わせをし、自宅で図面を書くなどリモートワークをしています。

ノートパソコンで作業中

オンラインミーティング中の夫、自宅にて。

一方、いままで東京と下田を行き来しながら2拠点でカメラマンの仕事をしてきた私は、どちらの仕事もすべてストップしています。自分でどうのこうのできる職種でもなく、正直なす術がない。

収入の面で不安がないわけではありませんが、夫は仕事が継続できているし、家賃も食費も普段からそんなにかかっていません。ということで、いまのところ何とかなるのではないか……? と思うようにして、休校中の娘とのんびり過ごしていますが、この状況が長期化したらまずい……という不安は払拭できません。

収穫したたけのこ

今年は夫が山でたけのこをせっせと掘ってきてくれました。

庭でたけのこを焚く

それを庭の伐採した木で焚き、毎日たけのこ料理三昧。お金もかからないうえに、なにしろおいしくてありがたい。

土鍋で炊いたたけのこご飯

下田のおいしいものを東京へ

新型コロナ感染が拡大するなか、私にとってずっと気がかりだったのが東京に住む家族や友人の生活でした。

私は5年前まで会社員でした。こういう状況になっても、電車に乗って仕事に行かざるをえない友人たちの立場もとてもよくわかります(いまはほとんどがリモートワークになっていますが)。

リモートワークできたとしても、自宅には休校中の子どもがいて、家事や育児に追われ、なかなかワークなんて落ち着いてできない。さらに、買い物に行っても目当ての物が売り切れていたり、精神的に疲れているのに入場制限されたり行列に並ばなくてはいけない。不自由な生活でも、なんとか前向きに捉えて楽しもうとしていて。

そうしたなか、ちょうど誕生日を迎える友人がいたので下田の鰹節を送りました。東京に住んでいるその友人は自粛生活のなか、やはり仕事と育児に奮闘しています。

ある朝その鰹節で出汁をとったら、ふとその瞬間気持ちが落ち着いたそうです。温度や香り、視覚や嗅覚を含めて、食にはそんな力があるんだと感じ、私もとてもうれしくなりました。

鰹節で出汁をとる

さらに都市部の友人たちと近況報告し合っていると、複数の友人から「おいしい干物が食べたいんだけど、下田で買える?」と。自宅で3度の食事の支度をするのに、冷凍保存できて、さらに焼けばすぐに食事ができる干物がとても重宝するのだそう。けれど、近所のスーパーではおいしい干物が手に入らないというのです。

あるよあるよ! と友人たちに干物を送ると「すごくおいしい! 毎月取り寄せたい!」など、とても喜ばれました。

そんなふうに食卓でちょっと心が踊るような時間が、この状況で疲れている心を少しほぐしてくれるのではないか。下田の食材にそんな力があるかもしれない、そう想像するようになりました。

金目鯛の干物を焼く

下田の食の厳しい現状

友人たちに送った鰹節や干物は、普段わが家がよく買いに行くお気に入りのお店です。お店の方とも顔馴染みなので、行くたびにいろいろとお話します。そこでうかがったのが、やはりコロナ禍でなかなか厳しい状況にあるということ。

定期的に卸していた宿泊施設の休業や、観光客の受け入れがストップしていること(5月初旬にお話をうかがっています)。さらに、小中学校の休校により給食への提供もいまは停止しています。それについても、行政からの保証はまったくありません。

東京から移住した私たちにとって、生産者さんが身近にいる環境や昔から続いている小さな商店は、下田の財産だと感じています。そうした方々が、このままだと立ち行かなくなるかもしれない……。

山田鰹節店のご家族

まちなかにある〈山田鰹節店〉さん。削りたての鰹節や鯖節を100グラム単位で購入できます(地方発送は200グラム以上より)。

鰹節ごはん

お出汁にももちろんですが、そのままご飯にのせて食べてもおいしい。

山田ひもの店の山田幸子さん

こちらもまちなかにある〈山田ひもの店〉さん。お店をひとりで切り盛りする山田幸子さん。

店先で魚を天日干し

天気のいい日にだけ魚をさばき、店先で天日干しにしています。

天日干し作業

作業中の山田幸子さん

また、知り合いの漁師さんからは、高級食材として人気を誇る金目鯛や伊勢海老などが値崩れしているという話を聞きました。

魚介類は通常、漁協が決めた値段で漁師さんから買い取り、漁協から都市部の市場に大量に出荷しています(魚屋さんなどの仲買いの方も、市場で買いつけをしています)。

東京など都市部の飲食店が営業を自粛したことによって需要が減り、下田の漁協から市場へ卸すことができなくなりました。さらに、下田の宿泊業や飲食店も休業したため地元での流通も途絶えたのです。

行き場を失った魚介類が下田の漁協で滞り、漁協は魚介類の値段を大幅に下げ始めました。漁に出るにはガソリン代や人件費がかかります。価格が暴落することで、漁に出るとマイナスになってしまう事態にもなりかねないのです。

森さんご夫妻の漁船に同乗

森さんご夫妻

伊勢海老漁に同行して写真を撮影させていただきました。須崎で漁を営む森さんご夫妻。

網上げ

立派な伊勢海老を収穫

一時期は半値以下まで値崩れした伊勢海老。漁師さんたちが困惑した状況のまま今期の漁は終了しました。10月からまた解禁となります。

キッチンにたつご夫妻

森武一さん、桃代さんご夫妻。「早く収束して下田に食べにきてほしい、それが一番」そう話していました。

都市部の人たちと下田の生産者や商店をつなぐ

都市部の人たちの暮らし、そして下田の生産者さんや商店。両方の状況を見ていて、自分にできることは何かないのだろうかと考えていました。

そしてふと思いついたのが、両者をつなげること。もしそれができたら都市部の人に喜んでもらえて、下田の生産者さんも助かるのではないかと。

下田漁港

そこで思いついたのが、SNSのページを立ち上げ、下田の魅力的な生産者さんや商店を紹介しながら地方発送の情報も掲載することです。

下田にはインターネット環境のない商店や、検索しても情報がほとんど出てこない小さなお店もあります。そうしたお店の方に直接情報をうかがい、商品の値段や購入方法などを掲載することで注文しやすくなるのではないかと。

下田で暮らしてきたこの3年間で、仕事でもプライベートでもいろんな方を撮影させてもらいました。なかには、いままさに苦しい局面にある生産者さんや商店の方々の姿もあります。そうした写真を使い、「伊豆下田、海と山と。」をFacebookとInstagramで立ち上げました。

下田湾の漁船

サイトをスタートしてから、さっそくうれしい反応がありました。Facebookを見た方から、「下田に行ってお金を落とせないいま、お取り寄せしてます。でもあまり通販の情報ないのでとてもありがたいです」と。そして、「お店の方の人となりがわかる記事と写真ですね」という声もいただきました。

このサイトを見てお取り寄せしていただくのもうれしいです。そして実際にお店に行ってみたい、この方に会ってみたいと思って、いつか下田に来ていただけたら。

下田の干物

取材をして気づいたのは、生産者さんもお店の方もご自身がつくっているものにこだわりと自信があり、自分の商売にとても誇りがあるということ。そういう方々が食を支えている下田というまちが、以前よりもまた魅力的に感じられています。

中村大軌さん

お米農家を営む中村大軌さん。日本人が守ってきた田んぼという財産を後世に受け継ぎたいという志を抱き、米づくりをしています。〈南伊豆米店〉のHPからお米の通販も可能です。

南伊豆で育った稲穂

このSNSを運営することは、ただ自分がやりたくて始めただけで、経済的なメリットはありません。けれど、こうして魅力的な下田の方々の存在にあらためて目が向き、そうした方々とやりとりをするなかでいろんな気づきをもらっています。それはいわゆる「プライスレス!」な私の財産となりそうです。

いやいや、収束したらちゃんと仕事もしなくてはですが、それまでは自分のできるかたちで微力ながら応援していこうと思います。

娘もカメラで撮影中

休校中の娘と一緒に海へ出かけたり、山を歩いたり。一緒に写真を撮影したこの日も、とてもよい思い出となりました。

撮影中の母

娘が撮影してくれた一枚。須崎のひじき漁撮影にて。

文 津留崎徹花

text & photograph

Tetsuka Tsurusaki

津留崎徹花

つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。移住先を探した末、伊豆下田で家族3人で暮らし始める。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。