島根県西部、山口県との県境にある吉賀町柿木村では、古くからこの地域一帯に伝わるお茶づくりが受け継がれています。今年も5月上旬から中旬にかけて、新茶の茶摘みが行われました。

この柿木村の小さな茶畑から生まれた、〈SOTTO CHAKKA(ソットチャッカ)〉の〈釜炒り茶〉をご紹介します。

棚田が広がる柿木村の風景。

棚田が広がる柿木村の風景。

柿木村はおよそ200世帯あまりが暮らし、日本の棚田100選のひとつである大井谷の棚田や、清流日本一に6度も選ばれた高津川が流れる自然豊かな土地。

〈ソットチャッカ〉は、島根県出身である写真家の七咲友梨さんが2017年に立ち上げた、柿木村に暮らす家族と手づくりするクラフトティープロジェクトです。

「釜炒り茶」25g 1,800円 、6g 600円。パッケージの写真は七咲さんが撮影。

〈釜炒り茶〉25g 1,800円 、6g 600円。パッケージの写真は七咲さんが撮影。

釜炒り茶独特のくるっと丸まった形状の茶葉。甘い香りが立つ。

釜炒り茶独特のくるっと丸まった形状の茶葉。甘い香りが立つ。

農薬・除草剤・肥料を使用せずに育てられた在来種である「山茶」の茶の木のなかには、100年以上の樹齢のものもあるそう。

古くからこの地域に受け継がれ家々で飲まれていたお茶を“おすそ分け”するように、毎年少量ずつ生産し販売しています。

柿木村に伝わる釜炒り茶とは?

東京在住の七咲さん。毎年茶摘みの時期には帰省していたそうですが、緊急事態宣言を受け今年はやむなく断念することに。

「小さい茶畑といえど3か所あるので人手がないと摘みきれません。今年の収穫は難しいかな……と諦めかけていたんですが、地元の人たちが『任せてね、安心してね』と声をかけてくれて。本当にうれしくて頼もしかったです」(七咲さん)

今年の茶摘み風景。感染予防を行い地域の人たちで収穫した。(撮影:糟谷直輔)

今年の茶摘み風景。感染予防を行い地域の人たちで収穫した。(撮影:糟谷直輔)

そして無事に収穫できた新茶葉がこちら。

みずみずしい摘みたての新茶葉。(撮影:糟谷直輔)

みずみずしい摘みたての新茶葉。(撮影:糟谷直輔)

そもそも〈釜炒り茶〉は、一般的なお茶とどう違うのでしょうか?

日本で流通している一般的なお茶のほとんどは、茶葉を蒸気で蒸す製法でつくられます。鉄釜や鉄鍋で炒る釜炒り茶は、全体の約5%程度とごくわずかなのだそう。

そんな貴重な釜炒り茶のつくり方を教えていただきました。※柿木村の製法です。

●作業工程1:茶の木の新芽を摘む。2:鉄釜で茶葉を炒る。3:炒った茶葉を熱いうちに手揉みする。4:天日干しでカラカラになるまで乾燥させる。5:鉄鍋で再び炒る。

畑の手入れから茶葉の加工作業まで、地域の人たちの協力のもと、例年通り味わいある香りよいお茶に仕上がったとのこと。

おすすめは水出しで飲む釜炒り茶。暑い日には体にスッと染み渡る爽やさが心地よい。

おすすめは水出しで飲む釜炒り茶。暑い日には体にスッと染み渡る爽やかさが心地よい。

〈ソットチャッカ〉の釜炒り茶は、その香りと後味が特徴。急須に入れた茶葉にお湯を通すと、丸まった茶葉がふわりと開いていき、同時に心もほぐれていくかのよう。甘い香りとすっきりとした味わい、後味はほんのり香ばしさが感じられる、釜炒り茶ならではの独特の風味が味わえます。

過疎発祥といわれる地で、未来へつながる循環を生む

夜、あたりが真っ暗になる村では民家のわずかな灯りが人の営みを知らせてくれる。

夜、あたりが真っ暗になる村では民家のわずかな灯りが人の営みを知らせてくれる。

島根は“過疎発祥の地”と言われています。過疎は、昭和40年代に一般的に使われるようになった言葉なのだそう。

実はこの地域一帯は、自給ベースの有機農業が始まって既に40年近く経とうとする、有機農業先進地。そのため農業を志す移住者が増えてきており、近年ようやく過疎化に歯止めがかかってきたのだといいます。

「私の両親やその上の世代は過疎化が進んだ高度経済成長期に大変な思いをしながら土地を守ってきました。〈ソットチャッカ〉を立ち上げたのは、数年前に移住者の人たちと話したことがきっかけです。当時の私はここが『宝の山』だと言われ、それまでの価値観が逆転するほど衝撃を受けました。それから実家のお茶づくりを手伝ってみて、東京の友人に配ったのが始まりです。私自身、何もないと思い込んでいた故郷、この島根の里山にあふれる魅力を再認識したんです」(七咲さん)

七咲さんの家族を中心に地域の住人や移住者との関わりが生まれ、新しいお茶づくりが展開され始めた。

七咲さんの家族を中心に地域の住人や移住者との関わりが生まれ、新しいお茶づくりが展開され始めた。

東京と島根を行き来しながらお茶づくりを続ける七咲さんは、「〈ソットチャッカ〉を通して、この土地に興味を持ってくれた人たちと地域の人たちのコミュニケーションや新しい発見が生まれ、小さくても気持ちのいい循環ができればうれしいです」と語ります。

その土地にそっと寄り添う、小さな灯火のような〈ソットチャッカ〉。

7月頃には、柿木村に自生する野草のブレンド茶も販売予定とのことでそちらも楽しみです。

島根の柿木村から届く、自然の恵みと人々の暮らしのときが刻まれたお茶を、ぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。

information

SOTTO CHAKKA ソットチャッカ

WEB:https://www.instagram.com/sotto_chakka/?hl=ja

オンラインショップ:http://store.moutakusanda.com/items/25751120

取扱店舗:いちまるいち(高円寺アパートメント101)・渋谷TSUTAYA 6F 他

writer profile

Mayo Hayashi

林真世

はやし・まよ●福岡県出身。さまざまな職種を経験後、現在はフリーランスのライターとして活動中。デザイン・アートが好きで、作家やアーティストのインタビューを中心に執筆。2020年に地元福岡に帰郷、東京と行き来しながら九州のおもしろいヒトモノコトを掘り起こし発信している。

photographer profile

Yuri Nanasaki

七咲友梨

ななさき・ゆり●島根県出身。リアリズム演技を学び、役者として映画、ドラマ、舞台、CMなどで活動。その後、写真家・横木安良夫氏に師事、独立。ポートレイトや旅の写真を中心に雑誌、広告、書籍、webなどの分野で活動。CM、ミュージックビデオ、映画などの映像カメラマンも手がける。2017年に「ソットチャッカ」を立ち上げ、アーティストとのコラボなど積極的に行なっている。