世界中どこからでも体験できる、建築アーカイブ

2020年5月、ネット上の新しいドキュメンテーション・サービス〈ARCHI HATCH(アーキハッチ)〉が公開されました。ユーザーは建物のなかを自由に移動し、VRのように360°見渡すことができます。建築家は前川國男さんや永山祐子さん、建築ユニット〈dot architects〉など、新進気鋭の若手から日本を代表する建築家まで、注目度の高い建築家が揃っています。

こちらは、前川國男さん(1905〜86年)が手がけた「新・前川國男自邸」の3Dモデル。

設計:前川國男 竣工年:1974年

設計:前川國男 竣工年:1974年

サイト上ではこの3Dモデルの中を歩けるようになっています。廊下を歩けたり階段を上がれたり、建物の中を探検しているような気分になれるので、ぜひサイトで試してみてください。

前川さんの自邸といえば、〈江戸東京たてもの園〉(東京都武蔵小金井市)に移築復元された旧自邸が知られていますが、こちらは後年、前川さんが70歳を目前に建てたもの。年の離れた美代夫人に安心して暮らすことのできる住まいを残したいと、耐震性を考慮した鉄筋コンクリートの家を建てたといいます。

室内

新自邸の延床面積は、旧自邸の約4.5倍と広くなっていますが、大まかな空間構成や特徴は、旧自邸を踏襲しているそう。旧自邸を訪れたことがある方なら、見比べてみるのも面白いかもしれません。

こちらは神奈川県・逗子にある、三井嶺さんによる個人住宅。

設計:三井嶺 竣工年:2019年

設計:三井嶺 竣工年:2019年

室内

森の図書館と呼ばれる家には、数万冊におよぶ蔵書が納められています。湾曲した屋根は、この家のそばにある山から覆いかぶさる木々の枝をモチーフにしたのだそう。

こちらも、同じく神奈川県。葉山の海の近くにある個人住宅です。

設計:尾形良樹/SALT 竣工年:2017年 Photo: YASAKA Mariko

設計:尾形良樹/SALT 竣工年:2017年 Photo:YASAKA Mariko

建築家の尾形良樹さんがアートプロデューサー、金島隆弘さんの依頼を受け、古いマンションの一室をリノベーションしました。クライアントの希望は、膨大なアートのコレクションを内包できる家。

室内

ダイニングの床を見ると、砂がひかれた土間になっています。ビーチへ頻繁に出かけ、アートの搬入・搬出や来客も多いことから、廊下からダイニング、ベランダまでを土足で行き来できるようにしたのだとか。ベッドルームやアート収納倉庫、リビングはフローリング張りでプライベートの動線として設計されています。

奈良にある〈NEW LIGHT POTTERY〉のオフィス兼ショールーム。設計:ninkipen! 竣工年:2018年 写真:河田弘樹

奈良にある〈NEW LIGHT POTTERY〉のオフィス兼ショールーム。設計:ninkipen! 竣工年:2018年 写真:河田弘樹

このプラットフォームを設立したのは、〈ARCHI HATCH〉代表であり、東京都品川区にある〈建築倉庫ミュージアム〉の初代館長を担った徳永雄太さん。

徳永さんは館長の経験を通して、建築が持つダイナミズムや建築家の思いに触れ、図面や模型だけではわからない建築の魅力を、より多くの人たちに伝えていきたいと考えるようになったといいます。

京都・四条河原町にある町家を改修した〈自転車洋品店ナリフリ〉。設計:dot architects 竣工年:2018年

京都・四条河原町にある町家を改修した〈自転車洋品店ナリフリ〉。設計:dot architects 竣工年:2018年

徳永さんはサイトの公開にあたり、次のような言葉を寄せています。

「訪れることのできない遠い土地の建築、失われていく貴重な建築。それらが、自らの意思で空間を移動できるよう記録されます。そして、建築はフィジカルな存在を超えたもうひとつの形をもって、世界の人々がシェアできる存在として生まれ変わります。将来的には、建築家の生の声や設計のプロセス、写真や模型なども公開していく予定です」

家具工房〈iei studio〉。大阪門真市を拠点に無垢材を使用した住宅、店舗什器のデザインから制作までトータルで請け負う。設計:iei studio

家具工房〈iei studio〉。大阪門真市を拠点に無垢材を使用した住宅、店舗什器のデザインから制作までトータルで請け負う。設計:iei studio

日本の建築を世界中の人にシェアできる本サービス。今後は海外の作品もアーカイブに加わっていく予定です。これからの展開も楽しみですね!

information

ARCHI HATCH

https://archihatch.com

writer profile

Yu Miyakoshi

宮越裕生

みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。