3年目の米づくりはうまくいった…?

下田に移住して念願の米づくりを始めた津留崎さん一家。3年目となる今年も、稲刈りの時期に台風が接近。なんとか稲刈りを終えて天日干しをしているところにまたもや不測の事態が……!3年目の米づくりもいろいろあったようですが新たな人とのつながりも生まれたようです。

実りの秋! 今年の稲刈りは…?

庭の柿も赤く色づき、栗やさつまいもなど、ワクワクするような実りの秋。今年で3年目となるわが家の田んぼも見事な黄金色へと変化しました。いよいよ稲刈りの季節です。

黄金色の田んぼ

稲刈り当日の田んぼ。青々としていた稲がすっかり黄金色に(10月撮影)。

今年の稲刈りは、1年目とも2年目ともまた違う方法で行いました。わが家は手植え手刈り、天日干しで米づくりを心がけています。自家消費用の小さい田んぼなので、せっかくならちょっとした苦労を味わいながら米づくりをしたい。そして何より、田んぼで友人たちとみんなで作業をすることがとても楽しいからです。

田植え完了

6月に行った田植えは、すべて手作業。終わったときの達成感が気持ちいい。

そうして3年間やってみて、米づくりがいかに天候に左右されるのかを実感しています。

1年目は天候に恵まれ、手植え手刈り天日干しの三拍子が見事にそろいました。2年目となる昨年は、全国に甚大な被害をもらたした台風19号が稲刈りの直前に接近。悩みに悩んだ末、手刈り天日干しをあきらめて急遽機械で刈り、そのまま乾燥しました。

そして3年目の今年、6月初旬に友人たちと手で植えた稲は順調に生育。最近ウンカという害虫の被害が多く聞かれるのですが、わが家の田んぼは無事でした。

青々とした稲

6月に田植えをし、その後順調に育った稲(8月撮影)。

そうして無事に迎えた秋、そろそろ稲刈りという頃にやはり台風が。稲刈りを予定していたまさにその週末、台風14号が最接近するという予報になったのです。友人たちにも声をかけていましたが、さすがに厳しいと判断して延期することに。

子どもたちにも参加してほしいので翌週末にと思ったのですが、新型コロナウイルスの影響で延期になっていた娘の運動会がその週末に。仕方ない、平日にやってしまおうということになりました。

頭を垂れる稲穂

秋になり、重たそうに頭を垂れる稲穂。よく育ってくれました。

ご近所さんに助けられた稲刈り

1反弱のわが家の田んぼ、大型のコンバインで刈り取ってしまえばほんの1時間くらいで終わります(2年目の機械刈りのスピードにひどく驚きました……)。

けれど、それを人力でやるとなると、とても手間がかかる。ひとつずつ鎌で刈っていき束にして手で結び、それを竹で組んだ稲架(はさ)にかけていくという1日がかりの作業です。1年目は終わりが見えなさすぎて泣きそうになりました(いまとなってはとてもとてもいい思い出です)。

稲刈り参加者の集合写真

1年目の稲刈り、終わったのはあたりが薄暗くなり始めた頃。3年前は子どもたちがまだ小さい。

週末ならば友人たちがたくさん集まってくれるので、すべて手刈りでと考えていました。けれど、平日となるかなり少人数になるはずです。さらに天気予報によると、その日は午後から雨が本降りになると。本当なら全部手刈りで行いたい……けれど状況的に厳しいかもしれない……。

天日干しにした稲

1年目、天日干しにした稲。この景色をみるとうれしくなります。

夫とどうしたものか相談し、機械と手刈りの両方で行うのはどうかと考えました。わが家は機械を持っていないのですが、ふと浮かんだのはいつも私たちを気にかけてくれる近所のご夫婦、土屋さん。土屋さん夫妻はたしか機械で稲刈りを行っているはず。

電話で状況を話して相談してみると、「バインダー(稲刈りに使用する機械)を持って手伝いにいくよ!」と。本当にありがたい……これで無事に行えるはず。

土屋嘉芽雄さん登場

バインダー持参で手伝いに来てくれた土屋嘉芽雄さん。「そんな、お礼言われるようなことじゃないよ、がんばんな!」と。いつもわが家を気にかけてくれるありがたい存在です。

当日は朝から小雨がぱらつき始めましたが、友人たちも手伝いに来てくれたおかげでスムーズに作業が進みました。予報どおり次第に本降りになり、その前にギリギリ作業を終えることができました。その後、木々の下で雨を避けながらみんなで昼ごはんを。

手刈りを初めて経験した友人からは「昔は全部手作業だったんでしょ? 米づくりって大変なんだね〜」と。また別の友人からは「めっちゃ楽しい! この達成感は格別だね!」と。今年の稲刈りもわいわいと楽しい時間となりました。

稲架を準備

手刈り中の娘

娘も一緒にやらせたいということで、学校を早退させ手刈り。慣れた手つきでてきぱきとこなす姿が頼もしく、父も母もうれしかったよ。

刈り取った稲を縛る

土屋さんもお手伝い

大人数なので作業が早い

バインダーを使ってみる

土屋さんに指導してもらいながら、バインダーを初めて使ってみる。なんでも初めて経験するというのは楽しいもんだ。

木陰で昼食

炊き込みご飯と味噌汁をみんなで頬張る。同じ釜の飯を食うってのはやはりいいもんだ。

炊き込みご飯

稲刈り終わりでみんなで記念撮影

今年は天日干しできる! と思いきや……

そうして無事に終えた稲刈り。その後、刈り取った稲は竹で組んだ稲架に掛け、およそ2週間ほど天日干しにします。すべての作業を終え、稲がずらりと並んだ景色は本当に美しくすばらしいものです。

今年は完全天日干しできるのか〜という喜びが湧き上がります。昨年は台風被害を避けたために、この稲架掛けの景色すら見れなかったのです。あぁ干しあがるのが楽しみだ、と思っているところへまた不測の事態が。

稲架で干された稲

田んぼの様子を見に行った夫から連絡が。「猪に食われてる、明日にでも脱穀しないとまずい」

わが家の田んぼは電柵が張られているため、いままで猪の被害はありませんでした。今年は下田のほかの地域でも猪が多数出没していて、明らかに昨年よりも被害が拡大しています。

電柵を突破するほど食糧に困り始めているのか、いろんな方法を学んで賢くなってしまったのかわかりませんが、電柵を突破して稲を食べた形跡がまざまざと……。

夫いわく、すぐに田んぼにある稲架から下ろさないと全部食べ尽くされかねないというのです。天日干しを初めてからまだ7日目、完全に乾いていないため、あとは機械乾燥にかけるしかない。今年こそは太陽をいっぱい浴びさせたかったけど、食べ尽くされたらそれこそ元も子もない。

ので、翌日稲架から下ろして脱穀してしまおうということに(その日の夜、夫は田んぼで車中泊をして見回り。車の気配を感じたからか、その晩は猪は出没しませんでした)。

稲穂

脱穀をするには機械が必要になります。この作業ばかりは手作業では無理なのです。

米づくりをサポートしてくれている〈南伊豆米店〉の中村大軌さんに連絡したところ、別の田んぼで機械を使うので翌日は出すことができないそう。この時期は毎日どこかの田んぼの脱穀作業をしているため、急に予定を組むことが難しいのです。

どうしよう……思い当たるのは隣の田んぼの方しかいないけれど、機械を借りるということが失礼に当たるのではないか……。しかしながら頼れる人はその方しかいない、ということでダメもとで連絡してみる。すると、「明日ちょうど脱穀するからその後、機械を使っていいよ」と。奇跡! ありがたい〜。

脱穀中

田んぼでまた新しいつながりが

そうして脱穀の日。お隣さんから急遽お借りしたハーベスタという機械を使って自分たちで脱穀をします。

お隣さんが夫に使い方をレクチャーしてくれました。私にはまったく使い方のわからない代物ですが、夫は養蜂の山仕事で重機になれている。「はい、はい、わかりました」ですぐに始動。やるじゃないか夫! というのはさておき、この日も友人が手伝いにきてくれたおかげでてきぱきと。

さらに子どもたちも一生懸命お手伝いをしてくれました。自分たちも力になりたいと無心に働く子どもたち、その姿になんだかとても感動してしまいました。

無心に働く子どもたち

稲を運ぶ子ども

稲を運ぶ子ども

娘も手伝います

手伝いにきてくれたお隣さん

最後、お隣さんも手伝いにきてくれました。

車につまれた脱穀した稲

15時くらいから始め、終わったのは夕方の17時。あたりが薄暗くなり、ふと見上げると三日月が〜。あぁ、今年の米づくりがすべて終わった……という恍惚感に包まれる。帰宅後、夫とビールで乾杯。「あぁ、格別においしいねぇ」

下田の夜空

翌朝は田んぼの片づけへと出かけました。脱穀したあとの藁を束ねて、自宅に持ち帰って保管する作業が残っているのです。

藁は畑や果樹園をやっている方にとってとても重宝するのだそうで、友人たちにもお裾分けします。冬の寒さをしのぐために作物の回りを覆ったり、そのまま土にかえって肥料にもなる。

わが家は納豆をつくるのに使ったり、正月飾りをつくるのに使うため保管しています(といいながら、昨年は余裕がなくてできなかった……)。

藁苞(わらづと)納豆

一昨年ためしにやってみた藁苞(わらづと)納豆。食べ慣れている市販の納豆よりも発酵の香りが強く粒がかたいという記憶が。昨年はつくれなかったので、今年は必ずや。

ちょうど、お隣さんとその弟さんが藁が足りないから欲しいとのことでお裾分け。ついでに藁を束ねる紐のつくり方や、崩れにくい縛り方なども教えていただきました。さらわが家の分まで手際よく縛ってくれるなど、とても助かってしまった。

稲をおすそ分け

弟さんに「正月飾りは自分でつくれるの?」と聞かれ、まだ不慣れでうまくできませんと答えると「年末に教えてあげるよ」と。

こんな風に、田んぼでつながった人と田んぼで作業しながらまたつながっていく。これって本当にうれしくて楽しいな〜と、とても気持ちのよい朝となりました。

自家用車に藁を詰め込む

わが家は軽トラを所有していないので、普段使用している自家用車に藁を詰め込んで運搬。

脱穀した翌日、お隣さんにお礼を伝えると、「機械なんてどこの田んぼで使ったって一緒だから。自分ができるうちは手伝ってあげたいから」と。

今年もまた予想していなかった展開となった米づくり。農業を営んでいる方々の苦労は計り知れないな〜と頭が下がります。私にとっては、不測の事態によって新たな関係が築けたうれしさもあり、そういうことも含めて米づくりっていいもんだな〜と感じました(甘えてばかりではいけませんが!)。

来年はどんな米づくりになるのか、とても楽しみです。

土鍋で炊いた新米

今年も家族全員で食卓を囲み、新米をいただきました。噛むほどに甘みがあり、上品な香りがふわっと漂う、あぁうんまい。

夕日に輝く稲穂

文 津留崎徹花

text & photograph

Tetsuka Tsurusaki

津留崎徹花

つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。移住先を探した末、伊豆下田で家族3人で暮らし始める。自身のコロカルでの連載『美味しいアルバム』では執筆も担当。