コロナ禍であらためて気づく、伊豆半島の魅力

伊豆半島には魅力的なスポットがたくさんあります。ダイナミックな地形、美しい夕陽――伊豆下田で暮らす津留崎さんでも、まだ知らない場所があり、それらを巡ってあらためて伊豆の魅力を発見したそう。そしてそれは、単に観光地としての魅力ではなく、土地の持つ“豊かさ”だといいます。

伊豆半島の魅力的なスポットを巡る

年明けから自分の暮らす伊豆半島をぐるぐると巡っています。とある仕事で伊豆半島の魅力的なスポットの紹介を担当させていただいたのです。伊豆半島で暮らしているといっても普段行く場所は限られてきます。こういう機会に自分の知らなかった場所を巡ることで、あらためて伊豆の魅力を発見しました。

また、観光地伊豆のコロナ禍においての厳しい現状も実感。この状況がおさまったら、みなさんにぜひ伊豆の魅力を存分に味わってほしいと願い、いくつか紹介します。

龍宮窟

まずは、わがまち下田の誇るスポット「龍宮窟」です。波打ち際のやわらかい地層を波が削って洞窟ができて、洞窟の天井が陥没してこのような地形がつくられました。陥没した穴は直径40メートルほどで、下から覗き見ると自然がつくりだすダイナミックな地形に見とれてしまいます。

田牛サンドスキー場

満開を迎える水仙

龍宮窟のすぐ隣には〈田牛サンドスキー場〉があり、この時期、伊豆半島南部で満開を迎える水仙がとてもきれいに咲いていました。やわらかい火山灰の地層を波が削り、細かな砂となり、それを風が運んでできた天然のサンドスキー場です。

駿河湾に沈む夕陽

伊豆半島の西海岸、西伊豆町の黄金崎から見た、駿河湾に沈む夕陽です。西伊豆町は「夕陽のまち」としても知られていますが、実は今回、初めて西伊豆町で夕陽を拝みました。夕陽がすばらしくきれいなのもよかったのですが、ここもまた地形がダイナミックで……。

馬ロックと呼ばれる奇岩

奇岩百景にも選ばれている通称「馬ロック」と呼ばれる奇岩です。その名の通り馬の形をしていて、どんな地盤の動きや波風による侵食でこの形になったのか? 想像をふくらませてしまいます。

ここは岩肌が夕陽を浴びて黄金色に輝くことで知られているそうですが、このときは黄金色というよりピンクがかっていて何とも幻想的でした。

恋人岬からの夕陽

富士山の眺望

 

こちらもやはり西海岸の伊豆市、恋人岬からの夕陽と富士山の眺望です。西海岸には駿河湾越しに富士山を拝める場所もあります。西の夕陽と北の富士山、両方の絶景を同時に拝めるというのはなんという贅沢でしょうか。

ボードウォーク

岬の先端まで駐車場から少し距離があるのですが、ボードウォークが整備されています。

富士山

さまざまな海産物、農産物も

こうして伊豆半島をぐるぐると巡ってあらためて「観光地としての魅力」だけではなく、「土地が持つ豊かさ」も感じました。

「土地が持つ豊かさ」とは……?例えば「水」です。

伊豆半島は火山でできた半島であり、その山々は険しく海に迫っています。

海でできた雲がその山にぶつかると雨になり、その雨水が地表の土にしみこんだ末に火山活動でできた地層の小さな穴を通り、それが地表に再び出てくると湧水になる。湧水が集まり川になり、土地にさまざまな恵みを与えてくれます。

雄飛滝

伊豆の国市「雄飛滝」。マグマが冷え固まるときに収縮してできる規則正しい亀裂「柱状節理」の間をぬって流れ落ちる滝の様子が印象的でした。

わが家の田んぼ

こちらは、わが家の田んぼの昨年夏の様子ですが、田んぼで米をつくるというのはまさに水が豊富だからできることです。移住先探しの旅をしているとき、某地方で「ここは水が貴重だから移住者が米づくりをするのは難しい」と言われたことがありました。

そして、海産物にも恵まれています。伊豆半島は本州から南に突き出た半島なので、本州の南側を流れる世界屈指の海流、黒潮の恩恵があります。日本一の生産量を誇る下田のキンメダイ。お隣り南伊豆町は全国でも有数の伊勢海老の産地。そのほかにもさまざまな魚がとれ、また海藻も豊富です。

カゴに入って売られている伊勢海老

いまが旬の伊勢海老。伊豆漁業協同組合南伊豆支所では通販にも対応しています。ステイホーム中のお楽しみにいかがでしょうか?

さらには、温暖な気候は柑橘類や柿、枇杷などの生育に適しており、そこらじゅうに実っています。また、春になると山菜やたけのこがニョキニョキと生えてきます。

実った果実

誰の土地かわからないような森にたくさんの果実がなっていることも。(2020年5月撮影)

そして、森には建材として使われるスギやヒノキ、燃料にもなる雑木もたくさん植わっています。

伊豆の森林

平地が少ない伊豆半島はほとんどが「森林」です。

また、火山でできた半島ということで、豊富な水が地熱によって温められた温泉もあちらこちらに湧いています。

黄金の湯

伊豆の国市「黄金の湯」。伊豆といえば温泉をイメージする方も多いかもしれません。それほどあちらこちらに温泉が湧いています。温泉が湧く地域は再生可能エネルギーのひとつ、地熱発電のポテンシャルを秘めているのです。

新型コロナウイルスで変わりつつある社会

つまり……。「水」に恵まれていて、海のもの山のもの、食材も豊富。建材にも燃料にもなる木も豊富で、おまけに温泉も湧いている。

今回あらめて巡って感じた「観光地としての魅力」だけではない「土地が持つ豊かさ」とは、こうした、いわば「そこに暮らす命を支える豊かさ」なのです。

ただ、現代社会に生きる我々にとっては、水が湧いていようが、枇杷がなっていようが、経済がまわっていないことにはどうしょうもないという面もあるのでしょう。

確かにそうです。現に、観光地伊豆はコロナ禍にあって「観光業」という経済活動が止まり、非常に厳しい状況に立たされています。

下田の海に沈む夕日

伊豆を訪れる方の多くは緊急事態宣言が発令されている1都3県から、ということもあり、今回巡ったスポットの多くは人がまばら。施設の方は先の見えない状況に頭を悩ませていました。閉鎖している施設もあったり……。本当に厳しい状況です。

そんなコロナ禍で、密を避ける、テレワークの普及などの要因もあり、東京から地方へ、多くの方が移住し始めているそうです。ワーケーションという、仕事をしながらバケーションを楽しむ、そんな働き方も注目を集めています。

現に、わが家が暮らす下田もコロナ禍で移住者が増えましたし、ワーケーションで滞在する方も多くなりました。まさに、「コロナパンデミック」によって社会が変わりつつあることを実感しています。

伊豆半島

そんないまだからこそ、少なくとも伊豆半島のような地方においては「観光地としての魅力」だけでなく、土地が持つ「そこに暮らす命を支える豊かさ」を持っているということが大きな強みになるのではないか?

観光地としての魅力や、その観光業の厳しい状況、そして、その土地が持つ豊かさをあらためて目の当たりにしたいま、そう感じます。

自宅近くの浜で行われたどんど焼き

先日、自宅近くの浜でその年の豊作や無病息災を願い行われる「どんど焼き」が行われました。神聖な火による浄化の力で、集落の人々の1年間の災いを払うという意味もあるそうです。この列島では自然界のあらゆるモノに神が宿る、と考えて尊んでいました。自然を尊ぶ気持ち、大切にしていきたいです。

この状況が落ち着いて伊豆を訪れる際にはぜひ、「観光地としての魅力」だけでなく、「そこに暮らす命を支える豊かさ」も感じていただけたらうれしく思います。

文 津留崎鎮生

text & photograph

Shizuo Tsurusaki

津留崎鎮生

つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram