撮影:​​石川武志

写真家が見つめた「MINAMATA」

熊本県南部の津奈木町に、2001年に誕生した〈つなぎ美術館〉は、今年で開館20周年を迎えます。

現在、つなぎ美術館では20周年を記念したさまざまなアート・プログラムを開催中。

そのひとつである『ユージン・スミスとアイリーン・スミスが見たMINAMATA』展は、1970年代に水俣病を取材し、世界に伝えた米国人写真家であるユージン・スミスと活動を共にしたアイリーン・スミスによる、当時の日常をとらえた貴重な写真を一挙に公開する展示会です。

本展フライヤー

本展フライヤー

津奈木町は水俣市と隣接した人口約4500人の町で、かつて多くの町民が水俣病の被害を受けました。

その歴史的背景から、津奈木町では1980代よりアートによる「癒しと再生」を目指して、地域住民とともにさまざまな文化活動を重ねてきたのです。

Photo by W. Eugene Smith (c) ️ Aileen Mioko Smith

Photo by Aileen M. Smith (c) ️ Aileen Mioko Smith

Photo by W. Eugene Smith (c) ️ Aileen Mioko Smith

Photo by Aileen M. Smith (c) ️ Aileen Mioko Smith

Photo by Aileen M. Smith (c) ️ Aileen Mioko Smith

 

ユージン・スミスとアイリーン・スミスは、1971年から3年間水俣市に居を構え、水俣病を取材し多くの写真を撮影しました。1975年にアメリカで出版した写真集『MINAMATA』は世界で大きな反響を呼び、水俣病が世界的にも知られることとなったのです。

本展では、アリゾナ大学クリエイティブ写真センター(Center for Creative Photography)などの協力を得て、写真集『MINAMATA』に収められた写真をはじめ、アイリーン・スミス監修のもと新たにプリントした初公開の写真も展示されているとのこと。

今秋、ジョニー・デップ主演の映画『MINAMATA-ミナマタ-』も公開予定ということで、再び水俣に注目が集まっています。

会期中は、アイリーン・スミスらが出演するトークセッションを収録、アーカイブ配信されるとのことでこちらも注目です。

■アーカイブ配信トークセッション「 MINAMATAはどういきるのか」日時:つなぎ美術館HPで近日公開予定出演:アイリーン・美緒子・スミス(写真家/環境ジャーナリスト)川延安直(福島県立博物館副館長)原田利恵(国立水俣病総合研究センター研究員)モデレーター 楠本智郎(つなぎ美術館 主幹・学芸員)

ふたりの写真家が目を背けず向き合い、残した光景ーー。

近代資本主義の経済的偏重がもたらした災禍といえる水俣病。さまざまな立場の人が自身との関わり方を模索し、個人や地域、社会の未来を考え、思考を深める機会になるのではないでしょうか?

10年以上続く住民参加型のアート・プログラム

現代美術作家・柳幸典による〈石霊の森(いしだまのもり)〉。

津奈木町が2019年より招聘している現代美術作家・柳幸典による『柳幸典つなぎプロジェクト成果展 2021 Beyond the Epilogue』も同時開催中です。

世界に水俣病の現実を知らしめた作家・石牟礼道子の文学に着想を得て制作された〈石霊の森(いしだまのもり)〉 、そして10月下旬には廃校プールを改修した〈入魂の宿〉も発表予定と、大規模な屋外作品が続々登場します。

柳幸典が地域との対話を重ねてきた3年間のプロセスをたどる『柳幸典つなぎプロジェクト2019-2021』とあわせてぜひご覧ください。

また、今回のユージン・スミスらの写真展は柳氏によって発案されたといいます。水俣病の被害を受けた津奈木町で、その災禍を世界に知らしめるきっかけとなったユージン・スミスや石牟礼道子にまつわる作品を新たに発表することで、地域に再びMINAMATAを考える機会を生み出すことを目指します。

アーティストと町、美術館が連動し、地域住民へと伝えていくーー。

未来へつなげようとする、深く強い想いを感じずにはいられません。

『海渡り』の準備をする様子。

『海渡り』の準備をする様子。

その他にも、アーティスト五十嵐靖晃による陸と無人島を赤い糸でつなぐ『海渡り』、日本画家・大平由香理によるアート体験ツアーも実施されます。

体験ツアーは現地の石や砂でオリジナルの岩絵具をつくり津奈木町の風景を描くなど、九州のトラベル・デザイン・ファームの〈UNAラボラトリーズ〉が手がけます。

詳しくはこちらのつなぎ美術館HP、体験ツアーはこちらをご覧ください。(ツアーの詳細は近日公開予定)

住民と企画段階から一緒につくる、住民参加型のアート・プログラムを10年以上続けているつなぎ美術館。アートだからこそできる、地元に根づいた交流が生まれています。

アート体験ツアー

アート体験ツアーの様子。

社会実装、赤崎水曜日郵便局

社会実装、赤崎水曜日郵便局。

決して忘れてはならない、その土地の歴史と背景。そしてそこで暮らしてきた人々の輝きを、アートを通して再び見つめることができるかもしれません。

20周年を迎えたつなぎ美術館に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

information

つなぎ美術館

Web:つなぎ美術館 TSUNAGI ART MUSIUM

ユージン・スミスとアイリーン・スミスが見たMINAMATA 展

期間:2021年9月11日(土)〜11月23日(火・祝)

会場:つなぎ美術館1階展示室 (熊本県葦北郡津奈木町岩城494)

時間:10:00 〜 17:00(展覧会入場は16:30まで)

観覧料:一般300円(250円)/高校・大学生200円(150円)/小・中学生100円(50円)※()内は20名以上の団体料金

※水俣市・葦北郡内の学校による利用は申請により無料

※津奈木町在住または津奈木町の学校に在籍する小・中学生は無料

 

柳幸典つなぎプロジェクト成果展2021 Beyond the Epilogue

期間:2021年9月11日(土)〜11月23日(火・祝)

会場:〈石霊の森〉津奈木町役場付近

時間:10:00 〜 17:00(鑑賞タイマー作動時間)

観覧料:無料

 

柳幸典つなぎプロジェクト2019-2021

期間:2021年9月11日(土)〜11月23日(火・祝)

会場:つなぎ美術館3階展示室 (熊本県葦北郡津奈木町岩城494)

時間:10:00 〜 17:00(展覧会入場は16:30まで)

観覧料:無料

 

屋外展示『海渡り』

期間:2021年10月11日(月)〜10月29日(金)

会場: 旧赤崎小学校付近(熊本県葦北郡津奈木町福浜165)

観覧料:無料

 

日本画家・大平由香理によるアート体験ツアー

Web:体験ツアーはこちらツアーの詳細は近日公開予定)

*価格はすべて税込です。

writer profile

Mayo Hayashi

林 真世

はやし・まよ●福岡県出身。木工デザインや保育職、飲食関係などさまざまな職種を経験し、現在はフリーランスのライターとして活動中。東京から福岡へ帰郷し九州の魅力を発信したいとおもしろい人やモノを探しては、気づくとコーヒーブレイクばかりしている好奇心旺盛な1984年生まれ。実家で暮らす祖母との会話がなによりの栄養源。