ここ数年、冬のアクティビティとして楽しみにしていることがあります。小豆島の遍路道をトレッキングすること!
「お遍路」といえば四国が有名だと思いますが、小豆島にも八十八か所の霊場(お寺や庵など)があり、その霊場をまわる遍路道があります。昔と比べたらお遍路する人の数はぐっと減ってしまったと思いますが、今でも白衣(はくえ)を着て菅笠(すげがさ)をかぶり、金剛杖(こんごうつえ)を持って歩いているお遍路さんの姿を時々見かけます。
お遍路の案内表示。前の札所、次の札所と遍路道を歩いて巡礼します。
意識して歩いていると、遍路道の案内表示は小豆島のいたるところにあります。こういう案内表示をたよりに歩いていきます。
2020年の春、新型コロナウィルス感染症が広がり始め、子どもたちの学校が休みになり、遠出しにくくなり、大人数で集まれなくなってしまったときに、私たちは静かに歩き始めました。小豆島には遍路道というすばらしいトレイル(歩く道)がある。そこを歩いてみようと。歩き始めたときのことは、小豆島日記vol.268「小豆島ハイキング! 景色を楽しみながら遍路道を歩く」に書いているのでぜひ読んでみてください。どうやって歩き始めたらいいかなど、まとめてあります。
「第56番 行者堂」付近の遍路道。瀬戸内海がよく見渡せます。
「第88番 楠霊庵」から「第12番 岡ノ坊」へ続く山の中の遍路道。
小豆島の遍路道は全行程で約150キロ、どれくらいで歩き終えられるかわからないまま、少しずつ時間があるときに歩き続けて、この冬で4年目。つい先日も1日で10キロほど歩いて、これで96キロ歩き終えました。全体の3分の2ほど歩いたことになります。
iPhoneのアプリを使って記録した、歩いてきた軌跡です。だいぶ道がつながってきました。
歩く人がいるからこそ守られる道小豆島に「遍路道」という歩く道があるというのは、すごい価値だなといつも思います。今年で生誕1250年となる弘法大師(空海)さんが修行した八十八の霊場をたどる巡礼の道で、すべての札所を巡拝することで願いが叶ったり、弘法大師の功徳を得られたりするといわれています。
スペインには巡礼の道があったり、アメリカやカナダにはロングトレイル文化があったり、昔から世界中に歩く旅の文化があります。日本のお遍路もまさにそういう歩く旅の文化のひとつ。ずっと昔から小豆島にはその道と、その道を歩く人たちがいて、歩く人たちを迎える「おせったい」という文化があるんです。なくしたくない、すばらしい文化だと思います。
納札(おさめふだ)。各霊場を参拝したときにこの紙札を納めます。裏側には願いごとを書くことも。このときは体調が悪かった愛犬の健康を祈願。
トレッキング用の靴。滑りやすい急な山道を歩くこともあるので、歩きやすくて滑りにくい靴がおすすめです。
お遍路というと、年配の方がされるもの、宗教的なものというイメージが強くて、私たち世代にとっては自分には関係のない遠い存在のような気がしてしまいますが、ぜひ一度歩いてみてほしいです。最近は歩く人が減り、道を管理する人も減り、山のなかの道は木が倒れていたり草が茂っていたり、荒れてしまっているところもあります。私たちが歩いていても、ここってほんとに道? 間違ってる? って思うことがあります。草をかき分けて、進んでいくことも。歩く人が減れば、どんどんそんなところが増えていってしまいそうです。
道なき道。草をかき分けて歩くことも。
車からは見えない小豆島の風景信仰の目的で歩く人、健康のために歩く人、ただ歩くことを楽しむ人、いろんな人がいていいと思います。とにかく歩く人がいることで、道がなくならない、そしてお遍路という文化が続いていくといいなと。
歩いていると、小豆島で10年暮らしていても知らなかった風景や人々の営みに出会うことがあります。きれいに手入れされた畑があったり、細い道の先に海が見えたり。島で暮らしていると車での移動が多くなり、移動途中の道沿いのことはほとんど知らない。それが歩くことで見えてくる。今まで点々としていた小豆島の風景がどんどんつながって広がっていく感じがとても楽しい。
3月に歩いたとき、遍路道沿いに見つけた見事なミモザの木。季節の植物や花を楽しめるのもお遍路の醍醐味のひとつ。
忘れてはいけない! おにぎり。バックパックの中にはいつもおにぎりをしのばせています(食べかけ写真でごめんなさい)。
さぁ、だいぶ歩きたくなってきましたね。歩くためには地図がいります。小豆島おへんろ道案内図、小豆島歩き遍路地図・日英併記版あたりがおすすめです。それとスマホをお持ちの方は、最近は山歩きのルートやジョギングのルートなどを記録できるアプリがたくさんあるので、歩いた軌跡を記録しておくことをおすすめします。歩き続けるモチベーションにつながるので。
島で暮らしている人も、島に遊びに来る人も、小豆島の遍路道を歩こう!知らなかった小豆島の魅力を発見できること間違いなしです。
遍路道!
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島のなかでもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。https://homemakers.jp/