アイボリィアーキテクチュアの原崎です。前回に続き、ぼくたちがふだん活動している、横浜で関わらせていただくことになったオフィス計画、そして神奈川県西部の山北町に伺い、現地の林業についてお話させていただきます。

カーペットが敷かれた無機質なオフィステナントの改装のため、材料に間伐材を活用することになり、さらに山北町森林組合のみなさんのご協力のもと実際に山へ入り、間伐作業を体験させていただいたのが前回までのお話。今度はその間伐した丸太をもって森林組合のご紹介で近くにある製材所に持ち込み、製材をお願いすることになりました。

ぼくらの知っている“木材”のできるまで

ここは山北町の隣、南足柄市にある製材所〈木材工房あしがら〉。

この大きな木造の倉庫は、製材した木材を乾燥させるための乾燥機です。その手前には、乾燥の終わったものとこれから乾燥させるものがあります。丸太から四角に切り出したばかりの木材は水分が多く強度が不十分でそのままでは使うことはできないので、このなかで木を2週間ほど寝かせて、じっくりと乾燥させます。

乾燥機にて乾燥中の木材。

続いて木材の加工場へ。大きな丸太をタテに転がして、大きな機械式のこぎりでカットしていく、製材作業のメインといえます。こののこぎりは帯鋸といって、丸太もズバズバ切れる機械なので、安全に、かつ慎重に作業が進められています。

丸太をかかえて帯鋸で切っているのは、〈木材工房あしがら〉の代表、小髙誠仁さん。

ぼくらもなにかお手伝いできることはないか、ということで、機械を使うのではなく手作業の工程をやらせていただくことになりました。それは“桟積み(さんづみ)”というもので、のこぎりで切り出された木材を先ほどの乾燥機に入れて乾燥させるために、木材1本1本の間隔を空けて桟と木材を交互に積み上げていきます。

桟と交互に木材を敷いていき、

まず一段できました。これを繰り返して、最終的にはここまで積み上がりました。

この真ん中に積み上がった木材が、このあとの乾燥と仕上げを経て横浜までやってきます。

「山北材」到着! 早速組み立て

そしてついに、横浜に木材が到着です!こちらで指定した寸法通りの厚み、長さに切り揃えられた木材が、オフィス内に積み上がりました。

山北材の後ろに見えるのは、山北での製材作業と並行して、横浜のオフィス現場内で組み立てていた既製品のスチールラックです。大きさは1ユニットあたり1畳サイズ。以前の木造架構で間取りをつくる案から、間取りに可変性をもたせるというアイデアはそのままに、コストメリットはもちろん、組み立てやすさ、木材よりも丈夫なスチール製ということで、これを採用しました。

また、それぞれをフレキシブルに組み替えできるので、シェアオフィスという用途に対してもぴったり。これからラックをオフィスの奥から順にレイアウトして、木材と合わせて組み上げていきます。

スチールラックの位置を調整して、

ラックのかたちに合わせて製材された間伐材をはめていき、

一気に組み上がりました!これを繰り返して、2〜3畳ほどのユニットを10個組み立てていきます。

地域と都心をつなぐオフィス

材料づくりから始まったオフィス内装計画。ついにすべてのユニットが完成しました。

ユニット同士は適度に離れつつ、お互いの気配を感じられるものになっています。間伐材と組み合わせて、DIYでつくられた有孔ボードパネルや黒板パネルも取り付けられました。これらはスチールラックにネジ止めせず、はめ込んでいるだけなので、入居者が自由に組み替えられます。ユニットに使われている間伐材は塗装などはせず無加工のまま。それは、現在の水源林の状況を伝える木工材料として、2次利用ができるようにしているからです。

小屋型につくられたユニット内は、ふたりで使うことを想定したもので、対面式にも、背中合わせにも組み替えられるようになっています。この屋根材も、工具なしで取り外し可能です。

オフィス内のラウンジスペースです。奥の棚は間伐材のストックになっています。入居者はここから木材を取り出し、自分の好みでユニットの改装もすることができる仕組みになっています。オフィス空間すべてが間伐材のストックとして機能していて、山北町と横浜、地域と都心、それぞれが素材を通してつながっています。

ぼくらが内装を手がけたこのオフィスでは、入居者も徐々に増え、現在はほぼ満室となっています。このオフィスデザインに共感していただいて、木材やパーツを交換や追加をしてユニットを使い倒してくれています。

これからもさまざまな人の手によって、変化、成長をしていくこのオフィスの未来に、ぼくらも継続して関わっていくつもりです。

間伐材+αをつくる

間伐材と、既製品の組み合わせはこれにとどまりません。まず、オフィスのユニットと同じ仕組みで、キャスターを追加して動く屋台をつくりました。

これは、平日昼にはお弁当販売とコーヒースタンドとして活用され、イベント時にはレイアウトを変えてハイテーブルや展示台などになり、ときには屋外にも出張しています。この屋台は積極的にまちに出て、地域のことを発信する、“ローカルファーストワゴン”といいます。

また、ワゴンを囲んでやったイベントのなかでも盛り上がったのが、間伐材を使った、DIYワークショップ。

山北で知った森のこと、都心と地域とのつながりを、オフィスにある間伐材のストックを活用してよりたくさんの方に知っていただきたいと、始まりました。

初回に行ったのはカッティングボードづくり。僕らの事務所のある、旧劇場で一緒の、大工の〈LIU KOBO〉劉功眞くんにも協力してもらい、参加者の皆さんがそれぞれかたちを考え、木を選び、カットして穴を空けて、丁寧に時間をかけてヤスリがけして完成!

続いて2回目は、僕らがベースをデザインをした、重ねて使える収納ボックスをつくりました。オフィスやワゴンと同じコンセプトでできればよいと思ったので、これもすでに世の中にあるスチールパーツを木と組み合わせてボルトナットで留めただけの、簡単なつくりにしました。もちろん解体するのも楽ちん!

ワゴンのなかにつくったボックスをレイアウトして、地域の野菜のディスプレイにしてみました。また、後ろのワゴンには、テント屋根を張っています。この日は、屋外に向けての出張準備中。

オフィスと同じく、もともとのインテリアに手を出すことなく、動くもの、カスタマイズできるものなどを少しずつ増やしていくことでも空間の印象は変えることが実感できました。そしていろんな人の考えや技術が重なり、かたちとなって表れ、デザインやそのコンセプトを共有する方法になり得ると感じています。

これは以前にmass×massから飛び出し、横浜駅近くにある〈横浜ベイクォーター〉のイベントに出店したときの様子です。このときは初回ワークショップでつくったカッティングボードをディスプレイしました。まだまだ少しずつですが、まちに出てワゴンそのものが存在感をアピールしていくことで、まちで出会った方々にも山北町や森林や水源のことに少しでも意識を向けてもらえるようになればいいと考えています。

前後編にわたってお伝えしましたこの一連のプロジェクト。はじめのオフィス内装を検討しているころは、山に行ったり屋台をつくったりワークショップしたりなど、このような展開は全く予想していませんでした。ですが、ただ面構えだけをよくするような、イメージが限定されて使い捨てられてしまうようなデザインではなく、いま目の前にはない場所や環境、状況に思いや考えを巡らせ、それをさまざまな人と共有できるものをつくりあげることの価値に改めて気づかされました。

次回は最終回にしてようやくリノベらしいリノベともいえる、木賃風呂無し平屋アパートを再生させるプロジェクトをご紹介します!これはぼくらアイボリィアーキテクチュア設立のきっかけであり、なんと3年越しのプロジェクトですが、いま現在リアルタイムで工事現場も進行中。お楽しみに。

writer profile

IVolli architecture

アイボリィアーキテクチュア

永田賢一郎と原﨑寛明による建築ユニット。2013年より横浜を拠点に活動開始。建築設計をはじめ、インテリアやプロダクトのデザインからプロジェクトデザイン、インスタレーションなど建築にまつわる様々な活動に取り組んでいる。 永田賢一郎(ながた・けんいちろう):1983年東京都出身 横浜国立大学大学院/建築都市スクールY-GSA修了 KUUを経て2013年より活動開始。原﨑寛明:(はらさき・ひろあき)1984年神奈川県出身 横浜国立大学工学部建設学科卒業 オンデザインパートナーズを経て2013年より活動開始。http://ivolli.jp/

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メイン写真:加藤甫