地域とつながる駅前拠点に

岩手県一関市で、地域の若手経営者が観光と物産の新しい動きをつくるべく、設立されたのが、〈一般社団法人 一関平泉イン・アウトバンド推進協議会〉(以下IOB)。同法人の拠点として、2017年7月1日に〈一BA〉(いちば)がJR一ノ関駅前にオープンした。

コワーキング・スペース兼ワークショップ・スペース〈co-ba ichinoseki〉、地元産商品を扱うショップ、観光案内所などの機能を持つこの場所は、活気のある「市場」のような場所になることを目的としている。

2017年1月、さまざまな思いを乗せて始まった拠点づくり。元薬局だった古い店舗ビルがどのように生まれ変わっていったのか。前回(記事はコチラから)は設立までの経緯を追ったが、連載2回目の今回は、DIY感満載の一BAのリノベーションの様子をレポートする。

まだ内装途中の一BAに集合したワークショップ参加者たち。路面に面した入り口の窓ガラスがないため、ひっきりなしにまち行く人に声をかけられる。かえってよいPRになり、一石二鳥。

嵐のようなスピード感で進んだIOBの立ち上げと並行して進められたのが、駅前拠点の物件探しだった。

「一関・平泉観光の玄関口、一ノ関駅から近いこと」

「コワーキング&ワークショップ・スペースを確保できること」

「宿泊施設として利用できること」

というシンプルな条件で、まずは物件探し。さすがはまちに根ざす老舗の経営者たち、すぐに候補地は見つかった。駅から徒歩1分以内。1階は約58平米のワンフロアと、2階にリフォーム済みの住居スペースを併せ持つ、2階建ての元薬局の古いビルだ。

ユニークなもち文化が根づく一関ではあるが、「餅は餅屋で」もとい「設計は設計屋で」と、岩手県花巻市をベースに活動する建築デザイナーの有原寿典さんに依頼した。有原さんは、〈トラフ建築設計事務所〉などを経て、地元岩手県に2016年Uターン。再オープンして話題になった花巻市のマルカンビル1階テナントの空間デザインも手がけている。

有原さんは、トラフ時代には〈NIKE〉や〈FREITAG〉などのショップデザインを中心に手がけてきた。有原設計室 http://www.ariharadesign.com/

コンパクトな空間を、最大限に生かすには

一BAの改修について、2017年3月末日に依頼を受けて、4月末には設計をフィックスするというタイトなスケジュールにもかかわらず、「地方で『宿泊兼シェアオフィス』なんて物件はなかなかないので、すぐに引き受けさせてもらいました」と有原さん。

「スタート時点で物件が既に決まっていたし、シェアオフィスで10席程度、観光案内のための常駐用カウンター、ワークショップ・スペースの確保など、用途もしっかりと決まっていたので、とてもやりやすかったですね」

理事のメンバーのひとり、京屋染物店の技術を生かし、パーテーションなどに布を使う、看板代わりに暖簾を使うなど、すぐにアイデアがふくらんでいったそうだ。

一BAの理事である京屋染物店の蜂谷淳平さんが手づくりした暖簾を、看板やパーテーションにと効果的に利用した。

地方では、設計と施工がイコールになっていることが多いので、有原さんのように専門で設計を行ってきた人材は貴重だ。空間設計だけでなく、予算や材料、機能性を鑑みつつ、インテリアのデザインまで手がけてくれた。

「ややコンパクトな物件なので、デスクなどはすべて折りたたんで倉庫にしまえるようにした」と有原さん。上映会などのイベントやワークショップ開催時には、すべてのデスクを折りたたんで収納し、全スペースを使用することができる。材料は、小友木材店の平野裕幸さんの協力のもと、岩手県産材が使用されている。

空間と、コミュニティもDIY!?

内装工事も終盤に差しかかった6月2日。その折りたたみ式のデスクをDIYでつくるワークショップが開催された。有原さんと小友木材店の材木博士・平野裕幸さんを講師に、Facebookでの告知だけながら、地域活性に興味を持つ面々が20名ほど、一関市内外から集まった。

IOBの理事と共に汗を流すこと丸1日。カーペンタースの音楽のようにはスムーズにいかない、思いがけずの重労働にもかかわらず、この日の予定数を無事クリア。

このワークショップは、施工コストを抑えるためという理由もあるが、デスクだけでなく、共に一BAを盛り上げるコミュニティをDIYすることが裏テーマ。

市内外で地域活性に取り組む参加者が多く、作業中、IOBの活動内容について尋ねながら、それぞれの一BAの活用方法や可能性を話し合っていた。

ひときわ興味津々に理事と話し込んでいたのが、〈いわて県南アートプロジェクト〉の阿部賢太郎さんと、〈一関を面白く企む会〉代表で、一関市地域おこし協力隊の櫻井 陽さん。ふたりとも一関・平泉エリアで地域活性イベントを企画する20代で、「平泉を中心に国際交流と文化芸術交流を企画しているので、具体的にどう絡めるのか考えていきたいです。駅前に拠点があると、市外からのお客さんを交えたイベントを企画できるから楽しみ」と話す阿部さん。

まちの先輩たちからの強いプレッシャーが効いたのか(!)、櫻井さんと共に、現在コワーキング・スペースの契約についても検討中だ。

この日はまだ窓ガラスが入っていない状態だったので、前を通りかかった近所の食堂のおばちゃんや道行く人々など、さまざまな方が顔を出し、地元からの関心の高さが垣間見える。

いろいろな魅力が交わる場所として

どこからともなく人が集い、にぎわい、交流とアイデアが生まれていく。ワークショップは一BAの名前の由来通りの状況だったが、ロゴマークもそんな状況をイメージしてデザインされている。

「カタマリに見えること。ヨコになったり、ひっくり返ったり、いろんな風に組み合わさって、パターンとして使えるようにデザインしました」と、ロゴデザインを手がけたクリエイティブディレクターの金谷克己さんは振り返る。

「一BAは交流拠点としてさまざまな個性が集まり、働いたりワークショップをしたり、泊まったり、使う人次第で顔が変わる、多様性ある場所になっていってほしい」そんな彼の意図が、デザインからも伝わってくる。

岩手県西和賀町「ユキノチカラ」ブランドのグラフィックデザインや、盛岡の複合商業施設〈十三日〉(とみか)のプロジェクトなどで活躍中の金谷さんは、実は一関出身。

「なぜかこれまで地元と関わる仕事に縁がなかった。これを機に、一関を楽しくする仕事をもっとしていきたいですね」

ロゴづくりに、リノベーション、DIYワークショップ。ハードづくりを通じて一BAのイメージが具現化されていくにつれて、そこに集う人、コンテンツなどのソフトもイメージがどんどんふくらんでいく。

与えられたことをやるのではなく、やるべきことを自分でつくり出していく。本来の意味でのDIY精神を持つ人がその制作に関わる一BAから、どんなコンテンツやコミュニティがこれからかたちづくられていくのか。お楽しみに。

information

一BA(いちば) 

住所:岩手県一関市上大槻街1-5

TEL:0191-48-3838

営業時間:9:30〜18:30

定休日:土曜日・月曜日

https://www.facebook.com/ichiba.tohoku/

photographer profile

Kohei Shikama

志鎌康平

山形県生まれ。写真家小林紀晴氏のアシスタントを経て、山形へ帰郷。東京と山形に拠点を設けながら、日本全国の人、土地、食、文化を撮影することをライフワークとしています。山を駆け、湖でカヌーをし、4歳の娘と遊ぶのが楽しみ。山形ビエンナーレ公式フォトグラファー。http://www.shikamakohei.com/

writer profile

Kei Sato

佐藤 啓(射的)

ライフスタイル誌『ecocolo』などの編集長を務めた後、心身ともに疲れ果てフリーランスの編集者/ライターに。田舎で昼寝すること、スキップすることで心癒される、初老の小さなおっさんです。現在は世界スキップ連盟会長として場所を選ばずスキップ中。https://m.facebook.com/InternatinalSkipFederation/