和菓子屋さんの多いまち・京都。季節を映したはんなりとした姿が特徴の京菓子ですが、なかでもとびきり色にこだわった和菓子を生み出すのが、「京菓子司 末富(すえとみ)」です。今回は、京都・室町の地で130年ほど続く、京菓子の老舗を訪ねてみました。

京菓子の名店をルーツにもつ

「末富」は地下鉄・五条駅から徒歩5分、烏丸松原を西に進んだ先、室町通の手前に位置します。どっしりとした間口の広い玄関には、「末富」の象徴でもある檜扇がデザインされたのれんが掛かっています。

この檜扇は同じく京都にある老舗和菓子店「亀末廣(かめすえひろ)」にルーツがあるもの。元々「末富」は「亀屋末富」として、御所や武家、茶人を相手に商いをしてきた「亀末廣」から、屋号をもらうかたちで誕生しました。「亀末廣」でも使われている檜扇の意匠は「末富」の原点とも言える存在なのです。

のれんをくぐりお店に入れば、ずらりと並ぶ和菓子が迎えてくれます。華やかな季節の上生菓子からおみやげや贈答品にぴったりな日持ちのするものまで、幅広くそろいます。どんな用途にも応えてくれるのは老舗ならでは。

「末廣」の3つのこだわり

こだわりは、機械に頼らず手づくりで生み出すこと。末富では、職人の手によってつくることで生まれるお菓子の微妙なかたちの違いが、侘びさびの精神に繋がると考えています。さらに時代が移り変わっても創業当時からの原材料を、できるだけ変わらず守り続けています。
そして、色を大切にすることも「末富」のこだわりのひとつ。京都には、平安のころより「重ね色目」の文化があり、色の組み合わせによって季節を表現してきました。かつて宮中では、衣の表裏の色を組み合わせ色目で四季を楽しんできたのです。その組み合わせは数百にも及び、例えば梅を表現する色目だけでも10種程度もあるのだとか。

そんな「重ね色目」を小さな麩焼きせんべいで表現したのが、「京ふうせん」です。麩焼き煎餅をふうせんに見立て、基本の色目五色「赤・白・青・緑・黄」の砂糖で京の色目を表しています。はんなりやさしい色合いとふんわりとした食感は、その名の通り愛らしいふうせんを思い起こさせます。

「創業当時」を大切にしながらも、積極的に新しい和菓子作りを続ける

パッケージともに、新しくリニューアルしたばかりなのがどら焼き。粒あん・こしあん・黒糖の全3種で、「京の華扇」と名づけられました。黒糖はあんではなく、生地に練り込まれているのが特徴です。テトラ型のパッケージは、洗練された青色が印象的。これは、戦後に日本画の池田遥邨と末富の2代目主人が色味にこだわって作った歴史ある包装紙をモチーフにしたもので、その色の美しさから時代を越えて「末富ブルー」と呼ばれ愛されてきました。

そして、近年では話題のスポットとのコラボレーションも積極的に行なっています。
京都・岡崎にある「細見美術館」とのタイアップで生まれたのが、「若冲墨画」。細見美術館が所蔵する京都の画家・伊藤若冲のユーモラスな作品をモチーフに、軽やかな麩焼き煎餅に描いたお菓子です。煎餅には、白砂糖と黒砂糖の2色の砂糖を引いているので、絵柄のユニークさと合わせて、甘みの違いのおもしろさも楽しめます。

フランスのチョコレートの名店・ジャン=ポール・エヴァンとのコラボレーションや、パリで和菓子づくり教室を行うなど、日本のみならず海外への発信も続ける「末富」。老舗の新たな動きにこれからも目が離せません。