岐阜県の中央部に位置する山里の城下町、郡上八幡。夏は郡上踊りで賑わう街を歩くと、昔ながらの町家が数多く残っています。そんな歴史ある町家に滞在できる一棟貸しのホテルを今回はご紹介します。インテリアやアメニティ、お茶菓子に至るまで、置かれているのは地元の作家や職人による品々。郡上の魅力を発信したいという思いが込められたホテルです。

花街だった名残を感じる町家をリノベーション

郡上八幡の市街地に残る古い町家をリノベーションして作り上げた、街並みに溶け込んだホテル「Art&Hotel 木ノ離(キノリ)」。建物に足を踏み入れると、建具やガラス戸など、今となっては貴重となった昭和初期の意匠が残っています。

「花街の建物なので、手の込んだ装飾の建具、独特の間取りをしていました。そんな面白い建物を活かしながら活用する方法はと考えたときに思いついたのが宿泊施設でした」というのは郡上の町家再生を数多く手掛けている設計事務所「スタジオ伝伝」代表の藤沢さん。

1Fのショップには木ノ離のスタッフの方々がセレクトした藍染、木工、焼物など、郡上や岐阜の風土や伝統を感じられる作品が並んでいます。さらに地元の作家や職人とコラボして作り上げた木ノ離でしか買えないオリジナル商品も。18時までは宿泊者でなくても気軽に立ち寄ることができるようになっています。

まるで美術館に泊まっているような気分に

「木ノ離」をもうひとつ特別なものにしているのが、古い建物ならではの壁や間取りを活かして展示されたアート作品。アートホテルというテーマも掲げていて、美濃加茂市を拠点にするアートディレクター「Studio Riverbed」をキュレーターに迎え、アーティストの作品を髄所に展示しています。

「絵画やオブジェのほか、郡上を流れる川をイメージした、インスタレーションも。この空間を活かして作り上げた作品です。アートを目的に、何度も宿泊してもらえるよう、定期的に作品は入れ替えています」といいます。

郡上を感じる調度品におもてなしの心を添えて

さまざまなアメニティも郡上を感じてもらえるよう、ひとつひとつ選び抜いたものばかり。寝室には肌触りのよい木綿のルームウエアが置かれていますが、こちらは石徹白(いとしろ)地区で受け継がれていた昔ながらの直線裁ちの服をアレンジし、服作りをする「石徹白洋品店」のもの。オーガニックコットンを使用したルームウエアは、ふんわり包み込まれるような着心地ですよ。

ほかにも、土間には檜の下駄が置かれていますが、こちらも郡上産の木材が使用されているそう。郡上で下駄作りをする「郡上木履」にホテル用の履物として特別に作ってもらったもので、地元の鹿革も使い、自然素材の心地よさを感じられる下駄となっています。

朝食には地元レストランの特別な料理を楽しんで

朝食は1階の宿泊者用のキッチン&ダイニングスペースでゆったりと。郡上の左官職人により仕上げられたという、滑らかな曲線フォルムをしたキッチンカウンターが印象的な空間です。キッチンツールもすべてそろっていて、ドリッパーやカップなどもあるので、コーヒーを飲んだり、買ってきた食材で料理を作ったり。思い思いの時間を過ごすことができます。

郡上メイドに触れて、使って。旅がさらに深まる

ウェルカムドリンク&お菓子には、地元で人気のフランス菓子店「プチ パリ」のカヌレと「田中茶舗」の郡上ほうじ茶。こちらも藤沢さんが「とても美味しいんです」と郡上の名物として自信を持っておすすめする品です。カヌレは毎回宿泊者のために焼き立てを届けてもらっているとか。

「この土地の自然や風土に惹かれ移住した人や帰ってきた人が、新しいことをしていたり、伝統を受け継ごうとしていたり。郡上はもともと個性溢れる人が多く、とても面白い場所ですよ」という藤沢さん。自身もこの土地の魅力に惹かれ移住してきた人のひとり。郡上で懸命にモノ作りをする人々と出会い、このホテルを作り上げました。