川越の観光の中心地・蔵造りの町並みのすぐ先にある「bero弁天長屋」。小さな店内にはロートアイアンと呼ばれる鉄加工の技術で生み出される手づくりの家具や雑貨、北欧で買い付けるヴィンテージ食器がずらり。ずっと大切にしたくなる、そんなちょっと特別なものたちとの出会いを楽しみに出かけてみませんか。

手づくりの家具とデザイン雑貨のお店

川越の蔵造り通りの北の端、札の辻の交差点を渡った先にある「bero弁天長屋」。ロートアイアンの職人である中井貴史さんとグラフィックデザイナーの小林チエさん夫妻が開いたお店です。扱うのは手づくりのオリジナル家具、北欧ヴィンテージ食器、若手クリエイターのアート雑貨など。異なる分野で活躍するふたりがライフスタイルをトータルに発信する場がほしいと2022年4月にオープンしました。

使えば使うほど愛着がわく「bero弁天長屋」の家具たち

店内に並んでいるのは、ロートアイアンと呼ばれる鉄を使った椅子やテーブルなどの家具、傘立てなどの雑貨類。共通するのは、細くても強度をたもつロートアイアンの特性を存分にいかしていること。「アール十字脚」と名付けたオリジナルスツールのリズミカルでやわらかな曲線など、シンプルなのにはっとさせられる美しさが漂います。

こだわっているのは「奇抜ではないけれど、細かなところや見えないところにも技術が詰まっていること」。合わせる木材やファブリックなども厳選していて、長く使うほどに風合いが増していくのだそう。完成品を買うこともできますが、基本はセミオーダーなので世界でひとつだけの家具を計画することができますよ。

伸びやかで自由なロートアイアンの世界

ロートアイアンとはヨーロッパで発展した製鉄・製品のこと。レトロな欧風建築のフェンスや手すり、窓枠などによく使われていると聞くとイメージしやすいかもしれません。そのつくりかたは古典的かつなかなかにハードなもの。炉に入れて真っ赤に熱した鉄を叩く・延ばす・曲げるなど、すべて手作業でひとつひとつ形づくっていきます。

材料をなるべく捨てない、むだにしないこと

美術学校を卒業後に何となくこの世界に入ったという中井さんは「鉄とはこんなにも伸びやかで自由なのか」とロートアイアンの世界に魅了されたといいます。以後はこの道ひと筋で、装飾性の高いオーダーメイドの建築材料の分野などで評価を高めてきました。そんな中井さんのモットーのひとつが鉄などの材料をなるべく捨てないこと。金属の性質をいかし、作業で出る端材は再び溶かして小さなパーツへと再利用。そんな工程から生まれたオリジナルの雑貨も好評です。

北欧のリユース文化と出会って気づいたこと

お店のもうひとつの柱が北欧のヴィンテージ食器です。ヨーロッパの美術館めぐりが好きな中井さんと小林さんは北欧を訪れた際にシンプルで美しいデザインのとりこになったそう。小林さんが特にひかれたのが現地のリユース文化でした。郊外の小さな町にもセカンドハンドショップがあり、そこには各家庭の委託式の棚があり…。おばあちゃんが大切にしていたものが誰かの手から手へ受け継がれていく、そういうよき文化をこの店から広めていきたいと考えています。

古い町並みと建物を愛する川越らしい「喜多町弁天長屋」

「bero弁天長屋」が入っているのは「喜多町弁天長屋」というユニークな長屋スタイルの複合施設です。9つのショップやギャラリー、オフィスなどが入るこちらは1893(明治26)年の大火後に建てられた歴史的な長屋。町並みの保存と再生を進めるNPO法人川越蔵の会がアートとものづくりの発信基地にしたいとリノベーションしました。中井さんと小林さんが大切にしてきた「古いものにデザインの力で新しい価値を」というテーマと重なり、たちまち魅了されたふたりはここにお店を開くことを決めたのだそうです。

「喜多町弁天長屋」は観光客でにぎわう蔵造りの町並みエリアからすぐの弁天横丁にあります。現在はローカル感あふれるこの界隈ですが、戦前の一時期には花街の文化が息づいていた華やかな歴史も。細い路地に足を踏み入れると「喜多町弁天長屋」を含めて今も3棟の長屋が軒を連ねていて、まるで時が止まっているかのようです。長屋内の他のショップを見たり、路地にあるカフェでひと休みしたり。ひと味違う川越さんぽが楽しめますよ。

いかがでしたか?「bero弁天長屋」ではロートアイアンなどのものづくりを体験できるワークショップを不定期で開催中。WEBショップもオープンする予定なので、さまざまな形で親しんでみてはいかがでしょうか。