大正から昭和にかけて活躍した日本画家、堂本印象。京都の衣笠エリアには、堂本印象みずからが建物や内装、案内板、休憩のための椅子、ドアノブなどすべてのデザインを手がけたミュージアム「堂本印象美術館」があります。やわらかなタッチの日本画からアバンギャルドな抽象画まで、「えっ?これが同じ人の作品……?」と驚きつつも次第に世界観に引き込まれていく、そんな心弾むアート体験はいかがですか。

世界遺産ストリートを目指して

金閣寺、龍安寺、仁和寺の3つの世界遺産を結ぶ「きぬかけの路」にあり、公共交通機関でのアクセスは、市バスとJRバスの立命館大学前停留所からすぐです。バス停の目の前、白色×金色の装飾がひときわ異彩を放つ建物が、堂本印象美術館です。

知りたい、堂本印象のこと。

本名は堂本三之助。1891(明治24)年、京都の造り酒屋の三男として生まれました。西陣織の図案描きを経て画業に専念するようになった大正から昭和初期にかけては、当時の京都画壇の流行をふまえた伝統的な日本画を描き、とくに仏画では高い評価を受けます。戦後は趣向をがらりと変え、何にもとらわれない自由な抽象表現で新たな世界観を築き上げました。仁和寺、東寺、醍醐寺、平安神宮、西芳寺など京都の名だたる社寺をはじめ、奈良、四国まで赴き、障壁画だけでもあわせて600面もの作品を描いたそうです。

61歳のときの半年間、イタリア、ドイツ、スペイン、フランス、スイスを旅して美術館や教会、宮殿などを観て回ったそう。そんな経験を経て75歳となった1966(昭和41)年、自身の作品を展示する美術館をみずからデザインし、創り上げたのです。

ロビーのアートを鑑賞

館内に入って最初に迎えてくれるのが、ロビー中央のきらびやかなステンドグラス『蒐核』。近づいてみると、百貨店の銀の紙の包装や色ガラスのかけらが散りばめられていて、遊び心が感じられます。

館内をめぐってアートを鑑賞

館内は、本館、新館、サロンの3つの空間で構成されています。堂本印象美術館が所蔵する印象の作品は、2300点ほど。テーマを設定した印象作品の年2回のコレクション展、他のアーティストの作品も織り交ぜて紹介する年に1〜2回の特別企画展によりさまざまな作品に出会えます。

展示室以外にも見どころがたくさん

展示室へといざなう廊下にもアートが満載です。福井地方裁判所のエントランスホールを飾るステンドグラス『楽園』を1/3サイズに縮小して制作したものや、鑑賞の合間に休んでもらいたいという印象のおもてなしの心が込められた椅子など、バラエティに富むアートが楽しめます。

見晴らしのいい3階のサロンへ

サロンには、印象の作品のほか、愛用していた絵筆や絵の具、絵皿などが展示されています。また、大きなガラス窓からは、京都のシンボルである大文字山や、比叡山など東山連邦が見渡せます。視線を少し下に落とすと目に留まる瓦屋根の純和風建築は、印象が暮らした邸宅です。

ミュージアムショップも必見

受付前のミュージアムショップには、館内にみられる取っ手のデザインをモチーフにしたマスキングテープやポストカードなど、オリジナルのミュージアムグッズがそろいます。おすすめは、美術館から徒歩10分のわら天神宮前にのれんを掲げる京菓子司「笹屋守栄」製の羊羹「光る窓」。印象の作品『蒐核』からイメージしたものです。白あんがベースなのでマイルドな風味。日本茶はもちろんのこと、紅茶やコーヒーともよく合います。

美術館前の庭園は無料エリア。アトリエの建つ小高い丘があり、特別企画展の会期とあわせた展示や、他の作品とのコラボレーションが楽しめる展示なども行われるそうです。

金閣寺、龍安寺、仁和寺を訪れるなら、ぜひ変幻自在な画才をもつ堂本印象のアートも楽しんでみてくださいね。