京都と大阪の間にそびえる天王山の中腹に建つ「アサヒグループ大山崎山荘美術館」。国の有形文化財に登録された建物である「本館」と10年ほど前に新設された「山手館」では、民藝作品を主としたそのときどきの企画展を、「地中館」では、印象派の巨匠クロード・モネの連作《睡蓮》などの絵画を、美しい空間ごと鑑賞できるのが魅力です。桜、睡蓮、紅葉、雪……四季に寄り添いながら移ろう景色や、眺めのいい喫茶室でのカフェタイムとあわせて楽しめますよ。

京都中心部から南西方面の天王山へ

JR京都駅から西へ5つ目の山崎駅または、阪急大山崎駅から山手へ歩いて10分ほど。駐車場はないので徒歩で向かうか、駅前から無料で運行している送迎バス(高齢者優先)も利用できます。トンネルを抜けてさらに坂道を上がって流水門をくぐると、まさに“山荘”の趣を漂わせる建物が現れます。

実業家の元別荘を美術館に

元は、証券業をはじめ多方面で活躍し、ニッカウヰスキーの創業にも参画した実業家・加賀正太郎が大正時代にみずから設計した別荘でした。後にこの建物を受け継いだ朝日麦酒株式会社(現アサヒビール)初代社長の山本爲三郎により復元整備され、1996年から美術館として親しまれるようになったのです。

加賀氏がみずから設計した格調高い本館へ

本館は、イギリスのチューダー・ゴシック様式をベースに、加賀氏がみずから設計した建物です。1階受付すぐの「山本記念展示室」は、元リビングルーム。開催される企画展ごとに展示内容が変わり、展示室の雰囲気とともに作品鑑賞が楽しめます。

暖炉や天井をよく見てみると、美術館のある乙訓(おとくに)がたけのこの産地であることにちなんだ、たけのこの浮き彫りが!しかも暖炉と天井でデザインが異なります。 繊細なレリーフの彫刻が特徴的な石は、「画像石」といって、中国の後漢時代に墳墓を飾ったものです。

山本記念展示室に隣接する部屋は、かつてたくさんの植物が置かれ、応接間として使われたサンルーム。訪れたときは、花瓶 、皿 、鉢 、グラス 、茶碗など生涯にわたり暮らしのなかで活躍するうつわを作りつづけたガラス工芸作家・舩木倭帆の没後10年展が開催中でした。

階段中央のステンドグラスは、この場所に飾るためにヨーロッパから取り寄せたと伝わる、美術館のシンボル的存在です。ほかにもこの建物にあわせて特別に作られたという照明、天井の華麗なシャンデリア、カットガラスなど、どこに目を向けても美しくて心を奪われます。

「地中の宝石箱」こと地中館へ

安藤忠雄氏が設計を手がけた地中館は、緑豊かな周囲の景観に溶け込むようにと地中に埋め込まれた半地下の展示室です。

階段を降りた先にある展示室は曲面の壁に囲われた円柱形の空間で、コンクリートだけれどやさしい印象。こちらでは、《睡蓮》をはじめとしたクロード・モネの作品を、向かいの壁にはアサヒビールが文化活動の一貫として収集した西洋絵画コレクションのなかから企画展とリンクする作品を展示。筆使いや色合いを間近に見ることができます。

「夢の箱」山手館へ 

加賀氏が愛した蘭の温室へ続いていたという通路を通って山手館へ。こちらは、2012年にふたたび安藤忠雄氏が設計を手がけた建物で、地中館が円柱形であるのに対し四角形を基調としていることから、「夢の箱」と呼ばれます。企画展ごとに魅せ方が変わる、多様な展示室です。

見晴らしのいい2階の喫茶室

加賀夫妻の寝室だった2部屋とテラスからなる喫茶室は、コーヒー、紅茶、ビール、ワインといったドリンクや、ワインケーキ、黒トリュフ風味のスペイン産ポテトチップスなど定番メニューのほか、毎回企画展のテーマとリンクした特製スイーツも登場。リーガロイヤルホテル京都のパティシエが考案していて、このときは舩木倭帆のガラス作品にちなんだ2種が用意されていました。

ミュージアムショップも必見

クロード・モネをはじめ、コレクションの民藝作品をモチーフにしたオリジナルのミュージアムグッズが充実。ここでしか手に入らないものがほとんどです。

今度の休日は、澄んだ空気と豊かな自然、美しいものがあふれる非日常の場所へでかけてみませんか。