「小説には人の心を動かす力がある――」。女優・橋本環奈がヒロインとして出演する映画『小説の神様 君としか描けない物語』で幾度も出てくる言葉だ。橋本自身、数々の映画やドラマに出演して作品を残す一方、SNSでは300万人を超えるフォロワーを持つなど、“人を動かす力”を持つ立場にいるとも言える。彼女は発信者として、どんなことを大切に日々表現に向き合っているのだろうか――。

■SNSで大切にしていること「人を傷つけるような発言はしない」

 橋本が劇中で演じているのは売れっ子高校生小説家・小余綾詩凪(ペンネーム・不動詩凪)。「小説には人の心を動かす力がある」と信じている女の子だ。橋本自身、小説家ではないが、女優として演じるキャラクターを通して、そして“橋本環奈”として、視聴者やファンに言葉を届けている。

 300万人以上ものSNSのフォロワーを抱える橋本だが、「自分が発信する言葉が、人に大きな影響を与えるかもしれないと意識してしまうと、自分の核となる部分がなくなってしまうのかなと思うんです」と客観的に分析する。あくまで、自分の感じたことをしっかりと伝えることが“橋本環奈”として発信する上では大切なことのようだ。「SNSってある意味で、プライベートと仕事の境界線がなかなかはっきり分けられないので、自分を取り繕ってしまうとのちのちボロが出てしまいますよね」と笑う。

 SNSで発信する際には「人を傷つけるような発言はしない」ことを注意しているという。「不特定多数の方が見るわけなので、当然ですが差別的な発言や、誰かが不快になるようなことは言わないように普段から心掛けています」というが、一方でどんなに気をつけていても「揚げ足を取るような発言をしてくる人もいます」と苦笑する。

 橋本が演じた詩凪は、佐藤大樹が演じた同じく高校生作家・千⾕⼀也(ペンネーム・千谷一夜)と共に1つの作品を作り上げることになる。一也は、自身の小説がネット上で誹謗(ひぼう)中傷され、前に進めなくなっていた。「以前読んだ山下達郎さんのインタビューに、すごくたくさんの賛辞よりも、たった1つのネガティブな意見に傷ついてしまうと書かれていたんです。それを読んだとき、あの山下達郎さんでもそうなのか…と思ったことがありました」。

■ネットでの誹謗中傷への向き合い方は「心の中で抗うことが大切」

 橋本は、SNSなどでも好意的な意見が多い女優というイメージがあり、それは本人も自覚しているそうだが、やはり一部の悪意ある言葉に触れることもある。「応援してくださる方には本当に感謝していますし、ありがたいなと思いますが、叩かれることも全然あります。デリケートな部分をグサっと突いてくる発言もあるし、『10代の女子にそれ言うか!』みたいなものもありましたよ」とおどける。

 そうした発言に出合ったとき、橋本は「だんだんと強くなっていくとは思うのですが、誹謗中傷に対して『全然気にしていないです』っていうのも、何か違うのかなと思うんです。それはそれで自分がひねくれてしまいそうで…」と胸の内を明かす。「ただ、叩く人に対して『それはどうかと思う』と尖った意見を言うのも違うと思うんです」。

 そんなとき橋本は「やっぱり心の中でしっかりと抗うことが大切だと思うんです」と述べる。

 劇中では、さまざまな厳しい意見や誹謗中傷にさらされながらも、詩凪と一也は自分たちが信じる大好きな小説を守りながら前に進む。その2人の姿を見ていると、“小説には人の心を動かす力がある”と実感させられる。

 詩凪は一也に向かって「なんのために小説を書いているの?」と問う。橋本はなんのために女優をやっているのだろうか――。「ただただ“やりたい”という気持ちだけでここまで来ました。たぶん、あとから『こういう思いだったんだ』と気づかされるんだと思う。今はただひたすらに進むだけです」。(取材・文:磯部正和 写真:ヨシダヤスシ)

 映画『小説の神様 君としか描けない物語』は全国公開中。