俳優のジョニー・デップが水俣病を世界に知らしめた実在の写真家ユージン・スミス役で主演を務める映画『MINAMATA(原題)』が、9月に公開されることが決定。海外版予告が公開された。

 熊本県水俣市にあるチッソ水俣工場からの工業排水によって発生した、日本における“四大公害病”のひとつである水俣病。現在もなお補償や救済をめぐる問題が続くこの公害病の存在を当時世界に知らしめたのが、写真家ユージン・スミス氏(1918〜1978)とアイリーン・美緒子・スミス氏が1975年に発表した写真集『MINAMATA』だ。

 本作は、スミス氏に長年憧れていたというジョニーが、彼の遺作ともなったこの写真集を基に、製作と主演を務めて待望の映画化を実現させたドラマ。出演はジョニーのほか、英国俳優ビル・ナイ、日本から真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子など実力派キャストが集結した。監督はアンドリュー・レヴィタス、音楽は坂本龍一。主な撮影はセルビア、モンテネグロで行われた。 今年2021年(5月1日)は、水俣病公式確認から65年を迎える。

 映画では、報道写真家として功績を評価されながらも心に傷を抱えたスミス氏が、当時の妻アイリーン氏とともに水俣を訪れ、1971年から1974年の3年間現地で暮らし、人々の日常や抗議運動、補償を求め活動する様子を何百枚もの写真に収めていく濃密な日々がドラマチックに描かれる。

 「彼(スミス氏)は心の中に痛みを抱えていた。でも、水俣が彼の心を再び開いたんだと思う」と語るジョニーは、傷ついた写真家だったスミス氏が、再びカメラを手に取り闘いに身を投じていく様を、容姿から内面に至るまで見事に体現。2020年ベルリン国際映画祭で特別招待作としてワールドプレミア上映された際には「デップが最高の演技を披露(THE PLAYLIST)」「デップが役に消える(DEADLINE)」と各国メディアから絶賛された。このプレミアの模様は日本ほか世界中のメディアで報道された。

 海外版予告編は、スミスが、後に夫人となるアイリーン(美波)から「日本の企業が、海に有害物質を流し続けてる。住民は助けを求めてる。世界の注目を集めるため、あなたの力が必要です」と言われる場面や、ビル・ナイ演じるLIFE誌編集長から「最もやっかいな写真家だ」「写真が欲しい。ストーリーを撮ってこい」などと言われるところから始まる。続いて、水俣に出向いたスミスが、現地の人々に寄り添い共に奮闘する姿が映し出されていく。映像にはそのほか、患者運動のリーダーを力強く演じる真田広之の姿も。最後は、「撮りたいもの、そして伝えたいことに集中するんだ」というスミスのセリフで幕を閉じる。

◆映画の持つ力をフルに活用して、伝えたいメッセージを発信する

 2020年2月21日(現地時間)に行われた第70回ベルリン国際映画祭での公式記者会見で、ジョニーは「W・ユージン・スミスに、昔からとても興味がありました。彼が辿ってきた人生や、彼が体験したこと、そして、何を犠牲にして、あのような瞬間を写真に捉えることができたのかなどを知りました。そして、水俣に関する記事を読み、知識を深めていくうちに、実際にそれが起こったという事実に衝撃を受けました。しかも、その影響は解決されたわけではなく、未だに続いているということは、それ以上に衝撃的なことです」とコメント。

 続けて「一人の関心を持つ者として、この歴史は語り継がれなければならないと思いました。映画の持つ力をフルに活用して、伝えたいメッセージを発信することが、私も含めて、ここにいる我々の願望でした。我々は皆、ただの一片のホコリで小さな力なのです。もし私たちが窮地に立たされたとき、誰かが率先して、巨大な壁を壊そうとすれば、きっと大勢の人々が後に続いてくれるはずです」と力強く語った。

 映画『MINAMATA(原題)』は9月全国公開。