人それぞれに挫折がある。けやき坂46からの改名後、2019年3月にシングルデビューしたアイドルグループ・日向坂46の小坂菜緒にもその過去があった。センターを務めながらも「力量の足りなさに落ち込んだ時期もあった」という小坂。葛藤から抜け出せたのは、活動を共にするメンバーがそばにいたから。彼女が感じる仲間の“絆”とは。その胸の内を聞いた。

■珍しく大声を出したシーンは「ちょっとスッキリしたかな(笑)」

 6月18日公開の映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』では、女子高生のテストジャンパーを演じた小坂。日本スキージャンプ陣が大逆転金メダルを獲得した1998年開催の長野冬季五輪での実話を基にした本作。競技前にジャンプ台の安全を確かめるために飛ぶ“裏方”のテストジャンパーたちの姿が描かれる。

 小坂が演じた小林賀子は、実在のスキージャンパー・吉泉(旧姓:葛西)賀子がモデル。長野冬季五輪当時女子ジャンプが正式種目ではなかったため、裏方であっても大舞台で活躍したいと、スキージャンプへ一心に情熱を傾ける少女を演じた。

 テストジャンパーの役割に卑屈な態度を見せる選手もいるが、スキージャンプへの思いを胸に、彼らに対して叱咤(しった)する賀子。気持ちをストレートにぶつける役どころだが、小坂にとって賀子は、自分と「真逆なタイプ」だったようだ。

 「私は自分の思いを隠してしまうタイプ。友達にも家族にも、素直に思ったことをストレートにぶつけるのはなかなかできなくて。元々、人と関わるのもそんなに得意ではなく、感情を表に出すのもあんまり得意ではないんです」。

 だからこそ、大変な撮影もあった。スキージャンプに反対していた父親に内緒で、北海道から長野県へやって来た賀子。その身を案ずる父親が娘を連れ戻そうと合宿先に突然現れ、激しい口論を繰り広げるシーンでは「大声で怒鳴る感覚が分からなくて、戸惑いました」と振り返る。

 「家族とケンカをしたことがなく、誰かに大声で怒った経験もなかったんです。でも、撮影現場では、皆さんが『思いっきりやっていいよ』と後押ししてくれて。賀子さんになりきれるよう、素直に『親からこう言われたら嫌だろうな』と想像しながら、演じていました。カメラが回っている間は、ずっと大声を出して疲れたけど、気持ちとしては、ちょっとスッキリしたかな(笑)。大声を出すのも、たまにはいいかなと思えました」。

 ちなみに小坂の両親は、アイドルの活動を始めるときに「まったく反対しなかった」という。「家族はみんな『やりたいことをやってみれば』といった感じで。今もグループの活動で悩んだときは、相談に乗ってくれます」と笑顔だ。

■挫折の経験「力量の足りなさに落ち込んだ時期もあった」

 劇中では、田中圭が演じる主人公・西方仁也の苦悩や挫折も物語の軸に。元五輪選手にもかかわらず、けがにより長野五輪代表に落選。テストジャンパーを引き受けるものの、“自分のいるべき場所はここではない”と葛藤し続ける。だがやがて、挫折した先で再び前を向き始める西方。

 小坂にもまた挫折から成長した経験があった。2019年3月。けやき坂46からの改名後、デビューシングル「キュン」で、グループのセンターに選ばれたが、「力量の足りなさに落ち込んだ時期もあった」と明かす。

 「改名からのデビュー後は、自分に自信がなく不安も大きかったです。センターを任されたことで、いろいろと悩んだし、挫折もたくさん経験して。環境の変化にもなじめず、自分から壁をつくってしまって、ほかのメンバーにどう話しかけたらいいのか迷う場面もありました。でも、時間が経つにつれて仲間の大切さが分かってきて。みんなに支えられたことで、少しずつ不安も解消されていきました」。


 映画では、猛吹雪により競技の中止が危ぶまれる中、日本に金メダルをもたらそうと、危険な状況下でも果敢に飛ぼうと決断するテストジャンパーたちの“チーム力”や“絆”も描かれている。

 小坂が所属する日向坂46も彼らと同じ。グループのレギュラー番組『日向坂で会いましょう』(テレビ東京/毎週日曜25時5分)やライブなどで、そのチーム力や絆を高く評価されている。

 グループの空気について「たまに『嘘でしょ?』と言われるほど、本当に仲が良くて」と笑顔を見せる小坂。メンバーといる時間は「一番楽しい」とほほ笑む。

 「誰かが苦しんだり、大変なときも、全員で寄り添える温かさは常に感じています。1つ大きな仕事が終わると寂しくなるけど、乗り越えた先でまた、メンバー同士の絆が深まる瞬間が好きで。全員の空気が『みんな本当に頑張った』から『次はもっと頑張れる』に変わる瞬間がやってくるたびに、すごくいいグループだなと思っています」。(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:ヨシダヤスシ)

 映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』は6月18日全国公開。