映画『窮鼠はチーズの夢を見る』や『リスタートはただいまのあとで』などの国内作品に留まらず、いま世界中でボーイズラブ(以下、BL)を描いた映画やドラマが豊作となっています。世界各国で愛される男性同士のラブストーリー。今回は、注目作をピックアップしてご紹介します。(文=児玉美月)

■クオリティ高い日本のBL

 9月に公開された『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)をはじめとして、今年もいくつかの日本のBL映画が公開されました。同作は大倉忠義と成田凌が共演し、役の心情を的確に捉えた彼らの演技が高く評価されています。

 また、水田ゆきのBLコミックを実写化した『性の劇薬』(2020)は、これまでの商業BL映画のなかでもきわめて過激な性描写が話題となりました。ピンク映画を数多く手掛けてきた城定秀夫監督の技巧的な演出が光ります。

 同じく、BLコミックを原作とした『リスタートはただいまのあとで』(2020)は、都会から田舎へと帰郷した主人公とそこで出逢った青年の恋が、優しい世界観のもとで描かれていきます。

■カナダからは繊細なタッチの物語

 世界に目を向ければ、たとえばカナダでは、若くして天才の称号を手にしたグザヴィエ・ドラン監督が『マティアス&マキシム』(2019)で親友同士の友情関係から恋愛関係への変化を繊細なタッチで描いています。この作品も9月に公開を迎えたばかりで、これまで母や家族のテーマにも傾倒してきたドランの、まっこうからのラブストーリーを堪能できます。

■親友との恋を描いたイギリス映画

 2009年の製作と少し前ではありますが、イギリスのBL映画『アウェイデイズ』が、10月16日(金)に公開を迎えました。1970年代後半を時代背景に、若者に普遍的なもがき苦しむ感情と、親友同士の少年の間に芽生えた恋愛感情を描いています。イギリスといえば、『モーリス』(1987)や『アナザー・カントリー』(1983)をはじめとした耽美的な肌理のいわゆる「悲恋」のBL映画の存在感も大きいのではないでしょうか。

■暴力描写も多い韓国BLの世界

 日本でも配信や特集上映などが繰り返しされ、観ることのできる機会が多い韓国のBL映画といえば、イ=ソン・ヒイル監督の『後悔なんてしない』が挙げられます。彼の作品には、現実の社会状況を反映させたかのような同性愛嫌悪が映画に深く刻み込まれていますが、韓国のBL映画には、同性愛嫌悪の問題や暴力描写が比較的多く描かれるところが一つの傾向としてあるかもしれません。

 他には、殺し屋とネット小説家の男性がファンと恋に落ちる『long time no see』(2017)や、同性愛の舞台を演じることになった男性同士が芝居と現実の境界線を失っていく『メソッド』(2017)などが現在Netflixでも配信中です。11月13日(金)には、詩人の中年男性の青年への切ない恋慕が、美しい言葉たちと共に叙情的に描かれる『詩人の恋』(2017)の公開が待機しています。

■異彩を放つタイBL映画

 日本でも有名なタイの映画作家アピチャートポン・ウィーラセータクンの『トロピカル・マラディ』(2004)は二部で構成されており、前半は田舎に暮らす二人の青年がデートをする様子が、かたや後半では森を舞台にした神秘的な世界が繰り広げられます。観念的とも言えるその審美性は数あるBL映画のなかでも異彩を放っています。

 女性監督のアヌチャー・ブンヤワッタナの『The Blue Hour(原題)』(2015)は、誰もいない廃墟のプールと神隠しを描くBL映画です。この映画もそうであるように、タイでは精霊信仰の文化に根ざしているとも思われるホラージャンルがとてもポピュラーです。

■タイはBLドラマも人気!

 そしてタイといえば、いまやタイBLドラマの人気は、ますます日本でも広がりを見せています。校内一のイケメンに「偽彼氏」になってもらうことをお願いするところからはじまるラブストーリー『2gether』(WOWOW/10月22⽇(木)スタート 第1話無料放送/毎週木曜深夜0時00分から2話ずつ放送)は、その火付け役のような存在です。

 『Until We Meet Again〜運命の赤い糸〜』は、前世で引き裂かれた恋人同士の生まれ変わりである二人が再び出逢い、転生を通して時代や社会の同性愛を取り巻く変容を描出していく感動のドラマです。

 そのほか、タイBLドラマの金字塔として”履修”必須な『SOTUS』(2016)や、映画をモチーフとした、視点が切り替わる切ない片思い譚の『Theory of Love』(2019)などがあります。また、日本でも8月から配信が開始された『TharnType/ターン×タイプ』(2019)は、多くのBL作品に影響を与えた『君の名前で僕を呼んで』(2017)の遺伝子を受け継ぐ作品でもあり、その類まれな映像美に魅了されること間違いありません。

 以上、ここではほんの一部しか紹介できませんでしたが、世界各国のBL映画/ドラマにはまだまだ名作があります。ぜひお気に入りの作品を見つけてみてください。

【『窮鼠はチーズの夢を見る』概要】
全国公開中
配給:ファントム・フィルム
(C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会

【『性の劇薬』概要】
DVD&Blu-ray発売日:10月28 日(水)
(C)2019 フューチャーコミックス

【『マティアス&マキシム』概要】
全国公開中
提供・配給:ファントム・フィルム
(C)2019 9375-5809 QUEBEC INC a subsidiary of SONS OF MANUAL

【『アウェイデイズ』概要】
10月16(金)より新宿シネマカリテほかにてロードショー 以降、全国順次公開
(C)Copyright RED UNION FILMS 2008

【『後悔なんてしない』概要】
「のむコレ2020」で上映
10月23日(金)〜10月29日(木) シネマート心斎橋/12月15日(火)〜12月24日(木) シネマート新宿

【『詩人の恋』概要】
11月13日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:エスパース・サロウ
(C)2017 CJ CGV Co.,Ltd., JIN PICTURES,MIIN PICTURES All Rights Reserved

【『2gether』概要】
10月22⽇(木)より毎週木曜深夜0時00分からWOWOWで放送 第1話無料放送

【『TharnType/ターン×タイプ』概要】
Blu-ray BOX発売日:12月14日(金)
価格:2万3000円
発売元:アクロス
販売元:TCエンタテインメント
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