コーヒー界の巨匠に教わる
体感型セミナー


本格的なハンドドリップの手法を学ぶことができるセミナーには、自分で淹れるコーヒーの味わいを極めたいと考える、熱心な女性の受講生が目立つ。

 毎日、家で飲んでいるコーヒーをもっと美味しく、本格的に。近頃、ライフスタイルにおける「こだわり」のポイントとして、コーヒーに注目する女性が増えている。それとともに、人気が高まっているのがコーヒーセミナーだ。コーヒーに関する幅広い知識や実践的なコーヒーの淹れ方をプロから学ぶことができるだけではなく、これまでに感じたことのない、新たな美味しさに目覚める感動的な体験が叶うかもしれない。


2016年9月9日にオープンした「神乃珈琲」。個性的でおしゃれな、ガラス張りの外観が目印。

 今回は、日本人の味覚に合ったコーヒーを追求している「ファクトリー&ラボ 神乃珈琲」の珈琲塾を覗いてみよう。

コーヒーの楽しみ方が広がる!
焙煎所のあるおしゃれカフェ

 学芸大学駅から歩いて約10分、目黒通り沿いにあるガラス張りの建物が「ファクトリー&ラボ 神乃珈琲」だ。外の光が差し込む、開放的で落ち着いた雰囲気の店内には、その名にある通り、工場のような大型焙煎所が。


店内の中央に設けられた焙煎所は、眺めているだけでワクワクしてくるようなスペシャルな空間。


完成までに4年を費やした同店オリジナルの焙煎釜からは、1日に6回、豆の焼き上がる香ばしい匂いが店内に立ち上る。

「店内の中央にガラス張りの焙煎所を設けたのは、製作過程を含め、コーヒーに関するすべての時間を、お客様に楽しんでいただきたいと考えたからです」

 そう語る、社長の菅野眞博さんは、「日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)」の副会長を務めるほか、「ドトールコーヒー」や「星乃珈琲店」といった人気店のコーヒーを長年プロデュースしている。

 そんな「コーヒー界の巨匠」ともいうべき菅野さんがレクチャーする珈琲塾には、新幹線で遠方から足を運ぶ熱心な受講生もいるというから驚きだ。

美味しさのバリエーションを知って
コーヒーをもっと楽しく

 セミナーがスタートする13時に近づくにつれ、神乃珈琲の2階にあるラボには続々と受講生たちが集ってくる。この日のテーマは、「私の珈琲の創り方」。全3回制のセミナー「おいしい珈琲の淹れ方 其の弐」の後編として、よりオリジナリティ溢れる味わいを極めていく。


豆の買いつけで訪れた、世界各地の農園でのエピソードを語る菅野さん。

 前回、初めて本格的にハンドドリップの手法を学んでから、道具を揃えて家で練習を重ねてきたという女性は、「毎日、同じ豆を使ってコーヒーを淹れているのに、日によって味わいが違うんです。そういう細かい味の変化がわかるようになったのは、自分の中で嬉しい発見でした」と笑顔を見せる。

 今日は、どのような気づきがあるのだろうか。持参したエプロンを身につけ、いよいよレッスンがスタート!


それぞれの席に、コーヒービギナーでもわかりやすいレジュメや、本格的なハンドドリップの道具などが用意され、期待が高まる。

 素材について学習し、理解を深めることで、より美味しさを楽しむことができると考えている菅野さん。まずは、現在のサードウェーブに至るまでのコーヒー市場の動きや、豆の品質の違いなどを、自身の思いや体験談などを織り交ぜながら熱く解説していく。

 神乃珈琲で働くスタッフが、研修で学ぶのと同じ内容を扱う本格的なプログラムの中でも、菅野さんがとくに力を入れているのが「右脳」を使う体感型の演習だ。

「同じ品種の生豆でも、焙煎度合によってコーヒーの風味に大きな違いが生まれます。ここからは、右脳をフル活用して、実際に香りと味わいを確かめながら、美味しさの豊かなバリエーションを体感してみましょう」


左から、ライトロースト・ハイロースト・イタリアンロースト。同じ豆とは思えない、それぞれ違う個性にびっくり。

 スメリングとテイスティングを繰り返しながら、例えばハイローストのコーヒーからは「ミルクチョコレート」「ナッツ」「炭」など、それぞれが感じとった風味を自由に口に出して伝え合う。自らの味覚の新境地を切り開く、なんとも興味深い体験だ。

 しばらくすると、先ほどから何やら時計を気にしていた菅野さんが、「もうすぐ豆が焼き上がる時間です。下へ降りて、焙煎機の側に行ってみましょう!」と受講生に呼びかける。


普段はあまりお目にかかれない、豆の調理工程を知ることで、コーヒーとの関係性がさらに深まりそう。

 こうしたサプライズも、焙煎所を併設している同店ならでは。大型焙煎機の目の前に立ち、焼きあがった豆が一気に流れ出てくる迫力のある瞬間を見学した後には、できたての豆で淹れたコーヒーを試飲するという贅沢な機会も。

「雑味が一切なく、とても飲みやすいですね。こんなにフレッシュな味わいのコーヒーを飲んだのは初めてです!」(受講生)


焼きたての豆を手にとって味見。ふんわりと軽い食感で、香ばしい豆菓子のよう。

ここでしか見聞きできない
マル秘テクニックも伝授!

 セミナー開始から1時間が経ち、いよいよ後半はハンドドリップの実践へ。菅野さんの実演をお手本にしながら、1杯につき「豆の粉量15グラム、注ぎ湯量160グラム、出来上がり130グラム」を目指し、スケールで分量と蒸らし時間を確認しながら、丁寧に淹れていく。


左:中心に500円玉を描く感覚で、蒸らしを含め、計4回に分けてお湯を投入する。
右:「最終的に、アリ地獄の巣のような穴ができればパーフェクトです」(菅野さん)

 抽出したコーヒーを、まずは自分でひと口。その後、菅野さんに味わってもらいアドバイスを受けたり、隣の人と交換し合って飲み比べをしたりする女性たちも。

「コーヒーを淹れる人によって、味わいに個性が出るのが面白いですね。良い品質のコーヒーほど、繊細な違いが現れるような気がします」(受講生)


「ひと口、味見してもいいですか?」「ぜひぜひ! 交換してみましょうか」と、コーヒーを通じてコミュニケーションが広がるのもセミナーの楽しいところ。

自分で淹れたコーヒーで
とっておきのスイーツタイム


期間限定で販売した「ショコラカフェテリーヌ」。ほのかにコーヒーの風味が香るリッチな味わい(2017年4月現在は、テリーヌ3種「ショコラ、抹茶、フロマージュ」を販売)。

 終盤には、自分で淹れたコーヒーを、神乃珈琲のスペシャルスイーツとともにゆったりと味わうひとときも。

「今回は、全3種類ある『神乃ブレンド』の中で、もっとも深みとボリューム感のある『参〜コク〜』の豆を使って実習しました。このようなビターなフレーバーには、濃厚なショコラテリーヌがよく合うと思います。ぜひ、コーヒーとスイーツのマリアージュをお楽しみください」と菅野さん(スイーツは開催日によって変更あり)。

「せわしない日常の中で、美味しいコーヒーを味わう時間は癒しになり得ると思うんです。中でも、ハンドドリップで丁寧に淹れたコーヒーには、マシーンでは出せない、人の手を通してこそ生まれる温かい味わいがあります。その美味しさを、ご自身で楽しむのはもちろん、ご家族やご友人にも振る舞ってあげてはいかがでしょうか」(菅野さん)


左:美味しいコーヒーと牛乳を合わせるだけで、至高のカフェ・オ・レのできあがり!
右:今回は特別に、これからの暑い季節にいただきたい、アイスコーヒーの作り方も。(レクチャー内容は、開催日によって変更あり)

 今後は、より専門的な技術を学ぶコースや、コーヒーを使ったスイーツ教室も開いてみたいという菅野さん。

「コーヒーの新たな美味しさを知って、毎朝コーヒーを淹れる時間がとても楽しみになりました」という受講生の言葉を、嬉々とした表情で受け止めていた。

 一杯のコーヒーを通じて、人生をちょっぴり豊かにするヒントを見つけることができる場所。これこそが、人々がコーヒーセミナーに集う理由のひとつといえるのかもしれない。


ファクトリー&ラボ 神乃珈琲
所在地 東京都目黒区中央町1-4-15(目黒通り沿い)
電話番号 03-6451-2823
営業時間 9:00〜20:00(L.O.19:30)
http://www.kannocoffee.com/

文=中山理佐,撮影=佐藤 亘