海抜2240メートルの高原盆地に位置する、メキシコの首都メキシコシティ。人口約2000万人というこの巨大都市から北へ向かう旅で出合うのは、カラフルな街並みや民芸品、ワインにメキシカングルメ……。歴史と現代が融合するメキシコ中央高原への旅は、発見と感動に満ちていた。

カラフルでキュートな街
サン・ミゲル・デ・アジェンデの歩き方


芸術の街としても知られるサン・ミゲル・デ・アジェンデ。

 メキシコ中央高原北部にある、標高約1900メートルの洗練された都市、サン・ミゲル・デ・アジェンデの朝は美しい。ヨーロッパの田舎町を思わせる暖色系のレンガ家が、太陽光を受けて煌めく朝靄に包まれ、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだかのような幻想的な雰囲気を醸し出す。


石畳のなだらかな坂道が続く通り道。区画整備されたクリーンな街並みは治安も良く、朝夕に散歩を楽しむにはもってこいだ。


通りの至るところで目にする井戸の跡。かつては、市民がここから生活用水を調達していたという。

 まだ人気の少ない朝、街の中心部を目指して歩いていると、ピンク色の愛らしい教会が目の前に現れる。サン・ミゲル・デ・アジェンデのシンボルである「パロキア教会」だ。


スペインの建築物を思わせるパロキア教会。実際、建設当時スペインから届いた絵葉書をもとにデザインされたという。


「サン・ミゲル・デ・アジェンデ」の名前の由来になった、独立戦争の英雄、イグナシオ・アジェンデが街を見守る。

 近年、欧米人の移住先として人気が高く、外国人旅行者も増加していることから、おしゃれなショップやカフェが続々と誕生し、モダンに進化しているサン・ミゲル・デ・アジェンデ。新旧のカルチャーが程よく融合されたハイセンスなコロニアル都市の魅力を、五感で満喫してみたい。

一日の始まりは人気のカフェで
オーガニックな朝ごはん!

 パロキア教会から歩いて数分の距離にある「Posada Corazón B&B(ポサダ・コラソン B&B)」の中には、朝ごはんが人気のオーガニックカフェが。60年代のメキシコ邸宅を改装した趣ある建物の周囲には、生き生きと緑が生い茂り、街の中心部にいることを忘れてしまうほどのリラックスした時間が流れている。


太陽の日差しが降り注ぐ、まるでブックカフェのようにおしゃれな店内。


店のアイドル、ポページェ(ポパイ)くんが「ハロー!」と元気にお出迎え。

 地元のオーガニック野菜を使ったメキシコ料理のほか、特製フレンチトーストやパンケーキなどインターナショナルメニューも種類豊富にラインアップ。


ウチワサボテンのソースでいただくエッグベネディクト。ピリリと辛いトマトソースがマイルドな半熟卵と相性バッチリ。卵は、敷地内で放し飼いにしている鶏が産んだフレッシュなもの。


メキシコ料理の定番「エンチラーダ」。奥に見えているチャヤ(マヤ民族が古代から食用としてきた栄養価の高い植物)とオレンジのグリーンジュースが口内を爽やかに癒してくれる。朝ごはんには、メキシコ産オーガニックコーヒー、フルーツプレートorジュースがセットで、220メキシコペソ。

 もう一軒、いま注目のオーガニックカフェを紹介したい。街の中心部から車で少し走った住宅地にあるオーガニックレストラン「Via Organica」だ。


ツヤツヤとして、今にも実が弾けそうなほどずっしりとしたオーガニック野菜たち。契約している地元の約300軒の農家から野菜をフェアトレードで買い取り、販売している。

 店内には、地元の生産者から買い付けた新鮮な野菜や、焼き菓子やパンなどオーガニックフードがずらり。


栽培中の野菜に囲まれた10席ほどある屋上テラス席。貸切予約をすれば、自分たちだけでゆっくりと朝ごはんをいただくことができる。

 店内では、サン・ミゲル・デ・アジェンデ近郊で育ったフレッシュな野菜をたっぷり使った、メキシコ伝統料理や季節のサンドイッチ、特製フレッシュジュースなどを味わうことができる。


パクチー、ホウレン草、パイナップルなど計6種類の野菜と果物が入ったフレッシュジュース。爽やかな飲み心地で、つい一気に飲み干してしまいそう。


トマト、玉ねぎ、青唐辛子の3色でメキシコの国旗をイメージした卵料理「メヒカーナ」(手前)ほか、見た目にも美しいワンプレートの数々。

Via Organica(ビア・オルガニカ)
http://viaorganica.org/

息をのむほどに美しい
装飾絵画の天井

 朝から口福な幸せ気分を満喫した後は、街のショップが開くまでの時間を使って、車で少し郊外へ。

 中心部から車で30分ほど行くと、「サン・ミゲルの要塞都市とヘスス・デ・ナサレノ・デ・アトトニルコの聖地」として、世界遺産に登録されているアトトニルコにたどり着く。

 ここにある「アトトニルコの聖地」(教会)は、メキシコにおけるバロック建築の最高峰とされ、内部に描かれた荘厳な天井壁画を含め、世界中から訪れる観光客を魅了している。


閑散とした静かな街の中に、真っ白な教会が。1700年代、神父ルイス・フェリペ・ネリ・デ・アルファロが、荊の冠をつけたキリストの幻影に導かれてたどり着いたこの土地が、聖地エルサレムの枯れた大地を彷彿とさせたことから建造されたと言い伝えられている。

 また、独立戦争時に、ミゲル・イダルゴ神父が、ここから独立の旗を持ち出したことから、メキシコ人には「独立の聖地」としても親しまれている。


教会前には、独立の旗を手にしたイダルゴ神父の銅像が。


イダルゴ神父が持ち出したとされる独立の旗のレプリカの展示。


30年かけて描かれたという美しい天井壁画には、聖書にまつわる物語が。バチカンのシスティーナ礼拝堂を思わせる荘厳な装飾は、迫り来るような大迫力。

宝探しのように歩いて見つける
ショップ&カフェ

 サン・ミゲル・デ・アジェンデへ戻り、散策をスタート。通りにはいろいろなお店が立ち並んでいるのだが、看板が大きく出ているわけではない。だから歩きながらお店を覗いて「あ、雑貨屋だった!」と気付く。そんな宝探しのような、ワクワクがいっぱい詰まった街なのだ。


大人〜キッズサイズまで、カラーも豊富に揃うルチャリブレTシャツ。マスクをデザインしたキーホルダーやバッジもかわいい。

 ぜひ足を運んでほしいのが、メキシカン・キッチュをコンセプトに、アーティストの作品や雑貨を集めたセレクトショップ「Ave Maria」。ここでしか手に入らないデザインのルチャリブレTシャツや、メキシコ人画家、フリーダ・カーロをモチーフにしたステッカーなどは、お土産にぴったり!


強い意思のある女性の象徴として、近年リバイバルしているフリーダ。「Viva la vida!(人生万歳!)」というメッセージが書かれたステッカーは、自分の身近なアイテムに貼って、いつも眺めていたい素敵さ。

 ワンランク上のセルビン焼をゲットしたいのであれば、「Azul Cobalto Estudio Galeria」へ。昔ながらのセルビン焼の技法を用いながらも、デザインに少し遊び心を加えた現代的なセルビン焼が揃う。


ワンポイント的にセルビン焼特有のぷっくりとした模様が絵付けされている猫の置物。インテリアにおしゃれ!


握手することができるユニークなカップ。店内には、陶器のほかにアクセサリーも多数。

 通りを歩いていると、何やら香ばしい匂いが……。地元で人気のカフェ「Oso Azul」に出会う。デンマークから移住したオーナーが3年前に開いたお店で、オアハカ、チアパスと並ぶ、メキシコの三大コーヒー豆産地のひとつ、ベラクルス産の風味豊かなコーヒーを味わうことができる。


「メキシコが世界一好きな国だよ!」という笑顔を見せるオーナーにその場で丁寧に挽いてもらったベラクルス産の豆(300g/80メキシコペソ)。同店のオリジナルキャラクターである、愛らしい白熊のマークが描かれた袋の隙間から漏れてくる、深みのある芳醇な香りがたまらない。

 コーヒーショップの隣には、メキシコ産のカカオにこだわるチョコレートショップ「Mente Cacao」が。チリやバジル、ハチミツなど約10種類あるフレーバーチョコレートは、この土地ならではのお土産に喜ばれそう。


チョコレートのほか、カカオパウダーやペーストも種類豊富に揃う。お願いすると試食させてくれるので、ぜひいろいろ試してみて。


お店を出たところで、プップーとクラクションを鳴らして通り過ぎていった派手なピンクカー。この街には、訪れる人たちを笑顔にしてくれる遊び心が各所に溢れている。

Ave Maria(アベ・マリア)
https://www.facebook.com/avemaria.sma/

Azul Cobalto Estudio Galeria(アスル・コバルト・エストゥディオ・ガレリア)
https://www.facebook.com/azulcobaltogaleria/

Oso Azul(オソ・アスル)
https://www.facebook.com/cafeosoazul/

Mente Cacao(メンテ・カカオ)
hhttps://www.facebook.com/MenteCacao/

果てしなく続く店、店、店……!
民芸品市場でショッピング

 グアナファトが銀産出の中心地であったのに対し、手工業によって栄えたこの地では、色とりどりの細かい刺繍や絵付けが施された、ハイクオリティな民芸品をぜひ目で堪能してほしい。

 中心部から少し外れた場所にある民芸品市場(Mercado de Artesanias)には、階段に沿って、これでもかというほどに所狭しと店が立ち並ぶ。陶器に衣服に雑貨に、気づけばここで数時間……。まさに買い物天国!


メキシカンアートの代表格、オアハカ発祥の「アレブリヘス」。ポップなカラーの斑点模様がなんとも愛らしい。ミニサイズの置物もたくさんあるので、お土産にも重宝しそう。


メキシコシティの隣、イダルゴ州のテナンゴ・デ・ドリアという地域を拠点にする先住民オトミ族の伝統的な刺繍。エルメスの2011年春夏コレクションのテーマに用いられ、世界的に有名になった。


オアハカの伝統衣装である鮮やかな花柄刺繍が施されたブラウス。メキシコの現代っ子は、この伝統衣装にデニムを合わせて、ラフなコーデを楽しんでいる。


ずらりと並んだタラベラ焼。見ているだけでハッピーになる模様は、食卓に華を添えてくれそう。リーズナブルな価格で、普段使いにぴったりの丈夫さも嬉しいところ。

隠れた絶景レストランで
フュージョン料理に舌鼓

 空が淡いピンク色に染まる夕暮れ時に合わせて、隠れ家的な絶景スポットへ。

 中心部にあるおしゃれなブティックホテル「El Palomar」の屋上には、サン・ミゲル・デ・アジェンデの歴史地区を一望することができるテラスレストランが。


カウンターに腰掛け、まずは食前酒を。夕日に照らされ、風情を醸すサン・ミゲル・デ・アジェンデの風景は、心に染みる美しさ。

 店内では、おしゃれに決めた地元のカップルや、外国人旅行客が、目の前に広がる絶景をうっとりと眺めながら、和やかに食事を楽しんでいる。

 メキシコやスペインの伝統料理にインターナショナルな要素をプラスしたフュージョン料理が人気の同店で、特におすすめしたいのは、新鮮な魚介類を使った料理。「タコのアヒージョ」や「白身魚のレモンクリームソース」は、スパイスやハーブの風味が鼻腔をくすぐる、お酒にも合う逸品だ。


「タコのアヒージョ」「白身魚のレモンクリームソース」「仔羊の脇腹肉のロースト」「NY風ステーキ」など。メキシコのレストランで出てくる食事はかなりビッグサイズなので、気になるメニューをいくつか頼んで、みんなでシェアするのがおすすめ。


店員さんが丁寧に注いでくれたのは、テキーラの原料であるアガベのエキスが入った同店オリジナルのメキシコビール「セルベッサ・コン・アガベ・アジェンデ」。グラスに口を近づけるとふんわりとテキーラの香りが! ライトビールなので、飲み心地はすっきり。


デザートにメキシコの伝統菓子「パステル・デ・アロテ」(トウモロコシのケーキ)をオーダー。香ばしいトウモロコシの風味がアクセントに効いた優しい味わい。

 いつしか、サン・ミゲル・デ・アジェンデの街並みは漆黒の闇に包まれ、その中に、ライトアップされたパロキア教会がなんとも幻想的に浮かび上がっている。頬をかすめる夜風に誘われ、まるでアート作品のようなこの街をぶらり散歩してみるのもまた、粋な異国体験となるだろう。


ライトアップされ、美しく煌めくパロキア教会。教会前の広場は、若者の歌やダンスで賑やかな雰囲気。

El Palomar(エル・パロマル)
https://hotelelpalomar.com.mx/

【取材協力】
アエロメヒコ航空

http://aeromexico.jp/

株式会社メキシコ観光
http://www.mexicokanko.co.jp/

文・撮影=中山理佐