2011年12月、15年7月に続いて、今回3度目の登場となる高杉真宙。前回に続いて、17年の出演映画を振り返るほか、今、リアルに感じている俳優としての楽しさや醍醐味、これからの未来について語ってくれた。

自分がその場にいることに違和感がない
小林啓一監督の現場


――今年の7月には『ぼんとリンちゃん』の小林啓一監督と再び組んだ『逆光の頃』が公開されました。

 僕が小林監督と一緒にやらせてもらって、いちばん不思議なのが、「そこに自分が立って、話していることがまったく不思議じゃない」ということなんです。たまに、集中力が欠けているのか、自分がその現場にいることに違和感があったり、気持ち悪く感じたりすることがあるんです。小林監督の現場では、それがまったくない。そのときの自分とキャラとのシンクロ率が高いこともあると思うんですが、ナチュラルに演じられるんです。『ぼんとリンちゃん』を撮っていたときの自分は、リンちゃんに似ていました。今ではアニメを観ることが少なくなったこともあって、あの時期の異常なまでのオタク臭は自分にはないと思います。マンガとゲーム中心ですが……(笑)。

――本作で演じられた孝豊はちょっと妄想癖がありながら、これまでの作品と比べると、とにかくフツウすぎるほど、フツウなキャラですよね。

 前作も今作も、受け身中心のお芝居なので、周りの方が放つものを受け取って出していくわけですが、今回は孝豊が真ん中にいるにもかかわらず、周りのキャラの色が強いんです。そんななかで孝豊の存在が薄くならないようにする塩梅が難しくて、そこは監督と話し合いました。目立たないようにしながらも、目立つようにすることが大変でした。

――続いて、9月には『トリガール!』が公開。英勉監督らしいコテコテのコメディであると同時に、特にこちらから笑いを仕掛けないマイペースなキャラというのは難しかったのでは?

 動物園の檻とでも言いますか、これまでの現場とは違う、スゴく異様な世界に放り出された気がしました(笑)。自分が演じた高橋は、割と台本通りに進めていって、最後にオチがあるキャラだったので、ずっとそこに至るまでのフラグを立てていく感じで演じていたんですが、周りのキャストの方が動きで笑いを取るなど、とにかく激しい感じだったので、その中でどこか右往左往していましたね。

宇宙人役に挑んだ黒沢清監督作


――あまりイメージのない“先輩感”はどのように出していったのでしょうか?

 最初に監督にお会いしたときに、「高橋は松岡修造さんみたいなタイプだから!」と言われたんです。松岡さんとはCMで共演させてもらっていましたが、「どういうこと?」と思いました。単に熱血感に溢れてまっすぐな人という意味だったんですが、いろいろと大変ながらも演じることができましたね。先輩感は声や立ち方を意識したり、逆に「今までああいうアプローチをしてきたから、年下に見えてきたのかな」と思ったりして作っていきました。

――そして、同月には黒沢清監督の『散歩する侵略者』も公開されますが、地球侵略を企む宇宙人役だっただけに、過去最高に難役だったのでは?

 当たり前ですけど、宇宙人の演技には正解がないんですよね(笑)。黒沢監督も、あまり役について話されない方で、自分が作り出した宇宙人のキャラで進めていったんですが、正解なのか分からないまま進んでいく感じが大変でした。ただ、不安なままではダメなので、「何も言われないからOKなんだ」と強く思い込んでいましたが、完成した作品を観た後も、どこか心配でした。

――とはいえ、いちばんアニメやコミック的なキャラだけに、高杉さんの引き出しから演技に役立ったものもありそうですよね。

 あれだけアニメやマンガを観ているのに、自分の引き出しの中からはあまり出てこなくて、「姿かたちのない侵略者だからこそ、天野にのりうつったときには、こういう言動をするんじゃないか?」みたいなことを考えて作っていました。ただ、かなりの策士にみえて、じつは何もやってないんですよね。アクションも、通信機器を作るのも全部、(共演の)恒松(祐里)さんがやっているという(笑)。とにかく、ほかの役者さんがやったら、全然違うキャラになったんじゃないかと思います。

もはや若手ではなく、中堅どころ?


――本作はカンヌ映画祭など、海外の映画祭などでも上映されていますが、こういった作品に出演したことで、海外に対する意識は出ましたか?

 いろいろな映画祭で上映されて、そのときの反応を聞かせてもらえると、とても不思議な感じがします。撮影のシステムだったり、自分が日頃やっていることが、海外だとどれだけ違っているのか、ということを知りたいという興味がわきました。

――ちなみに、『ぼんとリンちゃん』は3年前の「ヨコハマ映画祭」で最優秀新人賞を受賞し、今回は『逆光の頃』でTAMA映画祭での最優秀新進男優賞を受賞したわけですが、新人・新進と呼ばれることについては?

 こうやって選んでいただいて、賞をいただけることはもちろん嬉しいこと。それに、何より自分が出たこれらの作品を観ていただけたことが嬉しいんです。去年の事務所の忘年会で、「中堅どころ」と紹介されて、かなりショックだったんですよ(笑)。ずっと新人の気持ちでいたいのかもしれませんが、年齢的にも、もっと頑張らなきゃという気持ちも、これからもっともっと駆け上がっていきたい気持ちもあります。

――また、夏にOAされた「NTTドコモ」のCMでは、高橋一生さんが演じた父親役の学生時代を演じ、2人が似ていることでも話題になりました。

 その前からもちょいちょい「高橋さんに似ている」と言われていたのですが、「ライダー」のときがいちばんよく言われていましたね。ただ、あのCMの撮影では高橋さんにお会いしていないので、いつか役で共演させていただけたら光栄ですね。学生役に関しても、だんだんできない年齢になっていくとは思いますが、できるかぎりやらせてもらいたいと思っています。

今は単純に仕事を楽しんでいる


――そのときに共演した清原果耶さん繋がりで、ドラマ「セトウツミ」の話もお願いします。まずはオールアップした感想を。

 オールアップの日まで大変でした。本当に……大変でした(笑)。『逆光の頃』では京都弁に苦労して、今度は大阪弁で、どちらも関西弁の括りですけれど、完全に別モノでしたね。役も全然違いましたし。それに「セトウツミ」って、とてもリアルな話ですが、自分の中ではどこかリアルと繋がらないんです。あの高度な会話を関西弁でするには、しっかり自分の中にセリフを落とし込まなきゃいけなかったし、そのうえであのテンポと間ですから。ただ、そのテンポと間というものは自分が役者として、長いあいだほしかったものなんです。リズム感そのものを、自分が持っていないので……(苦笑)。今回「セトウツミ」に出演させてもらえることで、それも勉強できると思ったんですが、また大きな壁だったと思います。

――以前(15年7月)のインタビューの最後では、「短期間でしっかり相手の演技を受けることのできる俳優になりたい」と発言されていましたが、特に「セトウツミ」を観るかぎり、その壁はクリアされたのではないでしょうか?

 いや、いやいや……。でも、それって、この仕事をやっていくうえで、課題のひとつだと思うんですよ。普段の会話自体が、相手の言葉を受けて、出していくものですし、どのセリフも会話でできていますから。

――ちなみに、“作品ごとに乗り超えるべき壁がある”と発言されていますが、それがしっかり繋がったことで、今回の受賞に結びついたような気もします。

 そうやって言っていただけることは僕自身、嬉しいことですし、安心もするんですけど、自分の中で納得はしないんですよ。それは自分に厳しいとかというんじゃなくて、自分が単純に楽しみながら、今この仕事をやっているから。以前は「これは仕事」と思いながらやっていた分、どこかできていなかったと思うんですが、今は役をやらせていただいているという感覚が強くて、単純に楽しい。僕、美味しいものを食べたときに、何がどう美味しいか言えないんです。それに似ている気もするんです。つまり、自分で納得する部分が出てきてしまうと、楽しめなくなってしまうんじゃないかって。ただ辛かった状況も、振り返ると楽しい。完全にM体質ですね(笑)。

台本の活字を自分で浮かび上がらせて
作っていく映画の世界


――あえて訊きますが、「この仕事を面白い」と思った、いわゆる転機となった作品を教えてください。

 今まで役者をやらせてもらった人生を振り返ってみると、ひとつの作品を乗り越えたからといって、次の作品が楽になったというのが一回もないんですよ。そんななか衝撃だったのが、『ぼんとリンちゃん』でした。リハーサルに2カ月かけて、その後もじっくり撮っていった。あんな何十回もダメ出しされることもなかったですし。自分のなかで、たくさんのことを吸収できる期間で、スゴく贅沢に勉強させていただいたという想いがありますし、いちばん自分の血肉になった作品である感じがします。それに自分が出演した作品って、気恥ずかしさもあって1回ぐらいしか観られないんですが、『ぼんとリンちゃん』と『逆光の頃』って、そこにいるのが自分じゃないみたいな感覚で観られるんです。

――先ほど、「小林監督の作品で演じるキャラは自分に近い」と言っていましたが、それと正反対なことですよね。

 そうなんですよ! 自分に近い役を演じているのに、自分とは全然違う人に見える。その面白さみたいなもので、何度も観たくなってしまう。できれば、映画館の暗闇の中で。小林監督から「撮影現場だけでなく、映画館でも音や光の調節をしている」という話を聞けば聞くほど、映画館で観たくなりますね。前はそんなに映画を観るタイプじゃなかったんですが、この仕事をやらせていただくようになって、映画館の暗闇で作品を観ているときに、スクリーンの世界に引きこまれるような感覚が素敵だと思うようになりましたし、2時間でそれを体感できることも素晴らしいと思うんです。それができる仕事に、自分が就いていることが本当に嬉しくてしょうがない。台本に書いてある活字を自分の力で浮かび上がらせて作っていく世界をもっと楽しみたいと思います。

――18年公開予定作の一本『虹色デイズ』では、カルテット主演の一人を務めますが、現場はいかがでしたか?

 キラキラした青春映画ですし、周りの共演者があまりにキラキラし過ぎて、高杉真宙がなくなってしまいそうです(笑)。あと、清原さんもそうですが、年下のコとの共演が増えてきて、まるで娘や孫を見るような感覚になっているんです(笑)。全然、先輩っぽくはないんですが、「そうだよね〜」みたいな目線になる。ここ最近、「フレッシュさって、何なんだろう?」と思っていたんですが、「この若さだ!」って思いました。

いろんな縁に恵まれて
たくさんの作品に出たい


――それでは最後に、今後の目標があれば教えてください。

 これは前から思っていることなんですが、早く40代になりたいんです。早く確固たる自分の姿を見たいから。それと「また一緒に仕事をしたい」と思われる人になりたいですね。人柄も含め、いろいろあると思うんですが、役に対して、しっかり向き合って、監督から求められているものを120%出し切っていけば、それができると思っています。また、新しい人とも出会いたいと思いますし、いろんな縁に恵まれて、たくさんの作品に出たいです。そのためにも、自分からいろんな檻に飛び込むような気持ちで、2018年も頑張りたいと思います!

【衣装クレジット】
ジャケット 40,000円、パンツ 21,000円/共にKONYA(XANADU TOKYO)

XANADU TOKYO
所在地 東京都渋谷区神宮前3-34-7 4F
電話番号 03-6459-2826

文=くれい響,撮影=橋本 篤,スタイリスト=石橋修一,ヘアメイク=堤紗也香