「1970年代は後半になるまでホールトマトはブルガリア産、オリーブ油は味の強いスペイン産などサラダ油とブレンドしていた」と日本人として初めてイタリアへ料理留学した𠮷川敏明シェフは振り返る。

イタリア産のホールトマトやオリーブ油、パルミジャーノチーズなどは70年代後半になってから輸入されるようになった。

現地の味を代用品などを用いて再現し、本場の料理に挑戦してきたのが70年代。ここでは、現地で学んだ料理を伝え続けてきた𠮷川シェフとイタリアの伝統を追求する料理人に過去から未来へつなぐ料理を披露してもらう。

皿の向こうにローマを感じて

1970年代、僕が「アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ」を出すと「キャンティ」の大葉のスパゲッティの人気から「バジリコはないの?」とよく聞かれたものです。イタリア語のこんな長い名前では誰も覚えられないので「ディスペラート」(絶望の)と命名したら、マスコミに注目されました。

アーリオ・オーリオにはさほどニンニクは効かせていません。イタリアでもリストランテではスライスして調理しており、よけて食べられるようにしていました。

70年代、最初に入ってきたパスタは『ブイトーニ』のスパゲッティーニ。その後、『ディ・チェコ』『アネージ』『バリラ』が入ってきました。ローマの「エナルク」ではディ・チェコを使っていたので、イタリアのリストランテはディ・チェコが多い。帰国した料理人もディ・チェコを使うようになり、日本でも広まっていきました。

「ペンネ・アッラビアータ」はローマでは二人で鷹の爪1本くらいの辛さ。ニンニクは甘味と風味付け程度です。僕の店では70年代にはペンネ・リッシェ(筋なし)で作っていました。リッシェは生地が薄く、つるんとした食感が特徴です。ペンネ・リガーテ(筋が入った)は生地が厚く、こちらはモチモチ感が楽しめます。ローマではアッラビアータは必ずペンネで、他のパスタでやるとローマっ子でないと言われます。元々、あるトラットリアでアマトリチャーナにポルチーニを加え、ペンネであえたのがアッラビアータの始まり。つまりイタリアではアマトリチャーナの後にアッラビアータが広まったのです。

アマトリチャーナ発祥の地で使うグアンチャーレは、僕がローマにいたころはリストランテでは使っていなかったですね。うちもローマ風だからパンチェッタしか使わないですが。

最近の傾向は原点に戻ろうという流れがあるように感じます。ローマのある店がアマトリチャーナは、パスタ、ポモドーロ、パンチェッタ、ペコリーノ・ロマーノ、ペペロンチーノで作るものと広めたのですが、数年前にはパンチェッタのところに(グアンチャーレ)と書き足していて、時代の流れに負けたねと感じました。

またイタリアでは加工品の脂肪分は控えるようになっており、今のパンチェッタは昔より脂肪分が少なくなっています。その一方で僕がローマにいたころには流通していなかったラルドにもスポットが当っています。ひと昔前の素材も若い世代には新しく映るのでしょう。

ミラノは別格としても、イタリアの地方より日本の方が食材が手に入る時代になりました。70年代に僕が「プッタネスカ」を作ったのは、あの時代に日本で素材が手に入るものばかりだったから。許容範囲でパスタやチーズなどを代用したこともありましたが、他のものは輸入されるまで待とう。初めてイタリアの料理学校に行って学んだ者の責任があるという思いでした。

【レシピ】 アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ

材料(2人分)

スパゲッティ……160g
茹で汁用の水……2l
茹で汁用の塩……16g
ニンニク(薄切り)……4g
赤唐辛子(輪切り)……1/2 〜 1本
パセリ(みじん切り)……大さじ1
E.V.オリーブ油……大さじ1
仕上げ用のE.V.オリーブ油 オイル……大さじ2弱

作り方

  1. 茹で汁用の水を沸かし、塩を入れて、スパゲッティを茹で始める。
  2. フライパンにニンニクとE.V.オリーブ油を入れて弱めの中火で炒める。
  3. 赤唐辛子を加えて炒める。
  4. 火を止めパセリとスパゲッティの茹で汁大さじ3を加える。
  5. 茹で上がったスパゲッティを4に加えて中火にかけ、混ぜてよくからませる。
  6. 茹で汁を大さじ1加え、再度よく混ぜて火を止める。
  7. 仕上げ用のE.V.オリーブ油を2 〜3回に分けてかけながら混ぜる。

【レシピ】 ペンネ・アッラビアータ

材料(2人分)

ペンネ……140g
茹で汁用の水……1.5l
茹で汁用の塩……12g
ホールトマト(缶詰)……280g
ニンニク(潰したもの)……3g
赤唐辛子……1〜2本
E.V.オリーブ油……大さじ2
塩……ひとつまみ
パセリ(みじん切り)……少々
仕上げ用 E.V.オリーブ油……小さじ1強

作り方

  1. ホールトマトを潰す。ニンニク、赤唐辛子、E.V.オリーブ油をフライパンに入れて炒める。ニンニクの縁が茶色になったら赤唐辛子と共に取り出す。
  2. 潰したトマト、塩を加えて、木べらで混ぜながら5分間ほど弱火で煮詰める。
  3. ペンネを茹でる。茹で上がりが近くなったら2のソースに茹で汁大さじ2を加えてのばして中火にかける。
  4. 茹で上がったペンネを3に加えて強火にし、かき混ぜる。再度、ペンネの茹で汁を大さじ2ほど加え、弱火にしてかき混ぜながら2分程煮る。(煮詰まる様なら湯を加える)
  5. 火を止め、E.V.オリーブ油を少量かけて、手早く混ぜる。
  6. 皿に盛り、パセリを振り、1の赤唐辛子を飾る。

𠮷川敏明(よしかわ・としあき)
1946年生まれ。66年にローマのホテル学校「E.N.A.L.C.(エナルク)/国立職業訓練学校」で学ぶ。卒業後はローマのリストランテとホテルで修業する。71 〜 77年麹町「カーザ・ピッコラ」のシェフを務める。77年のオープン以来31年間人気を博していた西麻布の「カピトリーノ」を閉め、2009年に現店をオープンさせる。

ホスタリア・エル・ カンピドイオ
東京都世田谷区桜丘1-17-11 TEL 03-3420-7432
18:00 〜 21:00LO
火曜。水曜、木曜日定休、ほか不定休あり


text 飯島千代子 photo 海老原俊之

本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。