私たちは日々、味だけではなく健康という側面からも、「食」を意識して暮らしている。
そんな中で「食べ合わせ」とはどんな位置づけなのだろうか。日本における分子栄養療法の第一人者、医師の柳澤厚生さんに話を聞いた。

日本オーソモレキュラー医学会が監修する、世界初のレストラン「医学会キッチン オーソモレキュラー」でお話をうかがった。

医学的根拠はなくても、昔からのものは意味がある

 昔からよく聞く「食べ合わせ」という言葉。どちらかというと、ネガティブな意味合いで聞くことのほうが多いかもしれない。言い伝えのような非科学的側面もあり、実際に意識するべきものなのかどうか、医学的にはどういう見方をされているのか気になるところだ。

 そこで、今回「オーソモレキュラー医学」という、薬だけに頼らず、食を中心に病気の予防や治療を推奨している医学の権威である、医師の柳澤厚生さんにお話をうかがった。「私は、意外と『食べ合わせ』を信じています。医学的なものなのか、戒め的なものなのか、おいしいからなのか、消化にいいからなのか、根拠はわからないけれども、私が子供の頃から言われているようなものには何か意味があるのだろうな、と思っています。すべてを否定する、ということはありません」

 柳澤さんからは、意外にも否定の言葉は出てこなかった。

「『食べ合わせ』をどう定義していいか、は難しいところなのですが、組み合わせる時のバランスは大事だと思います。たとえば、レストランのコースは、しょっぱいものだけでも、味の濃いものだけでもだめですよね。健康についてもバランスは大事で、栄養のバランス、免疫のバランス、ストレスのバランス、どれも過剰はよくない。けれど、まったくなくてもよくないのです」

 バランスを大事にする、とはいっても、外食や弁当などを食べる機会が多い場合は、なかなか難しい。とくに外食をする場合には、どう気をつければいいのだろうか。

「基本的に、現代は味の濃いものが多くなりました。甘い、しょっぱい、辛い、どれもそうです。濃い味は素材をごまかせてしまう。たまのイベントの時はよいのですが、外食が多い人にあえていうなら、どの産地の何を食べているのかがわかる店に行ってほしいということですね。とくに、毎日外食をする人は何軒かそういう信頼のおける店を決めて、外食の時はそこに行くようにする。いろいろ食べたいという気持ちもわかりますが、よくわからないものをたくさん食べるより、信頼できるものを食べるようにするといいと思いますよ。また、日本ではあまり見かけませんが、欧米に行くとグルテンフリーの食事ができる店、大量製造品や不要な添加物が入っているものを置いていないスーパーなど、食に対する意識が高い店がたくさんあります。日本は、そういう選択肢がすごく少ない。日本にも、もっとそういう店が増えるといいと思います」

 選択肢が少ない日本では、「オーソモレキュラー医学」は、まだまだ実践しにくいのかもしれない。ただ、頭痛や風邪、胃痛などの慢性的な病気は、すぐに人工物である薬に頼るよりも、先に食事などの栄養でアプローチして、それでもダメなら薬を使う、というのが、柳澤さんの考え方だという。「頭が痛いからすぐに痛み止めを飲むのではなくて、最初にしっかりした栄養をとる。慢性的な症状なら、食を変えれば自然とよくなることはあります」

 最後に改めて、「食べ合わせ」をどうとらえたらいいか聞いてみた。「ふだんの食事で『悪い食べ合わせ』をすごく気にして食べないよりも、食べずに栄養素が不足するほうが問題です。一度に大量摂取しない限りは、影響は少ない。ただ、気になるものは無理に食べずに、気になるままでいいと思います。気にしながらストレスを感じて食べるほうが、よほど体に悪いですよ。おそらく『食べ合わせ』は、体質や環境、考え方も含めて個人個人で違うもの。ガイドブックのようなものと考えて、実際に体の中に入った時にどうなのか?を体験してみるといいでしょう。そうやって、自分で見つけていくものなのかな、と思います」

オーソモレキュラー医学とは?

「オーソモレキュラー」は、アメリカのライナス・ポーリング博士による造語である。身体の中に存在するビタミン、ミネラル、アミノ酸の投与などの栄養療法を、治療レベルにまで高めた医学が「オーソモレキュラー医学」。薬だけに頼らない根本治療を推奨している。

 2017年5月に「日本オーソモレキュラー医学会」が監修する、世界初のレストラン「医学会キッチンオーソモレキュラー」が神谷町にオープン。医師たちが栄養学的・医学的観点からアプローチし、監修したメニューが食べられる。

Atsuo Yanagisawa
1976年杏林大学医学部を卒業後、アメリカのジェファーソン医科大学留学を経て、杏林大学の教授を務める。その後は、国際統合医療教育センター所長などを経て、2012年より、世界21カ国が参加する国際オーソモレキュラー医学会の会長を務める。代替治療、統合治療に詳しく、幅広く活躍。患者のためにさまざまな枠組みを超えた治療を提供している。


澤由香=取材、文 小寺恵=撮影

本記事は雑誌料理王国278号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は278号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。