Restaurant×Tech
日本のレストランにおけるテクノロジーの活用は、欧米と比べて後れを取ってきた。ただ今年に入り、COVID-19の影響を受けて国内事情も変わりつつある。ここでは接客や調理、衛生管理などをサポートするロボットやAIをはじめ、アルゴリズムを駆使し顧客満足を高めるデリバリー、そして新たなレストランの形「AI・ロボットガストロノミー」を紹介する。

シグマクシス田中氏による解説

キーワードはアンバンドリング――機能分解です。いまやレストランは客が訪れて、厨房でシェフが作った料理を、店内で食べるだけの場所ではなくなりました。コロナ禍で急速にデリバリー機能の切り出しやセントラルキッチン化が明確になりましたが、海外ではこの傾向はずいぶん前から進んでいます。例えば、契約したレストランの料理を届ける”DoorDash(ドアダッシュ)”はアメリカではUber Eatsよりもメジャーなサービスです。30万店以上をカバーしている上に、今年はゴーストキッチン事業にも乗り出しました。数店のレストランのデリバリー業態が1か所に集まり、DoorDashの「ダッシャー」がデリバリーをする実に効率のいい業態です。

“MIDDLEBY(ミドルビー)”という厨房機器メーカーが手掛けている移動式ゴーストキッチンは、キッチンカーの中に最先端の厨房が詰めこまれていく予定です。シェフの動き方で言うと、コネクテッドシェフ。ファンや他業界と直接つながって、D2C(Direct to Consumer)事業に乗り出しています。こうした動きは日本のシェフにも少なくありません。元TIRPSE(ティルプス)の田村浩司シェフなどもその一人でしょう。

あとはロボット。”Chowbotics(チョボティクス)”のカスタマイズサラダマシン”Sally(サリー)”は最大22種類の野菜などの素材で合計1000種以上のサラダを作ることができる。コロナの影響でサラダバーの常設が難しいいま救世主になりうる自販機かもしれません。自販機は世界的には「自販機3.0」というフェーズにアツい業界なんですが、国内ではひと世代前の自販機が成熟していて、かつ飽和状態です。新しい発想で置き場所を含めてオーガナイズするような、自動販売機横断プレイヤーが出てきたら面白いですね。

誰が横串を刺すのかが課題ですが、ロイヤルホールディングスのような外食チェーンや、トレタのような飲食店向けサービスを展開するプレイヤーあたりが適任のような気もします。家電メーカーや食品メーカーにも参画してほしいですし、デベロッパーや不動産会社に入ってもらって、”横丁”形式での展開もいいかもしれない。一気に数社が新しい自販機に取り組んだら、進化形のインパクトも大きいし、面白くなると思うんです。(田中宏隆談)

2020年、飲食店の景色が変わった!
人とロボットが築く新しい協働の形。

もはやロボットは集客のためのマスコットではない。非接触/非対面が推奨されるコロナ禍の接客において、ロボットはようやく「一スタッフ」として最初の一歩を踏み出したようだ。ここではレストランとロボットの様々な関係性を眺めてみる。

■三笠会館×QBIT

老舗×ロボットが実証するコロナ禍での接客サービス。

ピコッ、ピコッ、ピコッ。軽快な電子音がテーブルに近づいてきたかと思いきや、目の前でピタリと止まる。「8テーブルのおきゃくさま、おりょうりをおとりください」と促すのは、サラダを運んできた人間…ではない。黒い筐体のロボットだ。よくよくフロアを見渡すと、2台の配膳ロボットが客席とサラダバーを行き来している。お客も躊躇することなくロボットのサービスを受け入れているようだ。ここは、今年7月にオープンした二子玉川のシーフードレストラン

「THE GALLEY SEAFOOD & GRILL by MIKASA KAIKAN」。そう、大正14年創業の伝統あるレストラン、「三笠会館」の運営である。

あと数年で創業100年を迎える老舗と、まだまだ目新しいロボットの配膳を決断した先進性。一見、意外な組み合わせだが、実は3、4年前から現社長が飲食店のロボット導入事例の視察でアメリカに赴くなど、テックへの窓は開いていた。「コロナでオープン延期になった際、ビュッフェ形式の是非を検討しましたが、配膳ロボットの導入により、非接触、非対面のサービスを提供できると判断しました」というのは、株式会社三笠会館営業本部、堀田瑞江氏。お客からは、ニューノーマル対応以外のメリットとして、ロボットが相手なら気兼ねなくサラダビュッフェが利用できるといった声も。今後、ロボットの担当業務の追加も前向きに考えている。

店内の天井に貼り付けられた位置マーカーを赤外線で読み取り、店内をスムーズに移動する。障害物は下部のソナーなどが察知し接触を防ぐ。上部に手をかざすと客席から戻る仕組み。

今回、タッグを組んだのは、「ロボティクスサービスプロバイダー」として企業にロボットとの協働を提案し、実装まで担う「QBIT」だ。すでに、ロボットがコーヒーを提供することで知られる渋谷「変なカフェ」や、AIロボットによる居酒屋チェーン店での接客などの実績を持つ。コロナ禍前後でロボットの引き合いは増えたのだろうか。株式会社QBIT Robotics 代表取締役社長 、中野浩也氏はいう。「コロナ前はどこか遠い未来の話でしたが、今は、コロナ対策の現実的な解決策としてニーズの深度が上がりました」。

また、ロボット導入の増加に伴い、新たな顧客心理が見えてきたという。「皆さん不思議と、ロボットにはクレームを付けないんですよ。言っても仕方がないと諦めているようで(笑)。自動販売機以上人間未満のロボットがフィットする接客ニーズは、コロナの影響も相まって、今後も浸透していくと思います」。「一人のスタッフ」としてロボットが定着する日は、確実に近づいている。