幅広い客層による楽しさの相乗効果を、料理と人が演出する

トラットリア・ピッツェリアラルテ 井上勇さん

「食の激戦区」東京・三軒茶屋。ここの路地裏に若い女性からカップル、ファミリーまで幅広い客層が足繁く通うトラットリア・ピッツェリアの人気店「ラルテ」がある。オーナーの井上勇さんにとってこの店は2号店となる。

中目黒のピッツェリア「イル・ルポーネ」が最初の店で、7年かけて後輩のピッツァイオーロを育てあげ窯を任せている。

「この業界全体が多くの人々に愛され、成長することが私の目指す道」と井上さんは言う。

オルトラーナ
赤や黄のパプリカ、ナスなど素揚げした野菜と、トマト、バジリコが美しいこの一枚は、女性客を虜にしている。モッツァレッラと野菜たち、そして小麦粉の香ばしさが優しい味わいとなって食欲をそそる。

ナポリピッツァと料理には人を魅了するパワーがある

「ナポリピッツァとナポリ料理はその力を十分備えています。だから、このパワーを引き出す『人』をしっかりと育てたいんです」

井上さんは、スタッフを連れてナポリ旅行に行く。仲間になったばかりの新人も、ベテランも心をひとつにして「ナポリの食と風土」を体感するのだ。この経験がキッチンスタッフにもサービス担当者にも反映し、店はナポリの明るさに包まれる。

そんな中で、この冬のスペシャリテに加わったのは、ナポリで仕入れたリングイネを活かしたひと皿「山口県産マテ貝のリングイネ」。

断面が楕円形のリングイネは、ソースの味が絡みやすい。ソースは、西日本の名産マテ貝を蒸し煮にして煮だしたジュースを、弱火でオリーブオイルと合わせ乳化させたもの。このソースをまとったリングイネは、正直に言って「絶品」だ。

もちろんこれだけではない。平打ちのパスタ、タリオリーニに北海道産のホタテ貝とフレッシュトマトを合わせたり、メニューには、パスタ料理をはじめピッツァ以外のメニューが30種類並ぶ。そう、ラルテはピッツェリアと同時にトラットリアであることも「ウリ」なのだ。料理もピッツァも旨い。この相乗効果が、幅広い客層を呼び込むのだろう。

「20歳からピッツァ窯の前に立っていますが、ピッツァは焼き手のその日の気分までも微妙に反映する。つくづく奥が深いと思いますね」と井上さんは言う。

20年ピッツァと真剣に向き合ってきたピッツァイオーロは、腕ききの料理人でもあり、スタッフを育てる人間味あふれるマエストロでもある。この三拍子がそろえば、ラルテに客が集まらないわけがない。

山口県産マテ貝のリングイネ
オリーブオイルとマテ貝のエキスを乳化させると、こんなにおいしいソースができるのか。ニンニクとオリーブオイル、マテ貝、リングイネ、この食材は調和しながら最高の〝演技〞を披露する。

Yu Inoue
1974年、東京生まれ。 19歳で「サルヴァトーレ」でのアルバイトからスタート。2004年に中目黒「イル・ルポーネ」をオープン。「ラルテ」は2店舗目に当たる。2011年の日本初のナポリピッツァ職人コンテスト、ファンタジー部門(創作ピッツァ部門)で優勝。

トラットリア・ピッツェリア ラルテ
Trattoria e Pizzeria L’ARTE

東京都世田谷区三軒茶屋1-35-17 1F
03-3424-3003

長瀬広子=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国2015年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2015年2月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。