言い訳のできない場所で自分らしさに挑む

リストランテ ナカモト 仲本章宏さん

京都府の最南端に位置する「木津川市」。豊かな自然が色濃く残るこの場所で、自分にしかできないことを、料理という形で体現する仲本シェフの想いを訊いた。

生まれ育った場所で理想とする文化を体現したい

京都府木津川市。奈良市と隣接し、古くは平城京・平安京の要衝として栄えた風光明媚な街だ。大阪市内から電車で30分、京都市内からは1時間ほどかかるこの場所に「リストランテナカモト」はある。

もともとこの場所にはオーナーシェフである仲本章宏さんの祖母の代から続く「仲本食堂」があった。道路を挟んだ向かい側にある木津川市役所で働く人々の胃袋を750円で満たし、長年にわたって地元で愛されてきた店だ。そこで、5000円以上のランチ、1万円以上のディナーが受け入れられるわけがないと、オープン前には周囲からの猛反対もあったという。「確かに周囲のお店の価格帯からしても、高級店という印象は否めません。でも、僕がイタリアで目の当たりにした、おいしいお店であれば車で3時間かかっても食べに行く“食いしん坊文化”みたいなものを、故郷の木津川で体現したかったんです」と仲本さんは語る。

食事にまつわるすべての驚きと感動を提供したい

「リストランテナカモト」の受付はランチもディナーも予約のみ。しかも決まったメニューというものが一切ない。今日は何が食べられるのか、店に行かなければわからないのだ。「その日、手に入った最高の食材を自分の持ちうる力すべてを注いで料理する。だから、決まったメニューは置いていません。お客さまによっては不安に感じられることもあると思いますが、今日何が食べられるのだろうというワクワク感、それを食べてもらう場所の空気感、接客を含めたおもてなしなど、食事の時間の過ごし方すべてが、ここまで来てもらう価値につながると思っています」

たとえばナイフひとつとっても、持ち手の柄が異なる数種類の中から、その日の気分で使いたいものを選んでもらうというこだわりだ。「リストランテナカモト」の真骨頂は、食事にまつわるすべての感動体験を提供することにあり、その価値はたとえ店がどこにあっても変わらないものであることを証明している。

オープンから5年。リピート客も増え、関西圏外からの来店も多い。「5年経った今だからわかることもたくさんあります。おまかせコースのみのスタイルも決して自分の料理を強気で押し付けるのではなく、お客さまに楽しんでいただくためのひとつの手法。この瞬間、一番おいしいと感じてもらえる料理をさまざまな角度から提供していくこと。場所やシーンを発展させながら食事が楽しい店としてあり続けたいです」

「リストランテ ナカモト」立地データ

木津川市は2007年に木津町、加茂町、山城町が合併してできた人口約7万人の市。大阪・京都・奈良のベッドタウン。

最寄り駅

木津駅。大阪・京都・奈良各方面から伸びるJR学研都市線、関西本線、奈良線が合流する駅で、駅からお店までは徒歩で5分ほど。銀行や個人商店、スーパー以外は住宅地がほとんどで、商業施設はなく飲食店も数えるほど。

ストロングポイント

生まれ育った場所ということもあり土地勘があること、また仲本さんの祖母の代から同じ場所で店をしていたため地元の知名度も高い。近隣にはさまざまな農産物の名産地があるので、旬の食材が手に入りやすい。

お客さま属性

30代〜50代。ランチタイムには近隣住民の来店もあるが、全体的に大阪・京都・奈良からの来店が多い。オープン当初にNGとしていた子ども連れのお客さまを受け入れたことで、ファミリー層やママ友での来店数がア ップ。

ウィークポイント

近隣の店舗に比べると価格帯が高く、地元のお客さまから見た敷居は高め。紹介やクチコミでの来店が多くなるので、ファンを増やすまでに時間がかかる傾向に。都心部よりも車での来店率が高くなるためアルコールが提供しづらい。

Akihiro Nakamoto
1979年京都府木津川市生まれ。料理専門学校を卒業後、21歳でイタリアに渡りミシュランにも輝く「エノテカピンキオーリ」などで約4年間修業を積む。 NYや南青山での経験を経て2011年11月に自身が生まれ育った木津川で「リストランテ ナカモト」をオープン。

白石亜矢子=取材・文、富岡敦=撮影

本記事は雑誌料理王国2017年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2017年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。