郷土料理をレストラン仕様にモダンに構築

イル・チリエージョ 櫻井康行さん

シェフの櫻井康行さんが、初めて修業したイタリアの地は、海沿いのリゾート、リグーリア州のサンレモだった。「『パオロ・エ・バルバラ』という家族経営のリストランテで、メニューの9割は魚介料理が占めていました」。そこで初めて食べ、海の街らしい郷土料理だと感じた思い出の味が「チュッピン」。リグーリア州の魚介のスープだ。現地では数種類の小魚を使ったスープにクルトンが浮いている程度だったが、それに旬の魚介や野菜を添えてリストランテ仕様に組み立てたのが、今回の料理。濃厚なスープはソースの代わり。海が香ってくる。

サンレモから京都へ戻り、老舗イタリア料理店で約6年働いたあと、トスカーナ州シエナへ。今度は肉料理を中心に学びたいと思っての渡伊だ。07年から2年働いた「オステリア・レ・ロッジェ」は郷土料理も出すが、どちらかというと先鋭的な料理が多い店だった。伝統料理と革新の調和。それが今の櫻井さんの料理にも表れている。あくまでも郷土料理をベースに「その地でなぜこの料理が食べられているのか?」を熟考し、日本で手に入る旬の食材に置き換える。「イタリアとまったく同じでなくていいんです。日本の食材も素晴らしいのですから。両者を融合させてここでしか味わえないイタリアンをお届けできたら」と語る。

確かに、次々と供されるコースの皿は、いずれもイタリアを感じるが、日本の旬の食材が生かされ、軽やかだ。まるで日本料理のコースをいただいているかのような季節感もある。

ビルの2階の、小さなリストランテ。空間、サービス、ワイン、料理、すべて、優雅で粋な仕立てである。

【レシピ】チュッピン

リグーリア風魚介のスープ。しっかりと小魚を炒めて漉したなめらかで濃厚なスープがソース代わり。取材時はスズキや車エビ、伏見トウガラシなどを使用したが、他の鮮魚や野菜でも代用可能だ。

材料

ベース(作りやすい分量)
小魚(アジ、コノシロ、石鯛など)…500g/玉ネギ(スライスしておく)…1/2個/ニンジン(スライスしておく)…1/2本/セロリ(スライスしておく)…1/2本/ニンニク(みじん切りにしておく)…1片/白ワイン…100㎖/イタリアンパセリ …1/2束/トマト…1と1/2個/クルトン、塩、コショウ、オリーブオイル、水…各適量

具(1人分)
スズキ…40g/車エビ…1匹/アサリのだし…適量/伏見トウガラシ…1本
イタリアンパセリ、クルトン、トマト…各適量

作り方

  1. ベースを作る。小魚は内臓と鱗を取り、水洗いしてぶつ切りにする。
  2. 深めの鍋にオリーブオイルを注ぎ、野菜とニンニクを軽く炒める。
  3. 1を加えてよく炒める。白ワインを加えてアルコール分を飛ばし、水をひたひたになる程度加え、イタリアンパセリ、トマトを加え、一度沸騰させてあくを取る。弱火で約2〜3時間火にかける。少し冷ましてミキサーにかけて、シノワでしっかり漉す。酒をふって、蒸し器で7 〜8分間蒸す。
  4. フライパンにオリーブオイル(分量外)を引き、スズキを皮目から焼く。車エビの身、伏見トウガラシを入れ、返しながら焼く。車エビの頭は油で揚げておく。
  5. 別鍋に3を60㎖注ぎ、アサリのだしで伸ばす。粗くきざんだイタリアンパセリとトマトを加えて軽く煮込み、ニンニクオイル、塩、コショウ(各分量外)で味をととのえる。
  6. 皿に5を注ぎ、4のスズキ、車エビ、伏見トウガラシをのせて、クルトンを盛り付け、海塩と白コショウ(各分量外)を少量ふり、オリーブオイルをまわしかける。

櫻井康行さん
1975年京都府生まれ。パスタ専門店を経て渡伊、リグーリア州で1年間研修。京都「ディボディバ」を経てトスカーナ州「レ・ロッジェ」にて2年間修業。 09年帰国。2011年12月独立。

三好彩子=文 竹中稔彦=写真

本記事は雑誌料理王国2012年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2012年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。