リストランテ ステファノ

生まれ育った街、ヴェネト料理を通じて北イタリアの食文化を発信

海と山で採れる豊富な食材を地域色豊かにアレンジ

イタリア北東部に位置するヴェネト州。東はアドリア海、北はアルプスの山々に囲まれ、河川や湖にも恵まれた自然豊かな土地だ。

州都ヴェネチアを中心とする海岸部は、アドリア海沿岸で捕れる新鮮な魚介類が豊富。平野部では四季折々の農産物が実り、中でもバッサーノ・デル・グラッパのホワイトアスパラガス、赤チコリの一種であるラディッキオ・ディ・トレヴィーゾなどは代表的な特産物だ。丘陵地帯では、ハムやサラミをはじめとする肉の加工品やワインの生産も盛ん。イタリア有数の酪農地域でもあり、牛の乳から造るモンテ・ヴェロネーゼ、アジアーゴをはじめ、数多くのチーズが製造されている。

そんなバラエティに富んだ素材を生かした本格ヴェネト料理を、心ゆくまで味わえるのが「リストランテ ステファノ」。オーナーシェフ、ファストロ・ステファノさんは、プロセッコワインで有名なヴェネト州トレヴィーゾの出身。「メニューは伝統的なヴェネト料理が中心です。自分がよく知っている、幼い頃から慣れ親しんだ料理を提供するのがポリシー」と、2004年のオープン以来、故郷の味を追求し続けている。「東京、いえ、この神楽坂界隈だけでも、イタリア料理店は数えきれえないほど存在します。だから、南イタリアの料理はほかのお店に任せておけばよくて、自分が自信を持って提供できる料理に徹底的にこだわりたいのです」と、流暢な日本語で骨太なスピリットを語った。

ホワイトアスパラガスのボイル バッサーノ風卵とヴィネガーソース
バッサーノ・デル・グラッパの特産物、ホワイトアスパラガスを主役にした前菜。やわらかな食感のホワイトアスパラガスにクリーミーなソースがよく馴染むとともに、ほどよい酸味が素材の甘みをふんわりと引き出す。

故郷の味は食材の味 控えめな味付けが日本人にマッチ

できるだけ本場の味に近づけられるよう、野菜はおもに旬のイタリア産を使う。今の季節であれば、何といってもホワイトアスパラガスだ。D.O.P.(保護指定原産地表示)認定されていることで世界的にも知られ、そのみずみずしさは格別。そのほか、メインメニューには、フレッシュな魚料理、ダイナミックな肉料理がズラリ。パンや燻製料理、生パスタなど、自家製のメニューが豊富で、チーズもさまざまな種類が揃う。南イタリアでは料理に添えられることが多いチーズだが、北イタリアの地域ではチーズを溶かして料理に使うことが多いのだという。

調理法は、素材の持ち味を生かすシンプルなスタイルが多く、全体的にマイルドでやさしい味わい。「だから、日本人の味覚にとても合う」というのがステファノさんの見解だ。
「日本料理に郷土色があるように、イタリア料理にもその土地特有のカラーがある。当店の料理を通じて、北イタリア、ヴェネト州の食文化を楽しんでほしいと思います」

ファストロ・ステファノさん
リストランテ ステファノ

Fastro Stefano
地元の料理学校を卒業後、ホテルやレストランで経験を積み、1996年に渡英、料理人としての腕を磨く。1999年に来日。
日本で最初のイタリア人オーナーシェフの店「カルミネ」にて総料理長を務めた後、2004年に「リストランテ ステファノ」をオープンした。

趣豊かな神楽坂の街並みにふさわしい隠れ屋風の佇まい。家庭的で落ち着いた雰囲気の内装で、ゆったりとくつろいだ時間を過ごすこ
とができる。シェフ自身が大好きということもあり、グラッパの品揃えが充実。自家製のグラッパもある。

リストランテ ステファノ
Ristorante STEFANO
東京都新宿区神楽坂6-47
照井ビル 1F
☎03-5228-7515
● 11:30〜15:00( 14:00 LO)
18:00〜23:30 (22:00 LO)
●火・水のランチタイム休
●コース 昼2150円〜、
     夜5200円〜(税込)
●20席
stefano-jp.com/

エリオ ロカンダ イタリアーナ

イタリア半島の南西端で生まれた保存食文化 麹町の老舗店でカラブリア料理の扉を開ける

複雑な歴史が生んだ食文化 トウガラシを使った郷土食

イタリア半島の南の果て、シチリア島と向き合う形で突き出しているカラブリア州。ミラノやナポリといった大都市に比べると日本から訪れる人はまだ少ないが、非常にアットホームな雰囲気の土地柄だ。

ノルマン人やシチリア王国、スペイン、フランスといったさまざまな国による支配を受けてきた複雑な地域性を象徴するように、カラブリアの郷土料理はほかのイタリア料理にはないユニークな特徴がある。
それは、トウガラシを使用した料理が実に多いこと。戦争や気候の変動にさらされてきたカラブリアでは保存食が必要不可欠であり、そのために使われていたのがトウガラシだったのだ。こうした食文化から、カラブリアにはペペロンチーノはもちろん、肉や野菜、魚などさまざまな食材とトウガラシを合わせた郷土料理が豊富にある。たとえばトウガラシと豚肉を腸詰めにして熟成させた「ンドゥイヤ」やシラスのトウガラシ漬け「ロザマリーナ」などはその代表だろう。

また、豚を飼育している家庭が多く、自分たちで屠殺してサルシッチャを作るという。血以外はすべておいしく食べられる豚肉はカラブリア料理には欠かせない食材。まさに〝地産地消〞の食文化なのだ。

食材にこだわりぬいたひと皿でカラブリアを味わう

そんなカラブリア料理を専門で提供しているのが「エリオ ロカンダ イタリアーナ」だ。同州出身のオーナー、エリオ・オルサーラ氏が「カラブリアの伝統料理を日本で広めたい」という思いから1996年にオープンさせた。日本人向けにアレンジした〝イタ飯〞ではなく、カラブリアの味を完璧に再現することにこだわって、ペペロンチーノ(トウガラシ)などの香辛料をはじめ、日本で手に入りにくい材料はイタリアから直接取り寄せているという。

郷土料理らしい料理を味わいたいなら、サルシッチャを使ったパスタ「キタッラ・サルシッチャ・ビアンカ・コン・チーマ・ディ・ラーパ」がおすすめ。サルシッチャはペペロンチーノパウダーとフェンネルシードを加えてスモークしており、そのまま食べても絶品。このサルシッチャをほぐしてオリーブオイルと合わせたソースを手打ちのパスタにたっぷりとかけ、愛媛県産の菜の花を添えて最後にチーズをふりかける。サルシッチャの濃厚な旨味とチーズのコクがパスタにからまり、そこに香辛料が絶妙なアクセントを加える。
これぞカラブリア料理の入り口としてピッタリのひと皿だ。

Germano Orsara
オーナーであるエリオ・オルサーラ氏の弟で、オープン当初
から「エリオ ロカンダ イタリアーナ」のエグゼクティブシェ
フを務める。カラブリアの郷土料理に対しては頑固なまでに
熱い情熱を持っており、それが今のこの店の味を作り上げた。
人気テレビ番組「料理の鉄人」への出演経験がある。

店名の「ロカンダ」がイタリア語で「私の家」「旅籠」を意味するとおり、重い木の扉を開けるとそこにはイタリアの一軒家を訪れたようなアットホームな雰囲気が漂う。南イタリアらしい陽気なスタッフたちのもてなしも人気の一因。

エリオ ロカンダ イタリアーナ
Elio Locanda Italiana
東京都千代田区麹町2-5-2
半蔵門ハウス1F
☎03-3239-6771
● 11:45〜14:15 LO
17:45〜22:15 LO
●日休
●コース 昼1600円〜
夜5500円〜(税込)
●60席
www.elio.co.jp/restaurant /

山田井ユウキ=取材、文 岩橋仁子、林 輝彦=撮影

本記事は雑誌料理王国262号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は262号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。