坂井宏行に惚れ込み33年間ともに歩んだ

エグゼクティブシェフ 工藤敏之さん

33年間にわたり「ラ・ロシェル」とともに歩み、宏行さんを支えてきた工藤敏之さん。「彼はいつも明るく、決して疲れを見せないプロフェッショナル。現在は特定のお店のシェフとしてではなく、さまざまなイベントなどで『ラ・ロシェル』の魅力を多くの人に伝えてくれています。彼の存在には私も感謝しています」と宏行さんが語る、「ラ・ロシェル」になくてはならない人物だ。

ムッシュがいて、慎吾がいて、私たちがいる。皆の力で「ラ・ロシェル」の魅力を広めたい。

工藤:ムッシュ(宏行)と初めて会った時は、彼のバイタリティに驚きましたね。当時はフランスから帰国し、フランスのスタイルをそのまま踏襲するシェフが多いなか、日本料理も勉強していたムッシュは懐石スタイルのフランス料理の礎を築きました。ダイナミックな盛り付けも斬新で。そんなことをやっていたのはムッシュだけでした。「こんなのはフランス料理ではない」という批判も受けながら、自分の道はこれだと決めて全うしてきた人です。私たちは彼を信じてついてきた。

──素晴らしいカリスマ性ですね。

工藤:はい。それでいて優しかった。1989年に「ラ・ロシェル」が渋谷に移転し、私がシェフになった時、ムッシュはまだ若い私を「この工藤シェフをよろしくお願いします。彼がいないとやっていけませんから」とお客さまたちに紹介してくれたんです。当時はそんなことをするオーナーはなかなかいませんでしたよ。そういうムッシュの熱いハート、人柄に惚れ込んでここまで一緒にやってきました。

ムッシュのスタンスを守りこれまでできなかったことを

工藤:ムッシュが独自の料理のスタイルを確立し、それを支えてきたのが私たちです。これからはムッシュが確立したスタイルを根底に残しつつ、今までできなかったことをやりたいですね。お客さまと近い距離で仕事ができる新たなタイプのレストランで、ムッシュのスタイルをより多くのお客さまに伝え広げていきたいと思っています。 

──工藤さんの仕事はムッシュの料理を広めることなのですね。

工藤:はい。現在はコンサルティングもやっています。川島や「ラ・ロシェル山王」楠野シェフとも連携しながら、「ラ・ロシェル」の料理を伝える仕事です。ムッシュがいて、慎吾がいて、各店のシェフがいて、総料理長の川島がいる。この体制で、まだまだ「ラ・ロシェル」の魅力を伝えていきたいと思っています。

坂井慎吾と現場をつなぐ橋渡しに

総料理長 川島 孝さん

宏行さんが「『ラ・ロシェル』グループの現場の長として後進を指導する立場」と信頼し現場を任せているのが、総料理長の川島孝さんだ。29年前に宏行さんと出会い、その料理の美しさに魅せられて以来、宏行さんのもとでそのスタイルを守り、受け継ぎながら、新たな料理へと進化させている。

ムッシュのスピリットを根底に次の世代へ向けた新しい料理を作りたい。

川島:ムッシュは人を大事にします。お客さまには今でもひとりひとりに御礼状を書きますし、スタッフと挨拶するときは必ず握手をします。人を大事にすることがいかに大切か、ムッシュの姿を見て学んできました。私が「ラ・ロシェル山王」の料理長になったときには、「『ラ・ロシェル』を売るのではなくて、自分を売らなきゃいけないよ」と言われました。人として豊かにならなければ、料理人として成長できないということを教えられたんです。

──ムッシュは本当に、人にやさしく細やかな方ですね。

川島:はい。料理には人柄が表れますから、「ラ・ロシェル」が愛されるのも、ムッシュの人柄があるからこそだと思います。お客さまは料理を通して厨房に立つシェフのイメージを膨らませ、また来ようと思ってくださる。私もそうなれるように日々努力しています。ムッシュが築いてきた料理を守りながら、私らしいオリジナリティのある料理を作っていきたいと思っています。

慎吾と連携しながら変わっていく

──これからの時代に向けてどう歩んでいきたいですか?

川島:現在「ラ・ロシェル」グループには、ビストロ、カジュアルフレンチ、グランメゾンとさまざまなスタイルの店があります。お客さまの世代も替わっていくなか、ムッシュの料理のテイストと料理人としてのスピリットを根底に残しつつも、次の世代に向けた新しい料理を作り出し、若い方々にも愛される店づくりをしていきたいと思っています。

──慎吾さんとの連携も大切になってきますね。

川島:はい。慎吾は経営のプロフェッショナルとして、お客さまの視点から、私たちにはない気付きを与えてくれます。現場を任されている自分がうまく連携して慎吾の思いをスタッフたちに伝えるようにしなければなりません。これからは私たちのチームワークで、グループ全体の経営も踏まえて前に進む段階にきてい
ると思います。

Toshiyuki Kudo
1957年北海道生まれ。「東京エアポートレストラン」を経て、1985年「ラ・ロシェル」に入社。1996年に取締役総料理長に就任し、2017年には常務取締役に就任。コンサルティングや書籍の執筆など幅広く活動している。

Takashi Kawashima
1967年群馬県生まれ。1989年「ラ・ロシェル」に入社。2005年に渡仏し、「ローベルガード」などで3年ほど修業。帰国後「ラ・ロシェル山王」料理長を経て2017年「ラ・ロシェル南青山」料理長兼総料理長に就任。

ラ・ロシェル南青山
La Rochelle Minamiaoyama

東京都港区南青山3-14-23
☎03-3478-5645
● 12:00〜14:00LO
18:00〜20:30LO
●火・第1水休(祝日を除く)
●コース 昼4500円、夜8500円〜
●50席
www.la-rochelle.co.jp

河﨑志乃=取材、文 今清水隆宏=撮影

本記事は雑誌料理王国282号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は282号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。