長堀通の角を曲がった坂の途中、ガラス張りのドアの向こうに、すっきりと洗練された空間が広がる。目に入るのは、奥へと伸びる一枚板のカウンター。バーのようで、いわゆるレストランほどかしこまらずに、ひとりでも入りやすい雰囲気だ。

東京の「北島亭」、大阪の「ラ・トォルトゥーガ」で修業した経歴からもわかるとおり、前芝平さんの料理の基礎は骨太なフランス料理。「前芝料理店」は、「ガッツリしたビストロ料理を落ち着いた環境で食べられる店」を目指して2月に開店した。

前菜に肉料理を食べながらカタマリで焼く肉料理を待つ

メニューはアラカルトのみ。小皿と前菜のほかは肉ばかりという潔さに、前芝さんのコンセプトが見える。注目は牛、豚、鶏、鴨、仔羊がそれぞれ1種づつ用意されるメイン。「最初はやっぱり牛肉から。次にほかの肉を試す方が多いです」と、前芝さん。かたまりで焼く豪快な肉料理が得意だ。「なにわ黒牛 炭火焼き」は「オーブンよりも、勢いのある料理になるから」と、炭火で焼き上げる。1時間ほど丁寧に火を入れて、しっとり焼けたら表面のみを香ばしく炙る。甘くて濃厚なソースを添えて、堂々たるビストロ料理の完成だ。待つ時間にも、テリーヌやリエットなどの肉料理を楽しもう。

メインはすべて2人前以上の量があり、人数分に分けて提供してくれる。ビストロ料理とはいえ「取り分けるストレスから、お客さまを解放したくて。大皿だとソースが残りがちなのも残念ですし」と、ここではレストランのように洗練されたサービスを採用。このきっぱりとした取捨選択のセンスは、シンプルな店名にもにじみ出ている。

「ここのご飯を食べたら元気になる」とお客さまに言われるのが一番嬉しい、と前芝さん。「疲れた時に立ち寄れる気軽さを残しつつ、非日常なハレの食事を楽しんでもらいたいです」。22時からはバータイムにチェンジし、メイン料理が姿を消す。替わって登場するのは、遊び心いっぱいの創作料理だ。営業は深夜まで。誰もが重宝する店だろう。

【レシピ】なにわ黒牛 炭火焼き

なにわ黒牛 炭火焼きは、A 4 ランクでも脂の量がほどよいソトヒラを使用。遠火の炭火で約1 時間かけて焼き、最後に強火で炙って煙香をまとわせた。マデラ酒とポルト酒の古典的なソースにポテトグラタンを添える、ビストロ料理の王道。

材料(2人分)
なにわ黒牛(ソトヒラ)…250ℊ/岩塩…少量
◦ソース(2人分)
アルマニャック、マデラ酒、ポルト酒…各15 ㏄ / 赤ワイン…30 ㏄ /フォン・ド・ヴォー…15cc /エシャロット…5ℊ/バター、塩、コショウ…各適量
◦付け合せ(5、6人分)
メイクイーン…3個/牛乳…270㏄/生クリーム…90㏄/エシャロット…1個/ニンニク…1/4 片/塩、コショウ、ナツメグ…各少量/パルミジャーノ・レッジャーノ…適量

作り方
1.なにわ黒牛は炭火の直火で表面を焼き上げたあと、網にのせて遠火で約1時間じっくり焼く。提供前に塩をふり、表面を強火で炙る。
2.ソースを作る。アルマニャックをほぼなくなるまで煮つめてから、マデラ酒、ポルト酒を加えてさらに煮つめる。フォン・ド・ヴォーと赤ワインを加えて加熱し、みじん切りにしてバターで炒めたエシャロットを加えて、塩コショウで味をととのえる。
3.付け合せを作る。5㎜幅の輪切りにしたメイクイーン、みじん切りにしたエシャロットとニンニク、牛乳、生クリームを鍋に入れて煮つめる。とろみがついたら塩、コショウ、ナツメグを加えて皿に盛り、パルミジャーノ・レッジャーノをふりかけてオーブンで焼き目を付ける。
4.盛り付けをする。皿に2のソースを流し、1の肉を半分にカットして切り口を上にして置き、岩塩をのせ、3の付け合せを添える。

Taira Maeshiba

1978年大阪市生まれ。東京の「レストラン七條」「北島亭」で修業。大阪に戻り「ラ・トォルトゥーガ」で4年半、「ル・ヌー・パピヨン」料理長を1年半経験。2015年2月に独立。

前芝料理店
Maeshiba Ryoriten

大阪市中央区安堂寺町2-3-3 アースヒルズ1F
☎06-4304-1770
⃝ 18:00〜22:00、バータイム22:00〜翌1:00
⃝ 水休
⃝タパス400円〜、前菜1200円〜、
肉料理4200円〜、グラスワイン800円〜
⃝ 12席
https://www.facebook.com/maeshiba2015

藤田アキ=取材、文 川瀬典子=撮影

本記事は雑誌料理王国253号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は253号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。