その土地の“日本料理”を作る

スペイン人の人気を集める日本料理人がいる。「Shunka 旬香」「Koy Shunka」など、バルセロナに4店舗を構える松久秀樹さんだ。2012年、日本人として初めてスペインでミシュランの星を獲得したこのオーナー兼料理人は、サン・セバスティアン世界料理学会でも、ユーモアを混じえた発表で、ヨーロッパの聴衆の笑いと共感を誘う。世界中から声がかかる注目の料理人、松久さんに、成功の条件と外国人に求められる日本料理について聞いた。

誰のために「こだわる」か

料理はゲストを喜ばせるためのもの自己満足の「こだわり」は捨てて現地の人の心に響く料理を

海外での日本料理店の成功の条件は「料理へのこだわりと、ゲストを喜ばせることをイコールで結ばないこと」と松久さん。15歳から日本料理の世界に入り、東京でも修業した。海外に渡って初めて、オーナーに「アボカドを使って」と言われた。「日本料理にアボカドなんて、と拒否をしたら『じゃあ日本で料理をしなよ』と。はっとしました」。

そこから発想が変わった。もちろん「おいしい料理を作る」こだわりは捨てない。しかし、「素材は絶対にこう」という執着心が取れた。すると「うまい」と言ってくれる、また来てくれるゲストが目に見えて増えてきた。

「もちろん、純粋な日本料理は必要です。でもそれをそのまま、異国で作る必要はないと思う。おいしくてゲストを笑顔にする料理が、正解じゃないですか」と、笑顔を見せる。

スタッフの雰囲気

スペイン人は笑いが好き仕事を楽しむスタッフの笑顔はゲストにも伝わる

外で日本料理店を成功させるには何が必要か? 松久さんは「いかに地元に溶け込めるか」だと断言する。「海外である以上、考え方は日本と違います。でも結局は人間同士。伝わりさえすれば国境はないと思う。変に枠組みを作らず、おいしい料理、ゲストの笑顔を追求すれば、お客さんはついてくれると思います」

松久さんは現在45歳。スタッフ80名以上を束ねる。5カ国のスタッフが楽しげに働くこの店は、今日も国内外のゲストで賑わっている。

和牛を使ったひと皿。「KOY」コースにはオプションで追加できる。ただしコース内容は季節によって異なる。

Hideki Matsuhisa
1972年生まれ、愛知県出身。97年からバルセロナに。2001年「Shunka旬香」、08年に「Koy Shunka」を開店した。2012年、日本人として初めてスペインのミシュランで一ツ星を獲得。

Koy Shunka
コイシュンカ

c/ COPONS, 7 08002
BARCELONA,SPAIN
☎+34 934 127 939
●13:30〜15:00、20:30〜23:00
●日夜、月休
●コース KOY €89
(G)ASTRO €132
www.koyshunka.com
※価格はVAT(付加価値税)込み

本記事は雑誌料理王国279号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は279号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。