スパイス煮込みで甘酢っぱく、岩塩包み焼きで繊細な味に

さて、次は豚肉のロース肉とスネ肉を使った料理をご紹介。堀江さんが奈良でひと目惚れしたという、泉澤牧場の豚が登場。2分の1の黒豚血統で、自家配合の飼料を使って通常より1〜2カ月長く肥育させているという。

まずはロース肉に取りかかる。赤味を帯びた身は引き締まり、脂身は白くきめ細やか。堀江さんが惚れ込むのもうなずける健康的な肉質だ。
 

「この豚は、身の味が強くて岩塩焼きのために生まれてきたような豚。店でもメニューに出しますよ」
 

ローズマリーやニンニクと一緒にたっぷりのシチリア産岩塩で覆い、スチームコンベクションオーブンでロースにじんわりと火を通す。いったん肉を休ませ、冷蔵庫にねかせてスライサーにかけると、美しい桜色の身が現れた。冷製だが、見た目以上に味にコクがある。牛肉同様、ロースは肉質がそのままダイレクトに伝わるごまかしがきかない部位である。ちなみにこの岩塩焼きは、牛ロースでも代用できるという。
 

そして、次はスネ肉。数種類のスパイスと一緒に、カルバドスやブランデーを使って、硬いスネ肉を「ぐでんぐでんの酔っぱらい状態にして」煮込むこの料理は、実に手間と時間がかかる。肉焼きファイター、堀江さんの十八番でもある。
 

まずは右ページの写真Point 1 にあるように、さばいたスネ肉にレモンの皮やニンニクをまぶしてひと晩ねかせるところから始まる。ねかせた肉は、煮込む前に鉄のフライパンでていねいに塩、コショウをしながら表面をしっかりと焼く。そして、ハーブや香味野菜が入った鍋に肉を移す。
 

「イタリアでは『鍋が歌を歌う』というのですが、香味野菜を炒めるときは、鍋がピチピチいうまで塩を加えません。早く塩をしてしまうと『ソッフリット』にならない。水分を出し切るまで炒めてから塩をふることで、肉汁も凝縮された味に仕上がるのです」
 

細かな調理手順のひとつひとつをクリアにしていくこの料理は、堀江さんがいう「スネは手間をかけた分だけリターンがある」という考え方に直結する。
 

「イタリアの肉料理は、肉をニンニクやハーブ、香味野菜で風味付けをしながらしっかりとローストし、鍋底に凝縮された肉汁も一緒にこそげ取って食べるのが僕のイメージ」と堀江さん。調理のきめ細かさが、最終的な煮込みのソースの凝縮感に差をつけるのだ。

豚スネ肉のスパイスを使った甘酸っぱい煮込み

五香粉やシナモンが香る、凝縮感のある力強いソースに、歯応えやわらかなスネ肉が溶け込む。バルサミコ酢とザラメを加えたことで、とろりとした甘酸っぱさが残り、後味を爽やかにする。甘味のあるタマネギのコンフィを最後にからめた。

肉と野菜の凝縮感をソースに閉じ込める

Point 1
スネ肉は骨を外して切り分け、身を平たくさばく。そこにニンニク、タイム、ローズマリー、セージのみじん切りをのせ、レモンの皮をすりおろす。塩、コショウをして内巻きにし、タコ糸で成形する。これをひと晩冷蔵庫に入れてなじませる。

Point 2
肉はフライパンで表面を焼いた後、ニンニクとハーブ、シナモンスティックやスターアニスなどを炒めた別の鍋に移し、香味野菜とともにじっくりと肉に火を入れる。五香粉のパウダーを入れ、ブランデー、カルバドス、シェリー、バルサミコ酢を加えてフランベし、ザラメを入れてとろみをつける。最後に煮つめた白ワイン、牛ブロードを加えてやわらかくなるまで煮込む。

豚ロースの岩塩包み焼き ニンニクとローズマリー風味

手塩にかけて、長期肥育で育てられた豚ロースの醍醐味を味わう料理。スライサーで薄切りにし、見た目も美しい冷前菜に仕上げた。食感がなめらかで、脂の部分は甘くとろける。ドライトマト、イタリアンパセリ、ドライオレガノのオイルソースを添えた。

岩塩とハーブでストレートに旨味を出す

Point 1
豚ロースは、ニンニク、ローズマリーを挟んでタコ糸で成形し、シチリア産の岩塩をたっぷりとまぶす。これをスチームコンベクションオーブンに入れ、芯温56〜58℃、庫内180℃でおよそ1時間半ローストする。

Point 2
焼き上がった岩塩包み焼きは、しばらく室温で休ませてからスライスする。冷菜にする場合は、これを冷蔵庫でねかせてからスライスする。

豚 肉

<料理に使用した豚肉>
●生産地/奈良県五條市●
種類/ 6〜7カ月間、肥育させた黒豚のバークシャー種と茶豚のデュロック種の交配。脂に甘味があり肉質が締まっているのが特徴(写真右がロース肉、左がスネ肉)。

沖村かなみ=文・構成 太田恭史、山家 学=写真

本記事は雑誌料理王国181号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は181号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。