朝鵜一男会長がスッポンの養殖を始めたのは34年前。米作農家だった朝鵜会長は、義父の誘いもあり、休耕田に養殖用の水槽を作った。現在13000㎡の敷地で約1年半育てたスッポンを年間4万匹から5万匹出荷(サイズは700gから1200g)。善玉菌の集まりで、浄化作用があるといわれるEM菌(有用微生物)を混ぜた地下水で飼育している。「EM菌のおかげでスッポンが元気に育つようになりました」と朝鵜さんは語る。

【すっぽん】

スッポン科に属する爬虫類。泥亀、川亀、ガメ、マル、フタとも呼ばれる。臆病で用心深いが、喧嘩っぱやく、獰猛。養殖は、慶長2(1866年)年に現在の東京都江東区で始まった。その後、静岡県浜松市でも盛んに行われるようになっていった。昭和30年代、朝鵜会長の奥さんの祖父、糸山喜三さんが九州で初めてスッポンの養殖を佐賀市内で着手したという。糸山さんは大分県の水産試験場に招かれ、養殖の指導を行った。それが契機となって大分でも養殖が始まったようだ。現在、佐賀県ではあさうを含め、5軒ほどの会社がスッポンの養殖を行っている。あさうが路地に設置した水槽は底が砂地で、スッポンはこの中で冬眠する。

鍋はもちろん刺身、唐揚げ、雑炊にしてもうまいスッポン。(株)あさう(本社神奈川県横浜市)では、佐賀の養殖場で育てたスッポンを「佐賀はがくれすっぽん」の名で出荷している。「コラーゲンが多く、味もいい」と評判が高い。餌もほかとは違うようだ。「うちでは魚粉に加え、大豆やトウモロコシなどの穀物、ウコン、グルテンなどを配合した餌をあげています。夏から秋頃までは、うちのばあちゃんが裏の畑で育てたカボチャやダイコンの葉っぱも与えているし、餌には自信があります」と胸を張るのは、あさうの会長、朝鵜一男さん。ときには自分で味見をして、人が食べても安心で安全な餌だけを与え、大切に育てている。
 

繁殖用のスッポンは朝鵜会長自らが厳選。どのような基準で選別しているのか教えてもらった。「甲羅が梨のように薄い緑色で、腹がピンク色がいい。買うときもそのような色のスッポンがいいです。スッポンも見た目が大切です(笑)」
 

繁殖用のスッポンを路地の水槽で飼い、自然交配させている。毎年5月下旬から8月上旬まで数回産卵をする。2〜3㎝サイズの産みたての卵はハウス内の孵化場に移され、7月下旬から孵化が始まる。

スッポンの赤ちゃんは栄養たっぷりの餌と、水温31℃に保たれた水槽でぬくぬくと育つ。翌年4月以降、路地の水槽に移し、1年ほど育てたものを出荷している。「34年養殖をしていますが、自分で食べたのはわずか3回。あの可愛い目を見ると食べられません(笑)」

夏に孵化したスッポンをビニールハウス内の水槽で飼育。臆病なため、餌を餌台に置いても人の気配がすると近寄ってこない。

大手企業が養殖業に参入したこともあったが、手が回らないことから撤退。あさうでは家族を含め計9名で育てている。

「甲羅は梨色で、腹は毛細血管が浮き出た薄いピンク色がおいしいです」と朝鵜会長。

米作やイチゴ栽培が盛んな佐賀平野。34年前、その休耕田ですっぽんの養殖を開始。現在では朝鵜会長の長男と次男も手伝っている。

(株)あさう養殖場
築地や京都、大阪の卸売業者にスッポンを卸している。健康食品メーカーのサプリメント用に納品しており、出荷までに約1年半〜 3年かかることから、近年生産が追いつかない状況が続いているという。
(株)あさう ☎045-717-6842 FAX045-717-6841

【調理のコツ】梟の響キ 古川 公輝さん

養殖物は、「佐賀はがくれスッポン」以外は使ったことがありません。天然物と比べるとゼラチン質が多く、お客さまの評判も抜群です。「スッポンの山椒煮」は、スッポンのコース料理の一品としてお出ししています。ゼラチン質が多く含まれる前脚の付け根とムネ肉を酒やショウガ、水飴、甘味のある刺身醤油で煮て、ゼラチン質がとろけてきたら、粉山椒をかけます。

「スッポンの山椒煮」。ゼラチン質が口の中でとろける。

梟の響キ
佐賀県佐賀市白山2-5-2 第2白山ビル9F
☎0952-28-4655 
●18:00 〜翌3:00LO
●日休
●夜 コース3000円、4000円、5000円

中島茂信・文 吉富高司・写真

本記事は雑誌料理王国198号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は198号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。