バルを開業した店主たちが抱えている悩みを、飲食店舗を数多くプロデュースする相原一雅さんが診断。解決への糸口を探るとともに、長く愛されるバルの運営法を考えていきます。

クオーレ・フォルテ 羽賀大輔さん

イタリアのビオワインと郷土料理で地元客の集客をめざす

Q1 ワインセラーがいっぱいなってしまいました。

開業投資額を抑えるために120本入りのワインセラーを1台しか導入しなかった。しかし、貴重なワインなどを買い集めているうちにセラーがいっぱいに。大きいセラーに買い換える予算もスペースもない?

A.初めて店を持つ人は、どうしても予算内に抑えようと設備投資を小さくまとめがち。でも、必ずしもローコストがいいわけではありません。いい店は拡大していくものですから、それを見越して最初から大きめの什器・備品を揃えた方が実は得策なんです。ましてや、ワインを売り物にする店だったら、もう少し大きいセラーがよかったですね。
 

スペースがあれば、ネットや中古品専門店で安いセラーを買い足します。でも、スペースがないので、自宅にセラーを置いたり、レンタルスペースを借りたりしてストックする。業者に手数料を払って保管してもらう手もあります。
 

小規模店はどうしても収納スペースが足りなくなりがちなので、設計段階で建築家に容量計算をしてもらうといいでしょう。有料でもプロのアドバイスを仰ぐことは大切です。これも必要な投資のうちですよ。
 

ただ、この8mもある南アフリカのブビンガの木の一枚板カウンターにど〜んと投資したのはよかったですね。こういう上質なものがひとつあると、店のグレード感がぐんとアップして雰囲気がよくなりお客が集まるんですよ。

Q2.お客さまにワインや料理にもっと詳しくなってもらうには?

開業1年を経て、お客のレベルも徐々に上がってきた。そこで、通好みの貴重なワインがどんどん売れたり、「この料理食べたいからワインはおまかせね」などと注文してくる気の利いたお客が増えたりするともっといいのだが……。

A.ハハハ、それは気の利いたお客さんじゃなくて、都合のいいお客さんでしょう。でも、ワインや料理の魅力をもっと伝えたいという羽賀さんの熱意や理想は伝わってきますよ。お客さんに料理やワインの説明をしたい、そしてそのやりとり自体も楽しんでもらいたいと10坪22席の目が行き届く小規模のバルスタイルの店にしたんですよね。そして、至近距離でお客とコミュニケーションできるカウンターを据えた。いいんじゃないですか。お料理やワインを説明する時に、「これはプーリア州のワインですけど、プーリア州では白インゲンが名物です。ご一緒に白インゲンのサラダはいかが?」なんてひと言添えるのも、お客のリテラシーを上げる工夫でいいですよ。しかも、料理とワインの相乗効果で売上も上がりますからね。

まだ、オープンして1年でしょ。羽賀さんに必要なのは焦らない気持ちです。自然派ワインというのは造り手も売り手もお客も意識が高いから、必ず人気が出てきます。意識が高い店は強い店です。まずは焦らず、今までどおりに丁寧に売ることが大切です。

熱い思いのある店が息の長い繁盛店になります。

Q3 このままひとつの店舗でやっていくか、多店舗展開していくか悩みます……。

繁盛店が必ず行き当たるのが、このまま独立店でいくか、多店舗化をめざすのかという分岐点。それぞれのメリット・デメリットとは?

A.現在、当初予想の日商7万円を上回る10万円という数字を弾き出していますね。順調な滑りだしなので、このまま1店舗の規模で堅実にやっていくか、拡大路線でチェーン化をめざすのか、そろそろ次のステップを考える時点にきている思います。 

1店舗で続けていくメリットは、自分の目の届く範囲なので自由に思いどおりの店づくりをできること。一方、多店舗化への道はいかに店舗のコピー化を進められるかが成功のカギになります。そのため、羽賀さんがいなくても店が回るようなマニュアル、ルール作りが必須となり、自由度はなくなります。スタッフの給与体系はどうするか、店舗づくりのデザインはどうするかなど、今から入念なシミュレーションも必要です。それと、将来、融資をスムーズに行うためにもきっちりと利益を積み上げていくこと。棚卸しなどの在庫管理や原価管理も手間を惜しんではいけません。 

ただ、どちらの道を選んでも、経営効率とお客に伝えたい熱い思いを保ち続けることが大切です。しっかりとルールを作って線引きをし、数字と熱意を遊離させないようにする。このバランスを保つことはなかなか難しいんですが、羽賀さんなら大丈夫ですよ!

Q4 ブームだけに終わらせたくない!もっと売上をのばすには?

時代が求めているのは軽やかさとクオリティの高さを兼ね備えた店と考え、バルというスタイルを選んだ羽賀さん。たまたまバルブームとタイミングが合致したが、流行に便乗した店と一緒にされて廃れたくはないという。今後も売上を伸ばしていくには?

A ブームというのはいずれ廃れるもの。それを踏まえたうえであえて流行に乗って売り逃げる店もあれば、ブームを超えて息の長い繁盛店にする店もあります。後者の場合、右肩上がりに売上を伸ばすには3つの柱があります。バランスのよい収益構造を作ること、優秀なスタッフの募集・育成、そして営業活動・集客活動に力を入れることです。

この店の場合、もうひとりスタッフを増やして料理やワインの提供をよりスムーズにし、売上増を図るとよいでしょう。人件費は上がりますが、収益性はぐっと高まるはずです。2月から新しいスタッフが加わるとのことですがそれで正解です。優秀なスタッフは哲学のある店に集まるので、その点も安心してよいでしょう。営業・集客活動面ではツイッターやフェイスブックなどを活用するといいですね。もともと同店のような〝人気エリア〞立地は告知活動をしなくても人が集まりやすいものですから。このように、物件探しの際には、多少家賃が高くても宣伝費を含んでいるという発想で選ぶことも大切です。

クオーレ・フォルテ
下北沢でも比較的年齢層の高いお客が集まる、下北沢一番街の入り口に立地。オーナーの羽賀大輔さんがセレクトした造り手の顔がわかる自然派ワイン(80種類、グラスワインは12 〜 13種類)とイタリアの郷土料理(約25種類)を看板としている。お客とのコミュニケーションを重視し、約8mの一枚板のカウンターを設置。親しみやすさの中にもグレード感を演出している。ビオワイン好きなど、20 〜 30代の地元リピーター客が中心。

東京都世田谷区北沢3-20-2 大成ビル1F
03-6796-3241
● 17:30 〜翌2:00LO、日は17:00 〜23:00LO
● 火休
グラスワイン650円〜、豚肉のコラーゲンテリーヌ630円、豚バラ肉のポルケッタ830円、白インゲン豆のサラダ590円、前菜盛り合わせ1200円

羽賀 大輔さん
1981年東京都生まれ。学生時代、代官山の「キアッケレ」でアルバイト。卒業後、サラリーマンを経て、青山の「フェリチタ」などで修業。2010年12月に「クオーレ・フォルテ」を独立開業。

相原一雅さん
1968年東京都生まれ。95年「organic design modern furniture shop」を中目黒にオープン。98年「organic design modern furniture shop」を「organi ccafe」として再生させ、カフェブームの火付け役に。以来、「BAR nems」「DEPOT」「dish」など飲食店舗をオープン。2004年、和菓子の製造販売店舗「たいかしの天音」を吉祥寺に展開。現在、飲食店舗および商品企画プロデュースなど数多くのコンサルティングを手がけている。

text:Reiko Matsuno photo:Hiroshi Fushiki

本記事は雑誌料理王国210号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は210号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。